経済情報
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2012年6月アルゼンチンの経済情勢

 

2012年7月作成

在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)WTO物品理事会において、EU、米国、日本等は、亜政府の輸入制限措置に対して懸念を表明。


(2)ベネズエラのメルコスール正式加盟がパラグアイのメルコスール参加資格を停止した上で、伯、亜、ウルグアイの大統領により「決定」された。
(3)政府発表では、6月の消費者物価の伸びは前年同月比9.9%の上昇と、引き続き高い水準とされた。他方、民間においては、公式統計は引き続き実態を下回っているものと見られており、民間コンサルタント8社の推計集計値ではさらに高い23.96%となっている。


(4)5月の消費は、伸び幅が縮小してきており、生産・建設は、輸入制限措置等の影響を受け、前年同月比減となった。市場見通しでは12年の成長率は3.0%と予測されている。
 5月の貿易は、輸出が前年同月比6%減、輸入が同5%減となった結果、貿易黒字は同9.7%減となった。
 5月の財政収支は、前年同月比23.9%減となり、また、総合収支は、1.1億ペソの黒字となった。


(5)為替レートは、緩やかにペソ安となり、前月末比1.21%ペソ安の1ドル=4.5253ペソとなった(Blue市場では1ドル=5.95ペソ程度)。株価指数であるMerval指数は、29日(金)には前月末比91ポイント増となった。カントリーリスク指数であるEMBI+は、29日には前月末比148ポイント減となった。

 

2 経済の主な動き


(1)経済全般


 1日、送ガス会社TGN(主要株主は、テチントグループのテクペトロル社と仏トタル社)は、送ガス料金の凍結を理由として、破産宣言を行った。
 4日、YPF株主総会が開催され、代表取締役社長ミゲル・ガルッチオ氏、政府代表取締役キシロフ経済政策長官ほか、15名の取締役が選出された。
 5日、YPFガルッチオ社長は、現在の2倍にあたる年間70億ドルの投資を5年間行い、生産目標を2億1,600万バレルとすることを発表。
 14日、ECLAC(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)は、ラ米・カリブ地域のマクロ経済報告において、2012年の亜経済の経済成長率を3.5%と予測した。

 

(2)貿易


 15日、フィアット社及びルノー社は、コルドバ州の工場を終日生産停止した。
 22日、WTO物品理事会において、EU、米国、日本等は、亜政府の輸入制限措置に対して懸念を表明。
 26日、亜政府は、メルコスール・メキシコ間の自動車分野の貿易と生産に関する合意書(経済補完合意第55号)にかかる亜墨間の二国間合意(付属書T)の適用を3年間一時停止すると発表した。その理由として、2012年3月に伯墨間で行われた二国間合意が、同合意第55号の規定及び目的(自動車分野の自由貿易の完全実施を目指す)に反していることを挙げている。

 

(3)金融・財政


 1日、経済省モレーノ国内取引長官は、大手両替商と会談し、Blueレートを1ドル=5〜5.1ペソ程度まで押し戻すよう要請したと報じられた。その後、Blue市場では6営業日に渡って相場が立たない、乱高下するなどの混乱が生じた。
 6日、フェルナンデス大統領は、7月1日より、国内生産されている資本財の関税を0%から14%に引き上げ、国内生産されていない資本財の関税を2%とする一方、資本財を生産する亜企業に対する優遇税制を12月31日まで延長する旨発表した。
 25日、米国投資ファンドDart(EM)及びNML Capital(Elliot)は、残存民間債務問題に関し、亜中銀がニューヨーク連銀に保有する外貨準備1億ドルの凍結を要求していたが、米国最高裁は、同投資ファンドの要求を棄却した。

 

(4)物価・賃金


 21日、トラック労組は、経営者側と25.5%の賃上げで合意した。

 

(5)対外関係


 13日、欧州議会は、2014年1月1日以降、EUの一般特恵関税制度の対象国を現行の175ヶ国から75ヶ国に縮小する旨決定。対象外となる国には亜が含まれる。
 25日、フェルナンデス大統領は、温家宝・中国首相と会談し、亜ベルグラーノ貨物線復旧計画に対する融資契約等の署名を行った。
 29日、メルコスール首脳会合において、ベネズエラのメルコスール正式加盟が「決定」された。パラグアイのルゴ前大統領の弾劾を受け、これまでベネズエラの正式加盟に反対していた同国のメルコスール参加権が停止されたことを受け、伯、亜、ウルグアイの3ヵ国の大統領の合意により決定されたもの。7月31日、正式加盟承認のため、リオデジャネイロにおいてメルコスール特別会合が開催予定。また、同会合において、「メルコスール及び中国の経済・貿易協力強化に関する共同宣言」が採択された。

 

3 経済指標の動向


(1)経済活動全般


 2012年第1四半期の実質GDP(INDEC発表)は、前年同期比5.2%増、前期比0.9%増と、11期連続で前期比の伸びがプラスとなったが、前年同期比の伸び幅は縮小した。民間消費や政府消費が引き続き高い伸び率で成長し、高成長に大きく寄与した。第1四半期輸入については同1.4%増と、輸出の伸びを下回った。GDPデフレーターは同13.7%増、民間消費デフレーターは同13.2%増となり、前期より減少した。
 5月の経済活動指数(INDEC発表)は前年同月比0.2%増、前月比0.6%減と、前月比が再び増加に転じた。
 5月のREM(民間エコノミストの予測の中銀による集計値)の平均では、12年の実質GDP成長率は前月の予測より0.9%減の3.0%、13年は前月の予測より0.2%減の3.8%と予測されている。

 

(2)消費


(ア)小売


 5月のショッピングセンター売上高(INDEC発表)は、前年同月比19.5%増、前月比3.3%減となり、前月比が減少に転じた。スーパーマーケット売上高(INDEC発表)は、前年同月比22.2%増、前月比6.0%減となり、前月比が減少に転じた。


(イ)自動車販売


 6月の自動車販売台数(自動車協会(ADEFA)発表)は、前年同月比1.6%減、前月比12.0%増となった。

 

(3)工業生産・建設活動


(ア)工業生産


 5月の工業生産指数(INDEC発表)は、前年同月比4.5%減、前月比2.4%減と、2ヶ月連続で前年月比が減少した。分野別では、自動車において大幅な減少が見られた傍らで、飲食料品が好調だった。
 5月の稼働率(INDEC発表)は、前年同月比5.2%減、前月比5.8%減の73.1%となった。分野別では、非鉄鉱物や石油精製等において上昇が見られた一方で、自動車や金属機械等において下落が見られた。
 REMの平均では、12年の工業生産指数の上昇率は前月の予測より0.6%減の前年比2.6%増と予測されている。


(イ)建設活動


 5月の建設活動指数(INDEC発表)は、前年同月比8.8%減、前月比0.9%減となり、前年同月比は2002年11月以来の大幅な減少となった。


(ウ)自動車生産


 6月の自動車生産台数(自動車協会発表)は、前年同月比34.4%減、前月比12.0%減と、前月比が再び減少に転じた。

 

(4)物価・雇用


(ア)物価


 6月の消費者物価指数(INDEC発表)は、前年同月比9.9%、前月比0.7%の上昇と、引き続き高い水準となった。娯楽費において、前月比1.6%増と、高い伸びが見られた。他方、公式統計は引き続き実態をかなり下回っているものと見られており、一部の野党議員らは、民間コンサルタント会社8社による推計の集計値として、6月の消費者物価は、前年同月比23.96%、前月比1.63%の上昇となったと発表した。
 6月の卸売物価指数は、前年同月比12.8%、前月比1.0%の上昇となり、引き続き高い水準となった。
 REMの平均では、12年の消費者物価指数の上昇率は前月の予測と同じ、前年比13.7%と予測されている。


(イ)雇用・賃金等


 5月の給与指数(INDEC発表)は、前年同月比29.30%増、前月比2.35%増と、引き続き高い水準となった。民間正規部門及び民間非正規部門においても同様の上昇が見られた。
REMの平均では、12年の給与指数の上昇率は前月の予測より0.21%増の前年比23.56%増、12年の失業率は前月の予測と同じ7.2%と予測されている。

 

(5)金融


(ア)株価指数であるMerval指数は、徐々に上昇し、29日(金)には、前月末比91ポイント増の2,347ポイントとなった。
また、カントリーリスク指数であるEMBI+は、徐々に落ち着きを見せ、29日には前月末比148ポイント減の1088ポイントとなった。


(イ)為替レートは、ドルへの両替規制、中銀による介入等により、引き続き安定して推移しつつ、緩やかにペソ安となり、29日には前月末比5.4センターボ(1.21%)ペソ安の1ドル=4.5253ペソとなった。他方、Blue市場(中銀の関与しない為替市場)においても、ペソ安傾向が継続しており、月初めは政府当局による口先介入により、一時取引が行われなかったが、29日には1ドル=5.95ペソ程度となった。
 コールレートは、安定的に推移し、29日には前月末より0.05%増の9.45%となった。民間金融機関預金残高は、29日において、前年同月末比23.3%増、前月末比2.4%増の3,665億ペソとなった。対民間貸出残高は、29日、前年同月末比35.8%増と、引き続き高い伸び率となった。
外貨準備高は、29日には前月末比6.3億ドル減の463.5億ドルとなった。
 REMの平均では、12年の為替レートは前月の予測より0.01ペソ増の1ドル=4.85ペソ、12年の外貨準備高は前月の予測より6億ドル減の466億ドルと予測されている。

 

(6)財政


(ア)財政収支


 5月の財政収支(経済省発表)は、歳入が前年同月比24.5%増、一次歳出が同28.0%増となった結果、一次財政収支は同23.9%減の23.9億ペソの黒字となった。また、総合収支は、1.1億ペソの黒字となった。
 REMの平均では、12年の一次財政黒字は前月の予測より16億ペソ減の23億ペソと予測されている。


(イ)税収


 6月の税収(経済省発表)は、前年同月比20.6%増の586.8億ペソとなり、引き続き大幅に増加した。付加価値税収が同25.4%増の15,391百万ペソ(うち、国内分については同43.5%増、税関分については6.7%減)、法人及び個人に係る所得税収が同20.0%増の16,035百万ペソ、輸出税収が同19.1%減の4,162百万ペソ、社会保障雇用主負担金が同33.6%増の7,810百万ペソとなった。
 REMの平均では、12年の税収は前月の予測より50億ペソ増の6,599億ペソと予測されている。

 

(7)貿易


 5月の貿易(INDEC発表)は、輸出が前年同月比6.1%減の7,556百万ドル、輸入が同5.1%減の6,039百万ドルとなった結果、貿易黒字は同9.7%減の1,517百万ドルとなった。輸出については、主に大豆粕等が増加した一方、燃料や大豆油等が減少した。輸入については、燃料・潤滑油等が増加した一方、輸送機械や資本財等が減少し、4ヶ月連続の減少となった。
 REMの平均では、12年の輸出は前月の予測より6億ドル減の860億ドル、輸入は同6億ドル減の761億ドルと予測されている。

 

(8)国際収支


 2012年第1四半期の国際収支(INDEC発表)は、貿易収支が前年同期比1,140百万ドル減の3,600百万ドルの黒字、所得収支が同411百万ドル減の2,925百万ドルの赤字等となった結果、経常収支は377百万ドルの赤字と、3四半期連続の赤字となった。また、資本収支は、同936百万ドル増の618百万ドルの黒字と、3四半期ぶりの黒字となった。


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