経済情報
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2012年7月アルゼンチンの経済情勢

 

2012年8月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)メルコスール首脳会合において、ベネズエラのメルコスールへの正式加盟が決定した。


(2)スペイン及びチリとの租税条約について、亜が破棄を通告した。


(3)政府発表では、7月の消費者物価の伸びは前年同月比9.9%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い21.13%となっている。


(4)6月の消費は、伸び幅が縮小してきており、生産・建設は、輸入制限措置等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は2.8%と予測されている。
 6月の貿易は、輸出が前年同月比10%減、輸入が同12%減となった結果、貿易黒字は同0.6%増となった。
 6月の財政収支は、前年同月比177.8%減となり、また、総合収支は、37.7億ペソの赤字となった。


(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.28%ペソ安の1ドル=4.5833ペソとなった(Blue市場では1ドル=6.32ペソ程度)。株価指数であるMerval指数は、31日(火)には前月末比54ポイント増となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、31日には前月末比と同じとなった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 27日、官報において、石油・ガス主権法の実施細則を発表し、石油・ガスの価格及び輸出の自由化に関する1989年の3政令を廃止、石油・ガス分野の国家投資計画のための戦略的計画・調整委員会を設置する旨決定した。
 27日、官報において、キシロフ経済省経済政策長官に対し、政府が株主となっている民間企業に対する決定権を付与した。

 

(2)貿易


 10日、亜政府は、WTO衛生・植物検疫委員会において、米国市場へのレモンの輸出、米国及び日本市場への牛肉の輸出障壁が継続してあることに対して懸念を表明した。
 20日、シカゴ穀物取引所における大豆価格は、645.78ドル/トンとなり、過去4年間で最高価格を記録した。
 25日、スペイン政府は、4月、亜からのバイオディーゼルの輸入を打ち切ると表明したが、4月以降も亜からのバイオディーゼルの輸入を続けている旨報じられた。
 26日、経済省は、57社に対し、輸出代金の本国送金・両替の猶予期間を拡大する政令を発表した。


(3)金融・財政


 5日、中銀理事会は、各銀行に対し、預金総額の5%を産業分野の投資目的の低い固定金利での融資に用いることを義務づける旨決定した。
 5日、中銀理事会は、外貨購入について、預金目的のドル購入を一時停止する等を決定した。
 25日、フェルナンデス大統領は、エバ・ペロン元大統領夫人(通称エビータ)の肖像を入れた100ペソ札を発行する旨発表した。

 

(4)物価・賃金


 19日、内務・運輸省は、8月6日以降、SUBEカード(IC乗車カード)を利用しないバス・鉄道の乗車の場合、同運賃を引き上げる旨発表した。そのため、当該バスの最低運賃は1.10ペソから2ペソに、鉄道の最低運賃は0.8ペソから1.5ペソに引き上げられる。
 30日、ブエノスアイレス市は、高速道路料金について、8月1日以降、平均20%値上げする旨発表した。
 23日、ブエノスアイレス州は、州内の電力会社に対し、電気料金の値上げを認める決定を行った。それにより、一般世帯向けは10〜28%増、事業者向けは8〜10%増となると見込まれる。

 

(5)対外関係


 2〜4日、モレーノ経済省国内取引長官等貿易ミッションは、アゼルバイジャンを訪問し、パグリエリ経済省国際通商長官は、亜企業は食料及び衣類分野での商業合意に至ったと発言した。
 13日、官報において、スペインとの租税条約について、破棄を通告した。
 16日、官報において、チリとの租税条約について、破棄を通告した。
 18日、フェルナンデス大統領は、ボリビア・モラレス大統領と会談し、ボリビア国営石油公社(YPFB)と亜国営エネルギー会社(ENARSA)間で天然ガス売買契約の署名を行った。
 31日、メルコスール首脳会合において、ベネズエラのメルコスールへの正式加盟が決定した。
 31日、フェルナンデス大統領とチャベス・ベネズエラ大統領は、YPF社とPDVSA社との戦略的同盟構築に向けた共同声明を発出した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 6月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比1.3%増、前月比1.1%増と、前月比が増加に転じた。
 7月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2%減の2.8%、13年は前月の予測より0.1%増の3.9%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 6月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.4%増、前月比13.5%増となり、前月比が増加に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比11.7%増、前月比0.9%増となり、前月比が増加に転じた。


(イ)自動車販売


 7月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比8.1%減、前月比8.1%減となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 6月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比4.1%減、前月比0.1%減と、3ヶ月連続で前年月比が減少した。分野別では、自動車において大幅な減少が見られた傍らで、化学やゴム・プラスチックが好調だった。
6月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比4.2%減、前月比1.1%減の72.0%となった。分野別では、石油精製や基礎金属等において上昇が見られた一方で、自動車や金属機械等において下落が見られた。
 REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.6%減の前年比2.0%増と予測されている。


(イ)建設活動


 6月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.1%減、前月比0.1%減となり、前年同月比は3ヶ月連続の減少となった。


(ウ)自動車生産


 7月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比6.7%減、前月比24.4%増と、前年同月比の減少幅が縮小した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 7月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.9%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。娯楽費において、前月比1.7%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、7月の消費者物価は、前年同月比21.13%、前月比1.76%の上昇となったと発表した。
 7月の卸売物価指数は、前年同月比12.8%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.3%減の前年比13.4%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 2012年第2四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比0.1ポイント減、前期比0.1ポイント増の7.2%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比1.0ポイント増、前期比2.0ポイント増の9.4%となった。
 6月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比27.10%増、前月比1.97%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.04%増の前年比23.60%増、12年の失業率は前月の予測と同じ7.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月後半に一時上昇したものの、徐々に下落し、31日(火)には、前月末比54ポイント増の2,400ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月後半には一時上昇したが、31日には前月末比と同じ1,088ポイントとなった。


(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比5.8センターボ(1.28%)ペソ安の1ドル=4.5833ペソとなった。他方、Blue市場(中銀の関与しない為替市場)においても、ペソ安傾向が継続しており、31日には1ドル=6.32ペソ程度となった。
 コールレートは、安定的に推移し、31日には前月末より0.15%増の9.60%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比21.9%増、前月末比0.2%増の3,672億ペソとなった。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比32.7%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、31日には前月末比4.7億ドル増の468.2億ドルとなった。
 REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測より0.01ペソ増の1ドル=4.86ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より4億ドル減の462億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 6月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比29.4%増、一次歳出が同33.4%増となった結果、一次財政収支黒字は同177.8%減の7.3億ペソの赤字となった。また、総合収支は、37.7億ペソの赤字となった。
 REMの平均では、12年の一次財政収支は前月の予測より27億ペソ減の4億ペソの赤字と予測されている。


(イ)税収


 7月の税収(経済省発表)は、前年同月比28.2%増の613.2億ペソとなり、過去最高水準となった。付加価値税収が同17.6%増の15,540百万ペソ(うち、国内分については同18.9%増、税関分については17.9%増)、法人及び個人に係る所得税収が同26.7%増の10,986百万ペソ、輸出税収が同50.1%増の6,723百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同34.0%増の10,876百万ペソとなった。
 REMの平均では、12年の税収は前月の予測より8億ペソ増の6,591億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 6月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比10.1%減の7,121百万ドル、輸入が同11.7%減の6,097百万ドルとなった結果、貿易黒字は同0.6%増の1,024百万ドルとなった。輸出については、主に原油等が増加した一方、大豆油や鉱石等が減少した。輸入については、自動車等が増加した一方、資本財等が減少した。
 REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より1億ドル減の859億ドル、輸入は同1億ドル減の760億ドルと予測されている。

 


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