政治情報
月1回更新

2012年12月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2013年1月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要
 (1)内政:フェルナンデス大統領は亜民政移管29周年及び「人権の日」を祝う演説を行い,亜司法,軍事政権及び大企業間の癒着体質を指摘した上で,名指しこそしなかったものの,何度となくクラリン・グループを批判した。政府とクラリン・グループの対立の火種となっている放送法改正法に関し,連邦裁判所第一審は,同改正法の全ての条項において違憲性は認められないとの政府の立場を支持する判決を下し,同改正法の一部の条項に適用されている執行停止措置を即刻解除するよう命じた。右判決を不服とするクラリン・グループは控訴請求を行い,引き続き一部条項の執行が停止されている。リオネグロ州サン・カルロス・デ・バリローチェ市において,スーパーマーケット等に対する略奪行為が発生し,同現象がブエノスアイレス州を含む国内各地に飛び火した。その他,政府はブエノスアイレス市にある亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル(LA RURAL)」の再国有化を発表した。

 (2)外交: フェルナンデス大統領は,亜を公式訪問したエクアドルのコレア大統領と会談した。また,同大統領はブラジリアで開催された第44回メルコスール首脳会合に出席し,総会で亜の経済状況に関する演説を行った他,ボリビア及びエクアドルのメルコスール加盟についても協議した。フェルナンデス大統領及びティメルマン外相は,在亜イスラエル協会(DAIA)代表と会合し,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けたイランとの交渉等に関する協議を行った。ハンブルクの国際海洋法裁判所は,全会一致で,ガーナ政府に対して,10月2日より同国テーマ港に拘留されている亜海軍の練習船「リベルタッド」号を直ちに無条件で解放するよう命じた。

2 内政

 (1)下院の次期執行部役員選出 

   5日,下院において,同院の次期執行部役員が以下のとおり選出された(注:下院の執行部役員を選出するための準備セッションは毎年12月1〜10日の間に開催される旨,下院規則において規定されている)。

(ア)議長:ドミンゲス下院議員(ペロン党キルチネル派)

(イ)第1副議長:アブダラ・デ・マタラッツォ下院議員(急進党キルチネル派)

(ウ)第2副議長:ネグリ下院議員(急進党)

(エ)第3副議長:シシリアーニ下院議員(社会党)

 

 (2)放送法改正法をめぐる司法の動き

 (ア)2009年10月に成立し,2010年9月に施行された「視聴覚コミュニケーション・サービス法(通称:放送法改正法)」(法律第26,522号)の一部の条項(注:規定の上限を超える放送ライセンスを所有している企業に対し,超過分のライセンスを手放すよう義務づける条項等)の適用が,クラリン・グループからの違憲性を理由とする執行停止請求により,2009年12月より3年間の間,停止されていた。2012年12月6日,連邦控訴裁判所は7日までとされていた放送法改正法の係争条項に関する同執行停止措置を,第一審で当該条項に関する違憲性訴訟の判決が出るまで延長する旨決定した。これ対し政府は,控訴審判決を不服とする最高裁上告を行った。

 (イ)14日,連邦裁判所第一審のアルフォンソ判事は,放送法改正法の全ての条項に違憲性は認められないとの判決を下し,控訴審が6日に出した判決である執行停止措置の延長を即刻解除するよう命じた。右判決を不服とするクラリン・グループは,17日に控訴請求を行った。同17日,サバテラAFSCA(「連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構」)代表はクラリン・グループの本社に赴き,14日の第一審判決を受け,放送法改正法の全条項が執行に至ったことにより,同グループの放送ライセンスの分離作業及び放送事業の見直しに着手すると通達した。

 (ウ)18日,クラリン・グループによる17日の控訴請求が認められ,アルフォンソ第一審判事は,控訴審判決が出るまでは,係争条項は執行停止状態に置かれるとした。

 (エ)19日,政府はクラリン・グループが控訴した14日の判決について,控訴審における裁判の長期化を阻止するべく,最高裁に対し「跳躍上告」の申し立てを行った(注:6日の判決(上記ア)のこともあり,政府は控訴裁判所の民事・商事部が反政府の立場を取っているとの理解のもと,できる限り同部における控訴審を避けるべく,14日の第一審判決が政府にとって有利なものであったにもかかわらず,跳躍上告を申し立てた)。

 (オ)27日,最高裁の7名の判事は,政府による跳躍上告請求を全会一致で棄却し,また,政府が6日の控訴審判決を不服として行った上訴の申し立ても併せて棄却した。最高裁の右判断により,放送法改正法の違憲性訴訟は控訴審で裁かれることになり,同法の一部条項(第45条及び第161条)に適用されている執行停止措置は,控訴審における右判決が出るまで有効となることとなった。


 (3)亜民政移管29周年及び「人権の日」の記念式典

 (ア)9日夜,フェルナンデス大統領は大統領府前の特設ステージにて,亜民政移管29周年及び「人権の日」を祝う演説を行った。今次演説は,国内の約30ヶ所の

会場で同時生中継された他,地上波・ケーブルテレビを問わず,殆どの放送局で生放送された(注:ラジオも含む)。右演説の前後には,多数のアーティストによるパフォーマンスや花火の打ち上げが行われ,終始お祭り的な雰囲気の中で式典が執り行われた。会場には閣僚等の政府関係者,財界,芸能界及び亜人権団体等から多数の関係者が出席した他,世代横断的に多くの市民が詰めかけ,当地各紙はその数を約80万人と報じた。なお,翌10日に第2期フェルナンデス政権は1周年を迎えた。

 (イ)フェルナンデス大統領は今次演説の中で,亜司法,軍事政権及び大企業間の癒着体質を指摘し,名指しこそしなかったものの,何度となくクラリン・グループを批判した。右は,6日に連邦控訴裁判所が出した判決(注:放送法改正法の一部条項に適用されている執行停止措置の延長を決定した判決)に起因しており,当初,本式典は政府が全精力を注ぎ込んで推し進めてきた,同法の完全施行のお祝いを兼ねて実施される予定であったため,右判決により同目的を達成することが出来なくなったフェルナンデス大統領は,あからさまに司法当局及びクラリン・グループに対して敵意を示した。


 (4)臨時国会の招集

  13日,政府は制令第2410号を官報に掲載し,人身売買禁止法改正法案等の審議のため,12月18日〜31日に臨時国会を招集する旨発表した。右改正法案は人身売買の厳罰化を定めたものであり,2011年8月に上院を通過して以降,18ヶ月もの間,下院における審議がお蔵入りした状態にあった。19日,下院は上院可決案に修正を加えることなく全会一致で同改正法案に賛成し,26日,改正人身売買禁止法(第26,364号)が発布される運びとなった。

 

 (5)ブエノスアイレス市の2013年予算法案成立

   13日,2013年のブエノスアイレス市予算法案が賛成31票,反対22票で市議会を通過し成立した。右予算にはABL(街灯・清掃税)の平均24%の増税が含まれている。来年の市の歳出予算額は400億ペソとなっている。

 

 (6)反政府系労組の5月広場でのデモ

  19日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長,ミチェリ亜労働者連盟(CTA)書記長及びバリオヌエボ「CGT青と白」代表等,反政府系大規模労組団体が,野党議員等とともに3つのグループに分かれて5月広場までのデモ行進を実施し,同広場においてフェルナンデス政権を批判する集会を行った。当地報道によると,今次デモは小規模のものとなり,当初主催者側が予想していた10万人の参加を大きく下回る結果となった(注:但し,労組側は,当日15万人が同広場に集結した旨主張した)。演説を行ったモジャーノ書記長はフェルナンデス大統領に対し,インフレ抑制策をとるよう要求した他,国内の治安の悪化に対する政府の対策の不備を批判した。

 

 (7)鉄道及び路線バス(コレクティーボ)の運賃の値上げ

   19日,内務・運輸省は12月21日よりブエノスアイレス首都圏の鉄道及び路線バスの運賃を値上げする旨発表した。同発表によると,一部の人(注:年金受給者や児童手当受給者等)を除き,路線バスの運賃はICカード(SUBE)を利用する場合,初乗りが1.1ペソから1.5ペソに引き上げられ,SUBEを利用しない場合は,同運賃が2ペソから3ペソに引き上げられることとなった(注:バスの運賃は6キロごとに上がる仕組みになっており,SUBEを利用する場合,運賃改訂後の料金は0〜3キロ圏内が1.5ペソ,3〜6キロ圏内が1.6ペソ,6〜12キロ圏内が1.7ペソとなる。SUBEを利用しない場合は各々3ペソ,3.25ペソ,3.50ペソとなる)。鉄道の場合は,SUBE利用時の平均の初乗り運賃が70センターボから1ペソに引き上げられる。

 

 (8)憲法制定議会200周年記念の祝日

   19日,2013年1月31日(木)を憲法制定議会200周年記念日として,同年に限って国民の祝日とする法案が国会で審議され成立した(注:右法律第26,840号は2013年1月14日付けで官報に掲載された)。これにより,2013年の亜の祝日は合計で19日となり(注:右19日の内,国民の祝日が日曜日と重なっている日が2日ある),当地メディアは,亜が世界で最も祝日の多い国の記録を更新することになったと報じた。

 

 (9)国内各地における略奪行為

 (ア)20日,リオネグロ州サン・カルロス・デ・バリローチェ市(以下,バリローチェ市)において,スーパーマーケット等に対する略奪行為が発生した。右は国内各地に飛び火し,同日以降,国内40地点以上で略奪が行われた。略奪に遭った小売店は総計292店舗で,被害総額は2,650万ペソとされた。

 (イ)20日午前,バリローチェ市の貧困地区の複数のスーパーマーケットにおいて,食料品,衣料品及び電化製品等の略奪行為が発生し,警官隊との衝突により20名が負傷した。同日正午には,同市の多くの商店が閉店し,入り口のシャッター付近に囲いを設けて次なる被害を免れようと対応したが,夜になっても略奪行為は続いた。フェルナンデス大統領は正午過ぎ,クリスマス休暇のためにサンタクルス州カラファテに向けて出発したが,現地からアバル・メディーナ官房長官に対し,400名の国境警備隊員を軍用機2機でバリローチェ市に出動させるよう指示した。

 (ウ)キルチネル派のウェレティルネック・リオネグロ州知事は,今次略奪行為について,社会問題に起因するものではなく,明らかに組織的計画犯罪であるとの見方を示した。他方,ゴージェ・バリローチェ市長(キルチネル派)は,略奪行為が社会的格差に起因しているとの見解を示し,ウェレティルネック州知事の見解を批判した。同市は国内有数の観光都市として知名度が高いが,近年は,火山の噴火(注:2011年6月のチリ南部のプジェウエ・コルドンカウジェ火山群の噴火)や地球温暖化による降雪量の減少などの影響を受け,観光業の不振に悩まされており,若者の失業が大量発生するなどしていた。元々,バリローチェ市はリゾート業界等に属する富裕層とそれ以外の貧困層の社会階層の分断が著しい地域であったが,それが年々深刻化し,社会的緊張が高まっているとの指摘があった。同市では,14日,貧困層支援として,200ペソから500ペソの買い物券を配布する等の対策をとったばかりであったが,右政策を実施したゴージェ市長は,根本的な社会開発プランが遅れており,その場しのぎの対策であるとの批判を受けていた。

 (エ)20日,バリローチェ市における略奪行為が飛び火した形で,サンタフェ州グラン・ロサリオ(ロサリオ市及びその近郊を含む都市圏)においても,スーパーマーケット等に対する略奪が発生した。右はグラン・ロサリオの南部にあるビージャ・ゴベルナドール・ガルベス市から始まり,15時間ほどの間に同都市圏の他地域に次々と拡大した。当地メディアは,被害にあったスーパーマーケットの多くが中国系であったと報じた。警官隊との衝突により,略奪行為を行っていた2名(男女一名づつ)が死亡した他,後日,重傷とされていた2名の死亡が確認された。今次略奪行為により,未成年29名及び妊婦を含む137名が逮捕され,警察署の前には右逮捕者の家族等が押しかけ,道路封鎖をするなどして釈放を求めた。フェイン・ロサリオ市長は,ガレー治安大臣に対し,国境警備隊の出動を要請した。

 (オ)ブエノスアイレス市郊外のブエノスアイレス州内各市においても,いくつかの略奪事件が発生した。

 (カ)21日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は,ラジオ番組内で今回の一連の略奪に関して言及し,社会情勢の悪化を直視しない中央政府の姿勢を批判した。同書記長は「(亜社会に存在する)多くの不満が今回の略奪行為には反映されている。略奪が誰かによって計画的に引き起こされたとは考えにくい。人々が当然の権利として,フィエスタの季節を楽しく過ごすことができるよう求める」と発言した。右に対し,バリローチェ市で社会混乱の対応に当たっていたベルニ治安活動長官は,別のラジオ番組内で,今次略奪は組織犯罪であり,政治色を帯びているとした上で,一部の略奪行為の裏には反政府系労組(モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長,バリオヌエボ「CGT青と白」書記長及びミチェリ亜労働者連盟(CTA)書記長)の存在がある旨指摘した。反政府系労組の代表を略奪の主唱者とする発言は他のキルチネル派からも飛び出し,26日,モジャーノ書記長はベルニ長官の他,アバル・メディーナ官房長官及びデペトリ下院議員を脅迫,扇動及び虚偽の告発の罪で訴えた。

 (キ)27日,フェルナンデス大統領は今次略奪を,亜において発生した歴史的な略奪(アルフォンシン元大統領及びデ・ラ・ルア元大統領の体制下に発生した社会現象としての略奪行為)の悪質なコピーであるとし,政権崩壊を導くための常套手段であるとの見方を示した。また,フェルナンデス大統領は各州知事及び市長に対し,2013年の議会選挙や2015年の大統領選挙のことではなく,足下の問題を心配してほしいと発言した。

 

 (10)亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会会場の再国有化

 (ア)20日,政府はブエノスアイレス市パレルモ地区にある,亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル(LA RURAL)」の再国有化を発表した。ラ・ルラルは国内最大級の展覧会施設であり,図書展や各種見本市等の様々なイベント及び展示会に利用されている。同施設の敷地面積は約12ヘクタール(注:14ヘクタールとの報道もあり)であり,中には複数の大型パビリオンが建設されている。ラ・ルラルは130年前に創設され,元々は国有資産であったが,1991年にメネム大統領(当時)により亜農牧協会(SRA)に3000万米ドルで売却され,民営化された(政令第2699号)。現在,ラ・ルラルの株式は亜農牧協会が50%,フェニックス・グループが25%、そして残りの25%をAPSA(アルト・パレルモ・ショッピングセンター)が所有しており,右3組織でラ・ルラル株式会社を形成している。政府により国有化が発表された20日,エッチェベレ亜農牧協会会長は「政府の今次措置は我々の協会及び農牧業界に対する組織的攻撃である」と述べ,司法の場で争う用意がある旨示唆した。

 (イ)21日,政令第2552号が官報に掲載され,91年当時のメネム大統領によるラ・ルラルの売却を明記した91年政令第2699号が無効とされることとなった。記者会見の席でアバル・メディーナ官房長官は,91年の同展覧会施設の売却額は不当に安く(資産価値の半額で),また同施設内の建物は然るべき競売を経ずに売却されたと指摘し,同売却により当時のカバロ経済相,デ・サバリーア亜農牧協会会長(当時)及び複数の銀行関係者が2010年6月に起訴された旨強調した。また,アバル・メディーナ官房長官は,亜農牧協会が同施設の購入価格(3000万米ドル)の支払いを半分しか終えていない旨批判した。同官房長官は,今次措置はキルチネル前大統領主導で推し進められ,フェルナンデス大統領に受け継がれた「国家の回復政策」の一部を成していると述べ,フェルナンデス政権によるAFJP(民間年金基金),アルゼンチン航空及びYPF社の国有化同様,ラ・ルラルの奪還も(90年代に失われた)主権を回復するものであるとした。

 (ウ)政府は今回の措置について「接収」(Expropiacion)という言葉は使用せず,「回復」(Recuperacion)と表現しているが,当地報道は右に関し,接収であればYPF社の時のように,国会で議論して法律を通さなければならないためであるとした。21日以降,ラ・ルラルはアバル・メディーナ官房長官が代表を務める「国有資産管理局」(Agencia de Administracion de Bienes del Estado)の管理下に置かれることとなり,亜農牧協会は2013年1月21日までにラ・ルラルの施設から立ち退かなければならなくなった。

 (エ)24日,エッチェベレ会長はラ・ルラルの国有化に関し,政府は2008年の穀物輸出課徴金制度の改正(注:穀物輸出価格の変動に応じたスライド式税率制度の導入を定めた経済省決議第125号)の失敗の恨みにより,農牧団体に復讐していると発言した。26日,亜の主要農牧4団体は,ラ・ルラルの国有化に反対し,リニエルス食肉市場等に家畜の供給を制限する形で24時間のストライキを実施した。

 (オ)亜農牧協会は政府によるラ・ルラルの国有化を阻止するため,司法に対し,同国有化の法的正当性に関する司法の判断が出るまで,政府が定めた30日以内の立ち退き請求の執行を停止するよう申し立てた。28日,連邦第一審裁判所民事・商事部のブラカモンテ判事は同申し立てを退けた。亜農牧協会は第一審の判断を不服として,控訴手続きに入った。(その後,控訴審にて一時的執行停止措置が認められた。)

 

 (11)国からブエノスアイレス市への地下鉄運営権の委譲

  20日,ブエノスアイレス市議会は,同市による地下鉄運営の詳細を定めた法案を14時間に及ぶ審議の末に可決した(賛成46票,反対13票)。これにより,2013年1月1日以降,同市内を走る地下鉄全6線及び路面電車プレメトロの運営がブエノスアイレス市政府によって担われることとなった。今回の運営権委譲を受け,同市は地下鉄運営資金確保のため,市が管轄する高速道路料金の値上げ,高級車に対するナンバープレート交付手数料及び民間契約に際する印紙税の引き上げ等を実施することとなった。

 

 (12)デ・ラ・ルア元大統領に対する刑事訴訟の棄却

  20日,デ・ラ・ルア政権末期(2001年12月19日及び20日)の社会的混乱及び警察の弾圧により,多くの市民が命を失ったことを非難するため,極左政治団体「革命的愛国運動ケブラッチョ」は,例年通りブエノスアイレス市内の複数の大通りを封鎖し,タイヤを燃やすなどして抗議活動を行った。

  27日,デ・ラ・ルア政権末期の同暴動に関し,刑事破毀裁判所はデ・ラ・ルア元大統領が警察による弾圧を承知していなかったとして,同大統領に対する刑事訴訟を棄却した。

 

 (13)トラック労働者に対する追加手当の支給

 20日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長率いるトラック労組は,同労組に所属する労働者に対する1,850ペソの追加手当の給付につき発表した。同手当は年末のボーナスとは別に支給される特別手当であり,2013年2月以降,3回に分けて支払われる。元々同追加手当は,所得税の支払いによって手取りの給与が減額していることに対する不満から,モジャーノ書記長によって経営側の亜物流企業連合(Fadeeac)に訴えられていたものであり,当初,同書記長は4,000ペソの追加手当を要求していた。

 

 (14)銀行労組による賃上げ交渉 

  27日,2013年第一四半期の賃上げ率25%(月額1,800ペソの賃上げ)を要求する銀行労組が,経営者連合側から20%の賃上げ率を提示されたことを受け,24時間のストライキを実施した。労働省が事前に双方に対して強制和解勧告を出していたにもかかわらず,労組側がストに踏み切ったため,労働省は銀行労組に対して罰金を課し,司法に訴える構えを見せた。

 

 (15)ミセリ元経済相に懲役4年の実刑判決

  27日,連邦口頭審理裁判所はミセリ元経済相(2005−2007年在職)に対し,不正に取得した多額の現金を隠し持ち,その出所を隠蔽したとして,懲役4年の実刑判決を下した。同元経済相は2007年6月5日,大臣執務室のトイレに隠し持っていた10万ペソの現金を警備員に発見されたが,右発見の事実を証明する書類を隠蔽するなどして,現金取得の経緯をごまかした罪に問われていた。今次判決には発見された10万ペソの押収及びミセリ元大臣の8年間の公職復帰を禁じる内容も含まれた。汚職の罪で有罪判決を受けたキルチネル派の閣僚経験者はミセリ元経済大臣が初めてであり,当地報道は同問題を大きく取り上げた。なお,ミセリ元経済大臣は今次判決を不服として上訴する予定。

 

3 外交

 (1)エクアドル

  3日〜4日の間,コレア・エクアドル大統領は当地を公式訪問し,フェルナンデス大統領との会談及び亜建国200周年記念博物館(大統領府内に所在)での昼食会,ラプラタ国立大学での授賞式への参加,当地テレビ局(C5N)によるインタビューへの出演等を行った。また,今次首脳会談において,両国首脳は,経済協力,文化,教育分野等に関する覚書への署名を行った。なお,テレビ局によるインタビューの中で同大統領が,「1994年の亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件は,亜の歴史において非常に痛ましい事件であったが,NATOのリビア空爆がどれほどの死者を出したかについても考慮すべきである。我々は,(これら2件を)比較し,どこに本当の危険があるのか見極めるべきで,(情報を)操作するべきではない。(…)イラン政府を問題視する一方,その他の「君主により支配されている」国を非難しない等,西洋諸国にはダブルスタンダードが存在する。右は,特定の覇権主義国の利害とそれに基づく操作が行われている為である。イランは選挙制度が確立された民主主義国である。米国を無条件に支持する同盟諸国の中には,民主主義がない君主国や,女性に運転すら認めない国さえある」とのAMIA会館爆破事件による被害を過小評価し,イランを擁護する発言をしたが,当地ユダヤ人コミュニティーの強い反発を招いた。

 

 (2)イラン

 (ア)1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件解決に向けた,亜・イラン二国間協議の内容に関する情報が公表されないことを懸念し,4日,イスラエル共済組合(AMIA)及び在亜イスラエル協会(DAIA)はイランとの交渉に関する情報開示を要求する書簡を発出した。

 (イ)4日,ティメルマン外相は,在亜イスラエル協会(DAIA)の幹部と会合し,AMIA会館爆破事件の解決に向けたイランとの交渉等に関する協議を行った。 

 (ウ)18日,フェルナンデス大統領は,大統領府にて在亜イスラエル協会(DAIA)代表と会合し,AMIA会館爆破事件の解決に向けたイランとの交渉等に関する協議を行った。フェルナンデス大統領は,本件に関しイラン政府と何らかの合意に至る場合,事前に議会及び犠牲者の家族会に内容を諮るつもりである旨述べた。

 (エ)26日,ティメルマン外相は,AMIA会館爆破事件の犠牲者家族と会合した。

 

 (3)英国

 (ア)フォークランド(マルビーナス)諸島領有権問題  

  3日,英国外務省は,カストロ駐英亜大使を招集し,亜がフォークランド(マルビーナス)諸島周辺の排他的経済水域におけるイカの捕獲を(他国)に許可していること及び亜の船舶がフォークランド(マルビーナス)諸島に向かうクルーズ船を執拗に攻撃している事に関して抗議した。右に対し,亜政府は,昨年11月の国際海事機構(IMO)の宣言にて,亜は,海洋法条約及びIMOの規定に違反する行為を行っていないことを証明し,右宣言は各国の支持を得たとの反論を行った。

 (イ)南極大陸領有権問題  

  21日,亜政府が領有権を主張している南極大陸の一部を英国政府が「クィーン・エリザベス・ランド」と命名する旨発表したことに対し,亜政府は公式に抗議声明を発出した他,フリーマン駐亜英大使に亜外務省への出頭を要請し,本件に関する英国政府の発表を断固として拒否する旨記した公式書簡を手交した。

 

 (4)メルコスール首脳会合

  6日から7日にかけ,フェルナンデス大統領は,ブラジリアで開催された第44回メルコスール首脳会合に出席し,総会で亜の経済状況に関する演説を行った。今次会合においては,ボリビア及びエクアドルのメルコスール加盟について協議され,メンバー諸国の支持を受けたボリビアは,覚書に署名し,正式加盟に向けた手続きに入った。また,メンバー諸国は,亜・英国間で論争が続いているフォークランド(マルビーナス)諸島領有権問題に関し,亜への支持を再度表明した。今次訪問中,フェルナンデス大統領は,ルーセフ伯大統領と会談し,両国大臣同席のもと,経済・通商関係強化及び地域統合をはじめとする二国間共通関心事項に関し協議した。両国首脳は,来年1月に再度会合する予定である由。

 

 (5)北朝鮮

  14日,亜外務省は,北朝鮮による弾道ミサイル技術を使ったミサイル打ち上げを懸念し,同国に対し,朝鮮半島における平和及び安定確立に向け努力するよう要求するプレスリリースを発出した。

 

 (6)亜海軍練習船「リベルタッド」号拘留問題

 (ア)ハンブルグ国際海洋法裁判所による決定

15日,ハンブルクの国際海洋法裁判所は,満場一致で,ガーナ政府に対して,10月2日より同国テーマ港に拘留されている亜海軍の練習船「リベルタッド」号を直ちに無条件で解放するよう命じた。

 (イ)記者会見におけるティメルマン外相及びプリチェリ国防大臣の発言

  15日,ティメルマン外相は,記者会見にて,(国際海洋法裁判所による)判決後,「リベルタッド」号の拘留は解除され,亜政府が,同船を自由に動かすことができるようになった旨発表した。また,プリチェリ国防大臣は,出港に必要な98名の船員を18日にガーナに派遣するにあたり,既にアルゼンチン航空の航空機をチャーター済みで,同練習船は,98名の船員がガーナに到着する19日に同国を出港し,来年1月9日に亜の港に入港する予定である旨述べた。同時に,「リベルタッド」号の船長には,燃料補給を含む出港に向けた準備を進めるよう指示が出された。
  同記者会見にて,プリチェリ国防大臣は,サロニオ指揮官が,「リベルタッド」号がガーナに係留する前に,船舶の押収を警告されていた旨クラリン紙が報じた件に関し,マルティン海軍大将による書簡及びサロニオ司令官による報告書を読み上げ,右報道内容を否定すると同時に,このような行為は,政府に損害を与える目的で,「リベルタッド」号拘留解除の重要性を過小評価しようとするものであると述べた。

 (ウ)17日,フェルナンデス大統領は「リベルタッド」号がブエノスアイレス州マル・デル・プラタ港に帰還する際,政府主催で歓迎パーティーを開くとの発表を行うとともに,「リベルタッド」号が帰還後,一定期間の間,同港にて展示されることになる旨明らかにした。その上で同大統領は,亜の主権と尊厳を体現する「リベルタッド」号を見に行くよう全亜国民に呼びかけた。

 (エ)「リベルタッド」号の出港
  19日,「リベルタッド」号は,予定通りマル・デル・プラタ港に向けテーマ港を出港した。

 

 (7)米国  

  17日,アルグエジョ駐米大使が在ポルトガル大使への異動を命じられ,フェルナンデス大統領は,セシリア・ナオン外務副大臣(国際経済担当)を新たな駐米大使に任命し,19日上院議会が右任命を承認した。

 

 (8)要人往来

  (ア) 往訪

1日〜3日 ブドゥー副大統領メキシコ訪問(ペニャ・ニエト大統領就任式)
6日〜7日 フェルナンデス大統領ブラジル訪問(メルコスール首脳会合)
11日〜12日 トマーダ労働・雇用・社会保障大臣ロシア訪問(ディーセント・ワーク国際ハイレベル会合)
12日 ブドゥー副大統領,アニバル・フェルナンデス上院議員スウェーデン訪問(国際レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー委員会からフェルナンデス大統領に贈られた大賞を受領)
13日 モレーノ国内取引長官及びナオン外務副大臣米国訪問
31日 ブドゥー副大統領ハイチ訪問(国連ハイチ安定化ミッションに参加している亜ブルー・ヘルメットと年越しの為)

 

 (イ)来訪

3日 フィッシャー・オーストリア大統領
3日〜4日 コレア・エクアドル大統領
6日 賈慶林(Jia Qinglin)全国政治協商会議主席
13日 アアモ金融活動作業部会(FATF)代表

 

 (9)今後の主要外交日程(予定等)

10日 フェルナンデス大統領キューバ訪問(チェベス・ベネズエラ大統領のお見舞い)
14日〜21日 フェルナンデス大統領アラブ首長国連邦,インドネシア,ベトナム訪問
26日〜28日 フェルナンデス大統領チリ訪問(26日〜27日:ラテンアメリカ・カリブ及びEU首脳サミット,27日〜28日:第1回CELACサミット)
27日 ライダー国際労働機関(ILO)事務局長来亜

 

バックナンバー
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002

2012年11月

2012年10月

2012年9月

2012年8月

2012年7月

2012年6月

2012年5月

2012年4月

2012年3月

2012年2月

2012年1月

2011年12月

2011年11月

2011年10月

2011年9月

2011年8月

2011年7月

2011年6月

2011年5月

2011年4月

2011年3月

2011年2月

2011年1月

2010年12月

2010年11月

2010年10月

2010年9月

2010年8月

2010年7月

2010年6月

2010年5月

2010年4月

2010年3月

2010年2月

2010年1月

2009年12月

2009年11月

2009年10月

2009年9月

2009年8月

2009年7月

2009年6月

2009年5月

2009年4月

2009年3月

2009年2月

2009年1月

2007年12月

2007年11月

2007年10月

2007年9月

2007年8月

2007年7月

2007年6月

2007年5月

2007年4月

2007年3月

2007年2月

2007年1月

2006年12月

2006年11月

2006年10月

2006年9月

2006年8月

2006年7月

2006年6月

2006年5月

2006年4月

2006年3月

2006年2月

2006年1月

2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年9月
2005年8月
2005年7月
2005年6月
2005年5月
2005年4月
2005年3月
2005年2月
2005年1月
2004年12月
2004年11月
2004年10月
2004年9月
2004年8月
2004年7月
2004年6月
2004年5月
2004年4月
2004年3月
2004年2月
2004年1月
2003年12月
2003年11月
2003年10月
2003年9月
2003年8月
2003年7月
2003年6月
2003年5月
2003年4月
2003年3月
2003年2月
2003年1月
 
2002年12月
2002年11月
2002年10月
2002年9月
2002年8月
2002年7月
2002年6月
2002年5月
2002年4月
2002年3月
2002年2月
2002年1月