経済情報
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2011年8月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年9月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)大統領予備選挙が実施され、フェルナンデス大統領が50%以上の得票率を獲得し、第1位となった。


(2)9月以降の年金について、物価スライドに基づき16.8%の増額決定がなされ、また、政労使による最低賃金交渉において月額25%増額する旨の合意がなされた。


(3)政府発表では、8月の消費者物価の伸びは前年同月比9.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。


(4)7月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは11年の成長率は7.2%、12年は5.1%と予測されている。
 7月の貿易は、輸出が前年同月比22%増、輸入が同30%増となった結果、貿易黒字は同22%減となった。
 7月の財政収支は、前年同月比90.1%減の黒字となり、また、総合収支は、20億ペソの赤字と、2ヶ月連続の赤字となった。


(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.4%ペソ安の1ドル=4.1995ペソとなった。また、M2は、前年同月比38.1%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。株価指数であるMerval指数は、上旬の米国債格下げの影響を受け、前月末比357ポイント下落となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、米国債格下げ等を材料に上旬に急速に上昇し、31日には前月末比150ポイント上昇となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 8日、G20財務相・中央銀行総裁は、米国債格下げや欧州の債務不安問題を受け、「金融安定化を支援し、力強い経済成長を促進するため必要なあらゆる措置を実行する」との共同声明を発表。
 14日、大統領予備選挙が実施され、フェルナンデス大統領が50%以上の得票率を獲得し、第1位となった。
 30日、亜主要経済6団体の会合が行われ、レアルの切り下げ及び伯政府の保護貿易措置の亜経済への影響についての懸念、インフレに対する懸念、大統領予備選を踏まえ、政府との関係改善を図る必要性等が話し合われた。
 31日、下院一般立法委員会において、外国人農地所有制限法案に関する審議が行われ、外国人による農地所有を全国の農地面積の20%までに制限する点について、与野党ともに変更しないことで一致。

 

(2)物価・賃金


 3日、フェルナンデス大統領は、賃金上昇率等に応じて毎年3月及び9月に年金額を改定する旨定めたスライド制年金法に基づき、9月以降の年金を 16.8%増額し、最低支給額を月額1,434ペソとすることを発表。
 16日、医療労組と私立病院は、33.3%の賃上げに合意した。
 17日、医薬品労組と経営者側は、35.73%の賃上げに合意した。
 21日、フェルナンデス大統領は2012年には賃上げを抑制することが必要だと考えていると報じられる。
 26日、労働省において、政府代表、経営者代表及び労組代表の3者による最低賃金審議会が開催され、従来の最低賃金月額1,840ペソを25%引き上げ、2,300ペソとすることで合意(8月より適用)。フェルナンデス大統領は、同日、亜の最低賃金・年金は中南米地域において最高額となっており、(キルチネル前政権発足以降)8年連続で、政府の仲介により最低賃金の引き上げがなされたことに言及。
 31日、乳業労組と経営者側は、37%の賃上げで合意した。

 

(3)金融・財政


 18日、政府は議会に2012年度予算法案作成にかかる進捗報告書を提出。
 19日、フェルナンデス大統領は、国際金融危機の亜への影響を緩和するための措置を早急に検討していると報じられる。

 

(4)対外関係


 12日、UNASUR経済相・中央銀行総裁会合が開催され、行動計画において、ラテンアメリカ準備基金(FLAR)の拡大等の可能性、域内貿易における自国通貨での貿易決済の推進、域内貿易の促進に関する3つのワーキング・グループの新設が定められた。
 13日、昨年7月に署名された亜中二国間合意に基づき、エセイサ国際空港とブエノスアイレス市中心部を結ぶ鉄道の建設が計画されていると報じられる(費用は15億ドル。その85%を中国の金融機関が融資(融資期間12年))。
 24日、デビード公共事業相は、コルドバ州にあるエンバルセ原子力発電所を30年延命させるため、カナダの企業と技術移転にかかる署名(投資総額4.4億ドル)を行った。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 6月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比8.2%増、前月比0.4%増と、前年同月比の伸びが横ばいとなった。
8月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、11年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2ポイント上昇の7.2%、12年も同様に0.1ポイント上昇の5.1%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 7月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.0%増、前月比3.9%減となり、前年同月比の伸び幅は縮小した。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比16.7%増、前月比0.5%減となり、20ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。


(イ)自動車販売


 8月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比31.7%増、前月比11.9%増と、3ヶ月ぶりに増加に転じ、過去最高記録に達した。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 7月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比7.6%増、前月比0.6%減と、前年比では引き続き好調であるものの、前月比では2ヶ月連続で減少となった。分野別では、自動車において大幅な減少が見られたほか、化学、基礎金属等が好調だった。
 7月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比0.5ポイント上昇、前月比0.5ポイント下落の75.7%となった。分野別では、飲食料品、石油精製、化学、基礎金属等において上昇が見られた一方で、自動車等においては下落が見られた。
 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.1ポイント上昇の前年比7.6%増と予測されている。


(イ)建設活動


 7月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比14.0%増、前月比1.6%増となり、前月比増加に転じた。


(ウ)自動車生産


 8月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比17.9%増、前月比19.9%増と、再び前月比増加に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 8月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.8%、前月比0.8%の上昇と、引き続き高い水準となった。医療費及び衣類において、それぞれ同3.3%、同1.3%の上昇と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、8月の消費者物価は、前年同月比23.6%、前月比1.87%の上昇となったと発表した。
 8月の卸売物価指数は、前年同月比12.5%、前月比0.9%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.2ポイント下落の前年比13.5%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 7月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比29.09%増、前月比4.01%増と、前月比の伸び幅が拡大し、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても大きな上昇が見られた。
 REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より1.43ポイント上昇の前年比27.73%増、11年の失業率は前月と同じの7.3%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、上旬の米国債格下げの影響を受け、一時2,738ポイントまで下落したが、その後持ち直し、31日には、前月末比357ポイント下落の2,965ポイントとなった。
 また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、米国債格下げ等を材料に上旬に急速に上昇し、31日には前月末比150ポイント上昇の730ポイントとなった。


(イ)為替レートは、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、31日には前月末比5.7センターボ(1.4%)ペソ安の1ドル=4.1995ペソとなった。他方、非正規為替市場においても依然としてペソ安傾向にある。なお、中銀統計によると、今年上半期の資本流出は98億ドルに達する。
 コールレートは、月後半にかけて徐々に下落し、31日には前月末比0.62ポイント下落の9.44%となった。民間金融機関預金残高は、31日において、前年同月末比32.4%増、前月末比2.1%増の4,414億ペソとなり、8ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、31日、前年同月末比51.3%増と、引き続き高い伸び率となり、8ヶ月連続で40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比38.1%増と、2004年以来の高い伸び率を続けている。
 外貨準備高は、やや減少に傾向あり、31日には前月末比19億ドル減の500億ドルとなった。
 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測より0.03ペソ上昇の1ドル=4.31ペソ、11年の外貨準備高は同4億ドル減の504億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 7月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比26.8%増、一次歳出が同39.2%増となった結果、一次財政黒字は同90.1%減の4億ペソとなった。また、総合収支は、2億ペソの赤字と、2ヶ月連続の赤字となった。
 REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より7億ペソ減の132億ペソと予測されている。


(イ)税収


 8月の税収(経済省発表)は、前年同月比35.4%増の468億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同31.6%増の13,565百万ペソ(うち、国内分については同23.7%増、税関分については同43.0%増)、法人及び個人に係る所得税収が同51.0%増の9,099百万ペソ、輸出税収が同47.8%増の5,609百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同38.0%増の6,151百万ペソとなった。
 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より7億ペソ増の5,264億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 7月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比22%増の7,317百万ドル、輸入が同30%増の6,645百万ドルとなった結果、貿易黒字は同22%減の672百万ドルとなった。輸出については、全分野において増加が見られた。大豆関連品、トウモロコシ等穀物、化学製品、貴金属等が主に増加した。輸入についても、全分野において増加が見られ、特に液化天然ガスや輸送機械については同80%超増となった。
 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測と同じ798億ドル、輸入は同4億ドル増の709億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比23%減の89億ドルとなる)。

 

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