経済情報
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2011年2月アルゼンチンの経済情勢

 

2011年3月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)政府は、非自動輸入許可対象品目に200品目を追加した。メンデス亜工業連盟(UIA)会長が、4月の任期終了を前に同会長職を辞任し、アセベドUIA第一副会長が臨時会長に就任した。


(2)株価指数であるMerval指数は、月初に3,600ポイントを上回る展開も見られたものの、その後は軟調に推移し、中東・アフリカ情勢の緊迫化等を受けて、年初来安値を記録した後、原油相場の一服感等を受けた海外主要株式市場における上昇等から上昇した。また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、500ポイント台前半で横ばいで推移した後、月末にかけて、インフレ率の公式統計と民間推計の乖離が拡大したことへの嫌気や中東・アフリカ情勢の緊迫化を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇した。


(3)1月の消費及び生産は、引き続き好調であった。市場見通しでは10年の成長率は8.5%、11年は5.9%と予測されている。

政府発表では、2月の消費者物価の伸びは前年同月比10.0%の上昇となり、その伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。

1月の財政収支は、税収の好調等を受けて、黒字幅は前年同月比102.6%増となった。また、総合収支は、1億ペソの黒字と、再び黒字となった。


(4)1月の貿易は、輸出が前年同月比22%増、輸入が同52%増となった結果、貿易黒字は同58%減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 2日、経済省国内取引庁が民間コンサルタント会社等に対しインフレ率の測定方法等について報告を求める書簡を発出した旨報じられた。  9日、メンデス亜工業連盟(UIA)会長は、4月の任期終了を前に同会長職を辞する旨表明した。

 15日、メンデスUIA会長が、同会長職を正式に辞任し、アセベドUIA第一副会長が臨時会長に就任した。

 15日、非自動輸入許可対象品目に200品目を追加する省令が官報に掲載された。新たに追加された品目は、繊維製品、ガラス、オートバイ、自動車(ガソリン車は総排気量が3リットル超のもの、ディーゼル車は総排気量が2.5リットル超のもの)、自動車部品、製紙、電子製品(携帯端末、PCモニター、DVDプレーヤー・レコーダー等)、家電等とされ、今回の措置により、非自動輸入許可制度の対象品目は約600品目となった。

 17日、ジョルジ産業相は、自動車輸入・販売代理店会議所(CIDOA)のメンバーと会合を行った。同相は、会合の中で、「輸出計画書を早急に提出する」よう求め、それが「実現するまでは、メルコスール域外からの自動車輸入を制限するというのが政府の決定である」と伝えた。

 24日、フェルナンデス大統領は、工業戦略計画2020を発表した。今後、食品、履物・繊維・衣料、木材・製紙・家具、建築資材、資本財、農業機械、自動車・自動車部品、衣料品、ソフトウェア及び化学製品・石油化学製品の10分野における今後10年間の産業振興策を協議し、短期、中期及び長期のアクションプランの提案を作成するための分野別フォーラムが結成される。また、同計画においては、目標として、10年間で工業GDP及び工業製品輸出の倍増、平均経済成長率5%を10年間維持、10年間で失業率を5%まで低下等が掲げられている。

 25日、経済省国内取引庁が民間コンサルタント会社オルランド・フェレーレス社に対し正当取引法第9条違反を理由に罰金50万ペソを課した旨報じられた。他方、同社は、罰金の通知は受け取っていないとした。

 25日、ブドゥー経済相及びジョルジ産業相は、輸入制限の恩恵を受けている国内産業部門の代表らと会合し、輸入品との競争緩和を利用して過剰な価格設定を行うことがないよう要請した。

 25日、政府は、農牧補助金の不透明な取り扱い等を理由に、亜農牧取引監視機構(ONCCA)を廃止する旨決定した。農牧製品の輸出管理等ONCCAの機能は、経済省の管轄下に新たに設けられる国内消費補助金調整・評価ユニットに移され、経済相、農牧相、経済省国内取引長官及び連邦歳入庁(AFIP)長官により運営される。

 

(2)物価・賃金

 

 1日、一部のガソリンスタンドは、燃料価格を最大3.6%引き上げた。

 1日、一部のケーブルテレビ配信会社は、料金を16%引き上げた。

 1日、政府は、サンタフェ州ロサリオ市近郊における抗議活動に関し、和解命令を行った。

 2日、ガソリン等液体燃料の価格を1月28日の価格に戻すことを義務付ける庁令が官報に掲載された。

 2日、サンタフェ州ロサリオ市近郊における抗議活動が、政府による和解命令を受けて打ち切られた。

 2日、労働総同盟(CGT)は、幹部会合を開催し、その後、「我々は、賃上げ交渉において、未だ抑制されることのないインフレ率を考慮しなければならない」との見解を発表したほか、所得税課税最低限の引き上げを要求する姿勢を示した。

 2日、フェルナンデス大統領は、最低年金額を3月以降17.3%引き上げる旨発表した。

 25日、ブエノスアイレス州と一部教員労組は、基本給の23.7%引き上げ、最低賃金の計26.3%引き上げで合意した。

 25日、ブエノスアイレス市と一部教員労組は、賃金の計31%引き上げ、最低賃金の26.8%引き上げで合意した。

 

(3)金融・財政

 

 2日、政府が2.6億ドルの国債を発行し、国家社会保障機構(ANSES)が管理する持続性保証基金(FGS)がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された。

 3日、政府が8億ドルの国債を発行し、国家社会保障機構が管理する持続性保証基金がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された(ただし、発行日は昨年11月29日とされている)。

 9日、中銀理事会は、ナシオン銀行が中国支店を設置することを承認した。

 10日、レベロ造幣局長は、紙幣不足の責任を取る形で辞任した。後任として、ダウラ国家社会保障機構持続性保証基金管理局長が就任した。

10日、政府が8億ドルの国債を発行し、国家社会保障機構が管理する持続性保証基金がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された(ただし、発行日は昨年12月9日とされている)。

10日、政府が1.3億ドルの国債を発行し、国家社会保障機構が管理する持続性保証基金がこれを引き受ける旨の省令が官報に掲載された(ただし、発行日は昨年12月20日とされている)。

 

(4)対外関係


18日、ジョルジ産業相は、ピメンテル伯開発商工相と会談を行い、非自動輸入許可制度の対象品目が追加されたことに関連し、同制度の実施状況を相互に監督しあうことを目的とする二国間フォロー委員会を設置することで合意した。

25日、フェルナンデス大統領は、訪亜中のムヒカ・ウルグアイ大統領と会談した。同会談において、ムヒカ大統領は、非自動輸入許可制度の対象品目が追加されたことに関連し、ウルグアイ製品に対する輸入制限を撤廃するようフェルナンデス大統領に要求した。これに対し、フェルナンデス大統領は、「メルコスールは非自動輸入許可制度の対象ではない。ウルグアイはメルコスール加盟国であり、不正競争に関与していないので、問題はない」と述べた由。また、両者は、同制度の実施状況を相互に監督しあうことを目的とする二国間フォロー委員会を設置することで合意した由。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 12月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比9.4%増、前月比1.1%増と、引き続き前年同月比の伸びが大幅にプラスとなった。2010年年間では、前年比9.1%増となった。

2月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、10年の実質GDP成長率は前月の予測より0.1ポイント上昇の8.5%、11年は同0.1ポイント上昇の5.9%と予測されている。

 

(2)消費

 

(ア)小売
 1月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比27.2%増、前月比8.1%減となり、引き続き好調だった。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比15.2%増、前月比0.6%増となり、14ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。

(イ)自動車販売

 2月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比14.3%増、前月比2.5%減と、前年に比べ、引き続き大きく増加したものの、その伸び幅は鈍化してきている。

 

(3)工業生産・建設活動

 

(ア)工業生産
 1月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比10.5%増、前月比5.6%減と、3ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。分野別では、自動車及び金属機械において大幅な伸びが見られたほか、化学、繊維等も好調だった。

1月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比2.9ポイント上昇、前月比13.4ポイント下落の69.5%と、休暇シーズンに入ったことを受けて大きく下落したものの、前年同月と比べると上昇した。分野別では、たばこ及び石油精製を除く全分野において下落が見られた。 REMの平均では、11年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.2ポイント上昇の前年比6.5%増と予測されている。

 

(イ)建設活動
 1月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比11.7%増、前月比0.9%増と、4ヶ月連続で前年同月比の伸びが2桁台となった。

 

(ウ)自動車生産
 2月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比4.8%増、前月比10.4%減と、前年に比べ、引き続き増加したものの、その伸び幅は大きく鈍化した。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価

 2月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比10.0%、前月比0.7%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。飲食料が前月比0.3%の上昇と小幅な上昇に止まったのに対し、娯楽は同3.5%、衣類は同2.2%、それぞれ大きく上昇した。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られている。

2月の卸売物価指数は、前年同月比13.6%、前月比0.9%の上昇となり、前年同月比の伸びは鈍化してきているものの、引き続き高い水準となった。

REMの平均では、11年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測より0.2ポイント上昇の前年比14.6%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等

 2010年第4四半期の失業率(INDEC発表)は、前年同期比1.1ポイント減、前期比0.2ポイント減の7.3%となり、また、準失業率(非自発的に週35時間未満の労働にしか従事できない者)は、前年同期比1.9ポイント減、前期比0.4ポイント減の8.4%となり、引き続き改善した。

 1月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比26.84%増、前月比1.82%増となり、引き続き上昇幅が拡大した。民間非正規部門において、前月比4%を超える大きな上昇が見られた。

REMの平均では、11年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.55ポイント上昇の前年比25.12%増、11年の失業率は前月の予測と同じ7.4%と予測されている。

 

(5)金融

 

(ア)株価指数であるMerval指数は、月初に3,600ポイントを上回る展開も見られたものの、その後は軟調に推移し、中東・アフリカ情勢の緊迫化等を受けて、24日には、3,383ポイントとなり、年初来安値となった。しかし、その後は、原油相場の一服感等を受けた海外主要株式市場における上昇等から上昇し、28日には、前月末比137ポイント下落の3,456ポイントとなった。

また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、500ポイント台前半で横ばいで推移した後、月末にかけて、インフレ率の公式統計と民間推計の乖離が拡大したことへの嫌気や中東・アフリカ情勢の緊迫化を受けたリスク回避志向の高まり等により上昇し、28日には前月末比32ポイント上昇の570ポイントとなった。

 

(イ)為替レートは、月初にペソ安になったものの、中銀によるドル買い介入等により、引き続き安定して推移し、28日には前月末比2.2センターボ(0.5%)ペソ安の1ドル=4.03ペソとなった。

コールレートは、上昇基調で推移し、28日には前月末比0.25ポイント上昇の9.63%となった。民間金融機関預金残高は、28日において、前年同月末比33.7%増、前月末比1.7%増の2,641億ペソとなり、2ヶ月連続で前年同月末比の伸びが30%を超えた。対民間貸出残高は、28日、前年同月末比43.1%増と、引き続き伸び率が上昇し、2ヶ月連続で40%を超えた。M2は、中銀のドル買い介入等により増加を続け、前年同月比28.6%増と、引き続き高い伸び率となった。

外貨準備高は、中銀が外貨の流入に対し引き続きドル買い介入を行ったにもかかわらず、月初に減少した後、ほぼ横ばいで推移し、28日には前月末比3億ドル減の523億ドルとなった。

 REMの平均では、11年の為替レートは前月の予測と同じ1ドル=4.28ペソ、11年の外貨準備高は前月の予測より2億ドル減の530億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支

 1月の財政収支(経済省発表)は、歳入が税収の好調等を受けて前年同月比41.7%増となり、一次歳出が同39.3%増加した結果、一次財政黒字は同102.6%増の21億ペソとなった。また、総合収支は、1億ペソの黒字と、再び黒字となった。

REMの平均では、11年の一次財政黒字は前月の予測より1億ペソ減の152億ペソと予測されている。


(イ)税収

 2月の税収(経済省発表)は、前年同月比34.2%増の368億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同29.7%増の10,689百万ペソ(うち、国内分については同23.6%増、税関分については同47.4%増)、法人及び個人に係る所得税収が同46.5%増の6,868百万ペソ、輸出税収が同11.2%増の3,023百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同43.8%増の5,405百万ペソとなった。 REMの平均では、11年の税収は前月の予測より27億ペソ増の5,129億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 1月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比22%増の5,392百万ドル、輸入が同52%増の4,879百万ドルとなった結果、貿易黒字は同58%減の513百万ドルとなった。輸出については、燃料を除く全分野において軒並み20%台の増加が見られた。乗用車、大豆油等食用油、大豆粕等食品工業くず、乳製品、コンプレッサー等機械類、銅鉱石、バイオディーゼル等化学製品等が増加した一方、原油、貴金属、石油ガス、砂糖等が減少した。輸入については、全分野において増加が見られ、燃料が同163%増となったほか、資本財部品が同68%増、乗用車が同62%増などとなった。リン酸塩、鉄鉱石、アルミナ、ガスタービン部品、電子回路、コンバーター部品、発電設備、コンバイン、デジタルテレビ用デコーダー、軽油、液化天然ガス、乗用車、農薬等が増加した。 REMの平均では、11年の輸出は前月の予測より3億ドル増の780億ドル、輸入は同4億ドル増の680億ドルと予測されている(この場合、11年の貿易黒字は前年比17%減の100億ドルとなる)。

 

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