1 概要
(1)WTO物品理事会において、米・墨・EU・日本等は、亜の輸入制限に対する深い懸念を表明する共同声明を提出した。
(2)米国は、世銀国際紛争解決センター(ICSID)の仲裁判断について、亜が誠実に対応していないとして、亜を一般特恵関税制度の対象外とすることとした。
(3)政府発表では、3月の消費者物価の伸びは前年同月比9.8%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い23.20%となっている。
(4)2月の消費は、引き続き好調であったが、生産・建設は、輸入制限等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は4.4%と予測されている。
2月の貿易は、輸出が前年同月比13%増、輸入が同1%減となった結果、貿易黒字は同121%増となった。
2月の財政収支黒字は、前年同月比51.6%減となり、また、総合収支は、0.96億ペソの赤字と、6ヶ月連続で赤字となった。
(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比0.5%ペソ安の1ドル=4.3785ペソとなった。株価指数であるMerval指数は、30日には前月末比36ポイント増となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、30日には前月末比30ポイント増となった。
2 経済の主な動き
(1)経済全般
1日、フェルナンデス大統領は、通常国会開会式において一般教書演説を行い、エネルギー確保のためにあらゆる措置をとる、中銀改革法案を国会に提出した等発言。
9日、亜政府は、小麦について、462万トン分の輸出枠の拡大、トウモロコシについても、小麦に適用されている輸出枠決定プロセスを採用することを発表。
20日、CIRA(亜輸入会議所)及び通関業者センターによると、2月に導入された事前輸入宣誓供述制度(DJAI)について、これまで国内取引庁に提出された15万件のうち、現在は65%が問題ありとされ、承認が下りない状況。なお、制度導入当初は20〜30%の承認手続きの遅れがあった。
26日、米国は、世銀国際紛争解決センター(ICSID)の仲裁判断について、亜が誠実に対応していないとして、亜を一般特恵関税制度の対象外とすることとした。同措置は60日後に発効する。
29日、亜連邦歳入庁(AFIP)は、玩具、繊維品、履物、家電製品等輸入により国内生産に影響が及ぼされる商品について、輸入制限措置を強化すると発表。
30日、WTO物品理事会において、共同提案国(米、墨、豪、加、EU、日本、韓国、台湾、スイス、タイ、トルコ、コスタリカ、イスラエル、ニュージーランド、ノルウェー、パナマ)は、亜の輸入制限に対する深い懸念を表明する共同声明を提出した。ナオン外務副大臣は、同共同声明に対する驚きと不快を表明し、同共同声明は政治的意図を持つものである、亜に政治的にネガティブなレッテルを貼り付け、亜が実施中の正当な政策を見直すよう圧力をかけるものとした。また、亜外務省は、亜はG20で最も輸入を拡大した国であるとしている。
31日、フェルナンデス大統領は、WTOの共同声明を受け、ジョルジ産業相に対し、墨との二国間自動車貿易協定の見直しを指示したと報じられる。
31日、スペインの石油大手YPF社が石油採掘権を持つ鉱区の存在する州は、石油生産量の低下により、採掘税収入が減少したことから、チュブット州政府は、YPF社が保有する同州内のすべての石油採掘権を剥奪。また、同様にサンタ・クルス州、ネウケン州、メンドサ州、サルタ州及びリオ・ネグロ州も同社の採掘権を剥奪。
(2)物価・賃金
5日、ブエノスアイレス市教職員労組は、24%の賃上げで合意。
15日、ブエノスアイレス州教職員労組は、21%の賃上げで合意。
26日、バス運転手労組(UTA)は、18%の賃上げで経営側と合意(有効期限7月まで)。
(3)金融・財政
10日、IMFは、亜事務所を閉鎖し、今後はペルー事務所が亜を管轄すると報じられる。
12日、これまではドルを入手するため海外のATMを利用し亜に所有するペソ建て口座からドルを引き出すことできたが、中銀通知により、4月3日以降、同オペレーションは不可能となった。
16日、亜政府は、IMFによる金融評価プログラム(FSAP)を年内に受け入れると表明。
21日、中銀改革法案(兌換法及び中銀定款の改正)が成立。主な内容は、外貨準備がマネタリーベースの100%裏付けとなるべしという義務を廃止、中銀理事会が超過外貨準備の水準を決定、超過外貨準備による債務返済目的に二国間公的債務を追加、中銀の政府への前貸し上限の引き上げ等。
(4)対外関係
5〜7日、モレーノ経済省国内取引庁長官及びティメルマン外相は、貿易ミッションを率いてアンゴラを訪問。
16日、フェルナンデス大統領は、チリを訪問し、アンデス貫通鉄道トンネル建設計画の推進に向けた意思を再表明した。
23日、パリエリ経済省国際通商長官を団長とする通商・投資ミッションが訪米。
3 経済指標の動向
(1)経済活動全般
2011年第4四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比7.3%増、前期比0.8%増と、10期連続で前期比の伸びがプラスとなったが、前年同期比の伸び幅は縮小した。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長し、高成長に大きく寄与した。輸入については同9.8%増と、輸出の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは同15.6%増、民間消費デフレーターは同13.6%増となり、前期より増加した。その結果、2011年の実質GDPは、前年比8.9%となった。
1月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比4.3%増、前月比0.4%減と、前月比が減少に転じた。過去2年間で最低の伸び幅となった。
3月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.2%減の4.4%と予測されている。
(2)消費
(ア)小売
2月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比32.4%増、前月比0.6%減となり、前月比の減少幅が縮小した。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比33.2%増、前月比1.7%減となり、26ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。
(イ)自動車販売
3月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比3.6%減、前月比6.6%増となった。
(3)工業生産・建設活動
(ア)工業生産
2月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比0.8%減、前月比1.4%減と、28ヶ月ぶりに前年同月比が減少した。分野別では、石油精製において減少が見られたほか、自動車が好調だった。
2月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比5.1%減、前月比7.7%%増の75.3%となった。分野別では、基礎金属、ゴム・プラスチック等において上昇が見られた一方で、自動車等においては下落が見られた。
REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.3%減の前年比4.1%増と予測されている。
(イ)建設活動
2月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比4.5%減、前月比6.5%減となり、27ヶ月ぶりに前月同月比が減少に転じた。
(ウ)自動車生産
3月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比4.0%減、前月比24.9%増と、前年同月比が再び減少に転じた。
(4)物価・雇用
(ア)物価
3月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.8%、前月比0.9%の上昇と、引き続き高い水準となった。教育関係において、前月比4.1%増と、高い伸びが見られた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、3月の消費者物価は、前年同月比23.20%、前月比2.31%の上昇となったと発表した。
3月の卸売物価指数は、前年同月比12.7%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より、0.1%増の前年比13.6%と予測されている。
(イ) 雇用・賃金等
2月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比28.60%増、前月比1.26%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.24%増の前年比23.16%増、12年の失業率は前月の予測と同じ7.0%と予測されている。
(5)金融
(ア)株価指数であるMerval指数は、上下動を繰り返し、30日には、前月末比36ポイント増の2,683ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、月半ばにかけて下落したものの、再び上昇し、30日には前月末比30ポイント増の862ポイントとなった。
(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、30日には前月末比2.2センターボ(0.5%)ペソ安の1ドル=4.3785ペソとなった。他方、非正規為替市場においても、ペソ安傾向が継続しており、30日には1ドル=4.93ペソ程度となった。
コールレートは、安定的に推移し、30日には前月末より0.05%減の9.30%となった。民間金融機関預金残高は、30日において、前年同月末比28.5%増、前月末比3.6%増の3,384億ペソとなった。対民間貸出残高は、30日、前年同月末比43.4%増と、引き続き高い伸び率となり、15ヶ月連続で40%を超えた。
外貨準備高は、持ち直す傾向にあり、30日には前月末比6.2億ドル増の472.9億ドルとなった。
REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測より0.04ペソ減の1ドル=4.85ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より4億ドル増の471億ドルと予測されている。
(6)財政
(ア)財政収支
2月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比30.2%増、一次歳出が同33.6%増となった結果、一次財政収支は同51.6%減の7.0億ペソとなった。また、総合収支は、0.96億ペソの赤字となった。
REMの平均では、12年の一次財政黒字は前月の予測より16億ペソ減の60億ペソと予測されている。
(イ)税収
3月の税収(経済省発表)は、前年同月比29.1%増の483.6億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同17.1%増の13,746百万ペソ(うち、国内分については同38.4%増、税関分については15.2%減)、法人及び個人に係る所得税収が同30.2%増の7,772百万ペソ、輸出税収が同44.8%増の5,669百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同40.5%増の7,269百万ペソとなった。
REMの平均では、12年の税収は前月の予測より105億ペソ増の6,667億ペソと予測されている。
(7)貿易
2月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比13%増の6,098百万ドル、輸入が同1%減の4,757百万ドルとなった結果、貿易黒字は同121%増の1,341百万ドルとなった。輸出については、トウモロコシ等の穀物や食用油等が主に増加した一方、金属物等が減少した。輸入については、天然ガス等燃料が主に増加した一方、消費財や輸送機械等が減少した。輸入が前年同月比減となるのは2009年11月以来となる。
REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より16億ドル増の887億ドル、輸入は同1億ドル減の797億ドルと予測されている。
(8)国際収支
2011年第4四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比312百万ドル減の2,988百万ドルの黒字、所得収支が同134百万ドル減の2,878百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は356百万ドルの赤字と、2四半期連続の赤字となった。また、資本収支は、同233百万ドル減の994百万ドルの赤字と、2四半期連続の赤字となった。
その結果、2011年の経常収支は、17百万ドルの黒字(貿易収支が2,988百万ドルの黒字、所得収支が2,878百万ドルの赤字となり)、資本収支は、994百万ドルの赤字となった。
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