経済情報
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2012年8月アルゼンチンの経済情勢

 

2012年9月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)米国、日本及びメキシコは、亜の輸入制限措置に関し、WTOの下での二国間協議を要請した。


(2) 亜政府は、欧州の亜産バイオディーゼルの輸入及び米国の牛肉とレモンの輸入に関し、WTOの下での二国間協議を要請した。


(3)政府発表では、8月の消費者物価の伸びは前年同月比10.0%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を大きく下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い24.23%となっている。


(4)7月の消費は、伸び幅が縮小してきており、生産・建設は、輸入制限措置等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は2.6%、13年は3.9%と予測されている。
 7月の貿易は、輸出が前年同月比0.9%増、輸入が同4.2%減となった結果、貿易黒字は同50.9%増となった。
 7月の財政収支は、前年同月比36.4%増となり、また、総合収支は、28.8億ペソの赤字となった。


(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.12%ペソ安の1ドル=4.6347ペソとなった(Blue市場では1ドル=6.37ペソ程度)。株価指数であるMerval指数は、31日(火)には前月末比8ポイント増となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、31日には前月末比37ポイント減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 3日、亜政府は、Boden2012債の償還期限到来により、約22億ドルの支払いを予定通り履行した。

 

(2)貿易・通商


 10日、亜政府は、バイオディーゼルの輸出課徴金(輸出関税)を20%から35%に引き上げるとともに、バイオディーゼルの国内価格を15%引き下げた。キシロフ経済省経済政策長官は、バイオディーゼル産業振興のためにこれまで輸出課徴金の税率を低めに抑えていたが、同産業が成熟してきたことから、大豆油や大豆ペレット等他の大豆加工品の税率と同じ扱いにすると説明した。
 17日、亜政府は、欧州の亜産バイオディーゼルの輸入障壁に関し、WTOの下での二国間協議を要請した。
 22日、米国と日本は、亜の輸入制限措置に関し、WTOの下での二国間協議を要請した。
 24日、メキシコも、亜の輸入制限措置に関し、WTOの下での二国間協議を要請した。
 24日、連邦歳入庁(AFIP)は、輸入業者の前払い課税分(付加価値税(IVA)21%の輸入財については10%、10.5%の財については5%、所得税の3%)の税率をそれぞれ引き上げ、20%、10%、6%とした。
 30日、亜政府は、米国の牛肉の輸入について、米国市場を不当に閉鎖しているとして、WTOの下での二国間協議を要請した。

 

(3)金融・財政


 6日、AFIPは、周辺国訪問のための外貨購入にあたり、現地通貨への両替のみ認める旨決定した。
 9日、亜・ウルグアイの租税情報交換協定の亜側の国内批准手続きを終了した(ウルグアイ側の批准手続きは終了していない)。
 30日、AFIPは、海外でのクレジットカードやデビットカード決済及びインターネット経由による海外商品の買い物について、15%の追加料金を加算することを決定した。当追加料金は、固定資産税または所得税から控除することができる。

 

(4)物価・賃金


 1日、亜政府は、ブエノスアイレス市に接続する3つの高速道路の料金について、一般乗用車の場合、14〜20%引き上げる旨発表した。
 28日、政労使代表による最低賃金評議会において、最低賃金を現行の2,300ペソから2,875ペソに25%引き上げることで合意された。

 

(5)対外関係


 1日、亜・中ハイレベル経済対話が実施され、中国側は、張暁強・中国国家発展改革委員会副主任等、亜側は、ティメルマン外相、デビード公共事業相、ロレンシーノ経済相,キシロフ経済省経済政策長官、ガルッチオYPF社CEO等が出席した。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 6月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比1.3%増、前月比1.1%増と、前月比が増加に転じた。
 8月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2%減の2.6%、13年は前月の予測と同じ3.9%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 7月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比7.2%増、前月比4.4%減となり、前月比が再び減少に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比14.1%増、前月比2.4%増となり、前月比の伸び幅が拡大した。


(イ)自動車販売


 8月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比9.3%減、前月比10.5%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比1.8%減、前月比1.4%増と、4ヶ月連続で前年同月比が減少した。分野別では、基礎金属において大幅な減少が見られた傍らで、ゴム・プラスチックが好調だった。
 7月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.6%減、前月比4.4%減の71.3%となった。分野別では、石油精製や非鉄金属等において上昇が見られた一方で、自動車や基礎金属等において下落が見られた。
 REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.1%減の前年比1.9%増、13年は4.0%増と予測されている。


(イ)建設活動


 7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比1.1%減、前月比1.9%増となり、前年同月比は4ヶ月連続の減少となった。


(ウ)自動車生産


 8月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比5.9%減、前月比20.9%増と、前月比が2ヶ月連続で増加した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 8月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.0%、前月比0.9%の上昇と、引き続き高い水準となった。交通通信費において、前月比2.4%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、8月の消費者物価は、前年同月比24.23%、前月比1.91%の上昇となったと発表した。
 8月の卸売物価指数は、前年同月比12.8%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.1%増の前年比13.5%、13年は14.8%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 7月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比25.32%増、前月比2.55%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
 REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より1.03%増の前年比24.63%増、13年は21.85%増、12年の失業率は前月の予測より0.1%増の7.3%、13年は7.1%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、月中頃にかけて上昇したものの、その後徐々に下落し、31日(金)には、前月末比8ポイント増の2,408ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月中頃にかけて下落したものの、その後徐々に上昇し、31日には前月末比37ポイント減の1,051ポイントとなった。


(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比5.1センターボ(1.12%)ペソ安の1ドル=4.6347ペソとなった。他方、Blue市場(中銀の関与しない為替市場)においても、ペソ安傾向が継続しており、31日には1ドル=6.37ペソ程度となった。
 コールレートは、安定的に推移し、31日には前月末より0.35%増の9.95%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比22.6%増、前月末比2.6%増の3,667億ペソとなった。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比31.3%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、31日には前月末比16.7億ドル減の451.5億ドルとなった。
第2四半期の資本流出(民間部門の対外資産形成)は、前年同期比67.9%減、前期比22.5%増の19.7億ドルとなった。
 REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測と同じ1ドル=4.86ペソ、13年は1ドル=5.63ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より2億ドル減の460億ドル、13年は479億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比25.4%増、一次歳出が同25.3%増となった結果、一次財政収支黒字は同36.4%増の5.3億ペソの黒字となった。また、総合収支は、28.8億ペソの赤字となった。
 REMの平均では、12年の一次財政収支は前月の予測より8億ペソ減の12億ペソの赤字、13年は20億ペソの赤字と予測されている。

 

(イ)税収


 8月の税収(経済省発表)は、前年同月比29.2%増の604.6億ペソとなった。付加価値税収が同24.7%増の16,910百万ペソ(うち、国内分については同45.1%増、税関分については11.0%減)、法人及び個人に係る所得税収が同34.6%増の12,244百万ペソ、輸出税収が同6.4%増の5,966百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同34.7%増の8,284百万ペソとなった。
 REMの平均では、12年の税収は前月の予測より38億ペソ増の6,629億ペソ、13年は8,114億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比0.9%増の7,382百万ドル、輸入が同4.2%減の6,368百万ドルとなった結果、貿易黒字は同50.9%増の1,014百万ドルとなった。輸出は、主に穀物や鉱物等が増加した一方、原油や燃料等が減少した。輸入は、非耐久消費財等が増加した一方、産業用運送設備や半耐久消費財等が減少した。
 REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より6億ドル減の853億ドル、輸入は同12億ドル減の748億ドル、13年の輸出は899億ドル、輸入は797億ドルと予測されている。

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