経済情報
月1回更新

2012年4月アルゼンチンの経済情勢

 

2012年5月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)16日、フェルナンデス大統領は、YPF株式51%(スペイン・レプソル社保有分)を接収する炭化水素主権法案を発表した。


(2)27日、WTO輸入ライセンス委員会において、米、日、EU、加、韓、スイス、トルコ等は、亜政府の輸入制限措置にかかる懸念を表明する共同声明を提出した。


(3)政府発表では、4月の消費者物価の伸びは前年同月比9.8%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い23.45%となっている。


(4)3月の消費は、引き続き好調であったが、生産・建設は、輸入制限等の影響を受け、前年同月比微増となった。市場見通しでは12年の成長率は4.3%と予測されている。
 3月の貿易は、輸出が前年同月比2%増、輸入が同8%減となった結果、貿易黒字は同61%増となった。
 3月の財政収支は、前年同月比34.6%減となり、また、総合収支は、23.92億ペソの赤字となった。


(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.89%ペソ安の1ドル=4.4148ペソとなった。株価指数であるMerval指数は、27日には前月末比412ポイント減となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、27日には前月末比111ポイント増となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 11日、ビアンチ産業省商工長官が辞任し、後任としてハビエル・ランド副次官が就任した。
 11日、サンタクルス州はYPF保有の3つの鉱区採掘権を剥奪した。
 16日、フェルナンデス大統領は、YPF株式51%(スペイン・レプソル社保有分)を接収する炭化水素主権法案を発表した。また、緊急大統領令により、YPF社監査のため、デビード公共事業相を経営監督責任者、キシロフ経済副大臣を副責任者に任命した。
 18日、IMFは、世界経済見通しにおいて、2012年及び2013年の亜経済について、実質GDPについて、4.2%及び4.0%、経常収支対GDP比について、▲0.7%及び▲1.1%、失業率について、6.7%及び6.3%と発表した。
 20日、サエンス・デ・サンタマリア・スペイン副首相は、亜に対する報復措置として、亜からのバイオディーゼルの輸入を停止する旨発表した。
 20日、欧州議会は、YPF接収法案を批判する宣言を採択した。

 

(2)貿易


 4日、コーポラシオン・アメリカ社は、サンフアン州ハグエリト金銀鉱山の採掘権を保有する会社を買収したと報じられた。
 16日、フェルナンデス大統領は、マテ茶の価格が下がらない場合、マテ茶の輸入を実施する旨発表した。
 18日、農牧省は、300万トンのトウモロコシ輸出枠拡大を発表した。
 25日、経済省は官報において、輸出代金の亜本国送還・猶予期間について、これまで品目により貨物の出荷日から15〜360日の7通りに定められていたところ、15日、90日、360日以内の3通りのみとした。また、関連会社間取引については、品目に関係なく15日以内とした。
 27日、WTO輸入ライセンス委員会において、米、日、EU、加、韓、スイス、トルコ等は、亜政府の輸入制限措置にかかる懸念を表明する共同声明を提出した。
 
(3)金融・財政


 
19日、テチントグル
ープの製鉄会社シデラル社は、株主総会において、2011年に得た利益の81%を将来の投資用資金として確保し、その分株主配当を大幅に減らすことを決定。
 23日、S&Pは、亜の格付けをB+(安定的)からB(ネガティブ)に引き下げた。
 23日、亜政府はウルグアイと、二国間租税情報交換協定に署名した。

 

(4)対外関係


 9日、ムヒカ・ウルグアイ大統領が急遽訪亜し、フェルナンデス大統領と会談。亜の輸入制限措置等について協議した。
 14日、米州サミットに出席しているフェルナンデス大統領は、オバマ大統領と貿易問題等について会談した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 3月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比4.3%増、前月比0.5%増と、前年同月比の増加幅が拡大した。
 4月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.4%増の4.3%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 3月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比14.6%増、前月比7.5%増となり、前月比が再び増加に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比26.6%増、前月比6.1%増となり、前月比が再び増加に転じた。


(イ)自動車販売


 4月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比7.1%減、前月比3.4%減となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 3月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.5%増、前月比2.1%増と、前年同月比が再び増加に転じた。分野別では、石油精製、自動車において減少が見られたほか、化学が好調だった。
 3月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.8%減、前月比と同じの75.3%となった。分野別では、基礎金属、化学等において上昇が見られた一方で、金属機械等においては下落が見られた。
 REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.3%減の前年比3.8%増と予測されている。


(イ)建設活動


 3月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比3.9%増、前月比7.9%増となり、前月比が再び増加に転じた。


(ウ)自動車生産


 4月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比24.4%減、前月比19.1%減と、前月比が再び減少に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 4月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.8%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。飲食料品において、前月比1.3%増と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、4月の消費者物価は、前年同月比23.45%、前月比2.16%の上昇となったと発表した。
 4月の卸売物価指数は、前年同月比12.9%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より、0.2%減の前年比13.4%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 2012年第1四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.3ポイント減、前期比0.4ポイント増の7.1%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比0.8ポイント減、前期比1.1ポイント減の7.4%となった。
 3月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比28.83%増、前月比1.61%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.15%増の前年比23.31%増、12年の失業率は前月の予測より0.1%増の7.1%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、次第に下落し、27日には、前月末比412ポイント減の2,272ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月後半に一時1,000台に達し、27日には前月末比111ポイント増の973ポイントとなった。


(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、27日には前月末比3.6センターボ(0.89%)ペソ安の1ドル=4.4148ペソとなった。他方、非正規為替市場においても、ペソ安傾向が継続しており、27日には1ドル=5.09ペソ程度となった。
 コールレートは、安定的に推移し、27日には前月末と同じ9.30%となった。民間金融機関預金残高は、27日において、前年同月末比26.5%増、前月末比2.1%増の3,557億ペソとなった。対民間貸出残高は、27日、前年同月末比40.2%増と、引き続き高い伸び率となり、16ヶ月連続で40%を超えた。
 外貨準備高は、持ち直す傾向にあり、27日には前月末比5.5億ドル増の478.4億ドルとなった。
 2012年第1四半期の資本流出(民間部門の対外資産形成)は、前年同期比56.3%減、前期比50.8%減の16億ドルとなった。
 REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測より0.05ペソ増の1ドル=4.80ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より1億ドル減の470億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 3月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比41.9%増、一次歳出が同44.5%増となった結果、一次財政収支は同34.6%減の8.5億ペソの赤字となった。また、総合収支は、23.92億ペソの赤字となった。
 REMの平均では、12年の一次財政黒字は前月の予測より5億ペソ減の55億ペソと予測されている。


(イ)税収


 4月の税収(経済省発表)は、前年同月比24.4%増の494.4億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同20.0%増の13,896百万ペソ(うち、国内分については同41.4%増、税関分については57.1%減)、法人及び個人に係る所得税収が同11.5%増の7,468百万ペソ、輸出税収が同53.6%増の7,024百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同32.5%増の7,852百万ペソとなった。
 REMの平均では、12年の税収は前月の予測より14億ペソ増の6,682億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 3月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比2%増の6,276百万ドル、輸入が同8%減の5,199百万ドルとなった結果、貿易黒字は同61%増の1,077百万ドルとなった。輸出については、主に化学製品や金属等が増加した一方、原油等が減少した。輸入については、資本財部品等が主に増加した一方、消費財や資本財等が減少し、2ヶ月連続の減少となった。
 REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より5億ドル減の882億ドル、輸入は同11億ドル減の786億ドルと予測されている。


click

 

 

バックナンバー
2011
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002

2012年3月

2012年2月

2012年1月

2011年12月

2011年11月

2011年10月

2011年9月

2011年8月

2011年7月

2011年6月

2011年5月

2011年4月

2011年3月

2011年2月

2011年1月

2010年12月

2010年11月

2010年10月

2010年9月

2010年8月

2010年7月

2010年6月

2010年5月

2010年4月

2010年3月

2010年2月

2010年1月

2009年12月

2009年11月

2009年10月

2009年9月

2009年8月

2009年7月

2009年6月

2009年5月

2009年4月

2009年3月

2009年2月

2009年1月

2007年12月

2007年11月

2007年10月

2007年9月

2007年8月

2007年7月

2007年6月

2007年5月

2007年4月

2007年3月

2007年2月

2007年1月

2006年12月

2006年11月

2006年10月

2006年9月

2006年8月

2006年7月

2006年6月

2006年5月

2006年4月

2006年3月

2006年2月

2006年1月

2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年9月
2005年8月
2005年7月
2005年6月
2005年5月
2005年4月
2005年3月
2005年2月
2005年1月
2004年12月
2004年11月
2004年10月
2004年9月
2004年8月
2004年7月
2004年6月
2004年5月
2004年4月
2004年3月
2004年2月
2004年1月
2003年12月
2003年11月
2003年10月
2003年9月
2003年8月
2003年7月
2003年6月
2003年5月
2003年4月
2003年3月
2003年2月
2003年1月
 
2002年12月
2002年11月
2002年10月
2002年9月
2002年8月
2002年7月
2002年6月
2002年5月
2002年4月
2002年3月
2002年2月
2002年1月