2011年6月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)
2011年7月作成
在アルゼンチン大使館
T 概要
(1)内政面では,国政選挙のための選挙連合及び候補者の登録が行われた。特に,フェルナンデス大統領が次期大統領選挙への出馬を表明して,ブドゥー経済相を副大統領候補とする旨発表したこと,及び,アルフォンシン下院議員がゴンサレス・フラガ元中銀総裁を副大統領候補とする旨発表したことが注目された。ネウケン州及びミシオネス州では知事等の選挙が実施され,いずれもキルチネル派の現職知事が再選を果たした。また,人権団体「5月広場の母」の住宅建設事業における補助金の不正な扱い等の疑惑,及び,サンタクルス州の教職員労組のストライキが引き続き注目された。その他,上院本会議においてマネーロンダリング対策法案が可決され,法律として成立した。
(2)外交面では,潘基文国連事務総長,ウマラ次期ペルー大統領,及びモラレス・ボリビア大統領がそれぞれ訪亜して,フェルナンデス大統領との会談等を行った。ティメルマン外相は,OAS総会に出席するためエルサルバドルを訪問し,国連非植民地化特別委員会会合に出席するため米国を訪問し,メルコスール共同審議会・首脳会合に出席するためパラグアイを訪問した。また,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に係るキャメロン英首相等の発言及び同発言に対する亜政府の批判が注目された他,亜政府は,2月に亜国際空港において押収していた米軍用機の積載物の返還を決定した。
TT 内政
1 アルフォンシン下院議員の動向
(1)2日,アルフォンシン下院議員(急進党)は,自身の大統領選挙出馬にあたり,ゴンサレス・フラガ元中銀総裁を副大統領候補とする旨発表した。これについて,同下院議員は,「ゴンサレス・フラガ元中銀総裁は,常に社会問題を考慮してきた経済学者である。知識と品格を備えた謙虚な人物であり,とても満足している」と述べた。
(2)4日,アルフォンシン下院議員とデ・ナルバエス下院議員(ペロン党反キルチネル派)が記者会見を行い,両者の勢力が共通の選挙連合を形成すると決定した旨発表した。アルフォンシン下院議員は,ペロン党のデ・ナルバエス下院議員と連携することについて,「現在生じている多くの問題は,急進党とペロン党の対立に起因するものである。我々は歴史から学ばなければならない」と述べた。また,両者は,治安,教育,医療及び社会開発という4つの基本方針の下に共通の政策綱領を作成するとした他,中央政府がブエノスアイレス州政府への出資に充てるための基金を創設するとした。
2 フェルナンデス大統領の動向(出馬表明等)
(1)21日,フェルナンデス大統領は,大統領府において演説を行い,「我々はもう一度(国民の意思を)問おう」と述べ,次期大統領選挙への出馬を表明した。また,同大統領は,キルチネル前大統領の死(客年10月27日)の翌日から出馬の決意は固まっていたとして,「多くの人々が(弔意を表明して)「がんばれクリスティーナ」と応援してくれていた時から,私は,自分が成すべきことをわかっていた」と述べた他,「私は,新しい世代と古い世代の橋渡しをしたい。それが私の役割に違いないと思う」と述べた。そして,同大統領は,一部の報道等が同大統領の健康状態を疑問視していたことを,「侮辱」であるとして批判した。野党各勢力の大統領候補らは,同大統領が選挙目的で国営放送を利用したこと(注:上記演説は国営放送で中継された)等を批判した。
(2)25日,国政選挙の候補者登録の締切り直前に,フェルナンデス大統領は,大統領府において演説を行い,ブドゥー経済相を副大統領候補とする旨発表した。同大統領は,「副大統領候補は,まず忠誠心があり,次にその忠誠心を実行に移すだけの勇敢さを持った人物でなければならない。自分(同大統領)の隣には,既得権益層を恐れない人物が必要である」等述べた。また,同大統領は,これまでの最も重要な政策の1つとして民間年金基金(AFJP)の国営化を挙げ,同政策の提案者であるブドゥー経済相を評価した。
(3)28日,フェルナンデス大統領は,大統領府において演説を行い,ブエノスアイレス市南部の治安対策を強化するための「南部地帯計画(Plan
Cinturon Sur)」を発表した。同計画は,治安の悪化が特に懸念されているブエノスアイレス市南部の計6地区の警備に充てるため,国境警備隊及び水上警察計2,500名を増強配置するものであり(従来同6地区の警備に当たっていた連邦警察1,300名の内1,000名は他の地区に異動),7月4日より実行に移される。また,同大統領は,誘拐事件対策,薬物取締り,刑務所の新設等の計画も発表した他,(近年特に話題となっていた)銀行出口での強盗が減少してきている旨述べた。
3 大統領選挙候補者登録
15日,国政選挙(大統領・副大統領選挙及び連邦議会選挙)の選挙連合登録が締め切られ,25日,同選挙の候補者登録が締め切られた。登録された選挙連合及び大統領・副大統領候補は下記の通り。
(1)「勝利のための戦線(Frente para la Victoria)」
正:フェルナンデス大統領(ペロン党キルチネル派)
副:ブドゥー経済相(ペロン党キルチネル派)
(2)「社会開発のための連合(Union para el Desarrollo Social)」
正:アルフォンシン下院議員(急進党)
副:ゴンサレス・フラガ元中銀総裁
(3)「民衆戦線(Frente Popular)」
正:ドゥアルデ元暫定大統領(ペロン党反キルチネル派)
副:ダス・ネベス・チュブット州知事(ペロン党反キルチネル派)
(4)「市民連合(Coalicion Civica-ARI)」
正:カリオ市民連合代表
副:ペレス下院議員(市民連合)
(5)「連邦戦線(Frente Compromiso Federal)」
正:ロドリゲス・サア・サンルイス州知事(ペロン党反キルチネル派)
副:ベルネット・元サンタフェ州知事(ペロン党反キルチネル派)
(6)「革新派拡大戦線(Frente Amplio y Progresista)」
正:ビネル・サンタフェ州知事(社会党)
副:モランディニ上院議員(新鋭党)
(7)「南プロジェクト(Proyecto Sur)」
正:アルグメド下院議員(南プロジェクト)
副:カルデリ下院議員(皆のためのブエノスアイレス)
(8)「左派戦線(Frente de Izquierda)」
正:アルタミラ労働者党指導者
副:カスティジョ社会主義労働者党指導者
4 ネウケン州知事選挙
(1)12日,ネウケン州において,知事,副知事,州議会議員(全35議席),市長(11の市),市議会議員等の選挙が実施された。知事選挙には,サパグ候補(同州知事)(ネウケン人民運動,キルチネル派),ファリサノ候補(同州ネウケン市市長)(急進党)等が出馬していたが,開票の結果,サパグ候補の当選(再選)が決定した(得票率は,サパグ候補が45.4%,ファリサノ候補が34.1%)。
(2)当選したサパグ候補は,「我々は,社会正義及びパタゴニア開発に係る全てのことを,フェルナンデス大統領と共有している。同大統領が次期大統領となるために働こう」と述べ,フェルナンデス大統領の再選への支持を表明した。同大統領は,サパグ候補に電話をして祝意を伝えた。
5 ミシオネス州知事選挙
(1)26日,ミシオネス州において,知事,副知事,州議会議員(35議席中20議席),市長(75の市),市議会議員等の選挙が実施された。知事選挙には,クロス候補(同州知事)(融和刷新戦線,キルチネル派),ウィキリンゲル候補(同州州議会議員)(労働と進展),パストリ候補(同州州議会議員)(急進党)等が出馬していたが,開票の結果,クロス候補の当選(再選)が決定した(得票率は,クロス候補が68.5%,ウィキリンゲル候補:5.7%,パストリ候補が5.7%)。
(2)当選したクロス候補は,「我々は,良い時にも悪い時にも常に中央政府のプロジェクトを支持してきたし,今後も支持していく」と述べ,フェルナンデス大統領の再選への支持を表明した。
(3)今次結果を受け,フェルナンデス大統領はクロス候補に電話をして祝意を伝え,ランダッソ内相は同州を訪問して同候補のための祝賀会に出席した。また,ロペス大統領府副長官は,「クロス候補の勝利は歴史的勝利であり,融和刷新戦線の勝利のみならず,中央政府の勝利を意味する。今次選挙により,野党が分裂しており,国政レベルにおいては大統領が,州レベルにおいてはクロス候補が体現しているプロジェクトへの強い支持があることが分かった」と述べた。
6 ティエラデルフエゴ州知事選挙
26日,ティエラデルフエゴ州において,知事,副知事,州議会議員(全15議席),市長(3つの市),市議会議員等の選挙が実施された。知事選挙では,リオス候補(同州知事)(パタゴニア社会党,キルチネル派)及びベルトネ候補(下院議員)(ペロン党キルチネル派)が有力であったが,今次投票では当選者が確定せず(得票率は,ベルトネ候補が41.4%,リオス候補が32.6%),7月3日に上記両候補による決選投票が実施されることとなった(注:同州知事選挙では,全投票数の50%以上を獲得した場合に当選が確定するが,いずれの候補もその得票に到らなかった場合,上位2候補による決選投票が実施される旨規定されている)。
7 「5月広場の母」の住宅建設事業を巡る問題
(1)2日,ペレエ連邦検事は,人権団体「5月広場の母」が運営する住宅建設事業のために政府が出資していた補助金の横領,マネーロンダリングへの関与等の容疑で,同事業の運営責任者であったショクレンデル弁護士を起訴した。
(2)同日,「5月広場の母」の定例行事に,イカスリアガ大統領府情報長官,アバル・メディナ首相府報道長官等の政府高官,サバテラ下院議員等のキルチネル派国会議員等が出席した。同行事において,ボナフィニ「5月広場の母」代表は,政府を批判する野党やマスメディアを批判した他,フェルナンデス大統領の再選を求める旨述べた。また,10日,「5月広場の母」の施設において,教育省主催の式典が開催され,シレオニ教育相,ボナフィニ代表等が出席した。シレオニ教育相は,「この式典は他の場所で開催することもできたが,我々は「5月広場の母」の味方であるため,この場所を選んだ」と述べた。
(3)14日,ショクレンデル弁護士等が使用していた事務所の家宅捜索が実施された。同捜索は,ボナフィニ代表がオジャルビデ連邦判事に依頼したものであった由。その後,「5月広場の母」関連の他の施設等の家宅捜索も実施された。
(4)30日,国会の両院会計監査委員会(注:野党議員が多数派を占める)は,「5月広場の母」の上記事業における補助金の不正な扱いについて,議会付属会計監査院(AGN)が調査を開始するものとする意見書を採択した。
8 サンタクルス州の教職員労組のストライキ
(1)7日,サンタクルス州政府は,同州の教職員労組によるストライキが長期化していることを受け,「なぜ我が州の児童らは授業を受けられていないのか」という見出しの広告を当地主要各紙に掲載し,これまでも十分な賃上げを行ってきた等の理由を挙げ,同労組によるストライキを不当なものとして批判した。
(2)23日,同労組の一部がブエノスアイレス市を訪問し,労働省関係者と会談して,同省が今次賃上げ交渉の仲介を行うよう要求すると共に,同省前において,同仲介を要求するためのデモを実施したところ,連邦警察が出動した。24日,同労組は,上記連邦警察によりデモを「鎮圧」されたとして,大統領府前において,これを非難するための抗議デモを実施すると共に,大統領府関係者と会談し,フェルナンデス大統領が今次賃上げ交渉の仲介を行うよう要求した。
(3)28日,同労組は,サンタクルス州で内部会合を開催し,8月頃まで一時的にストライキを停止し,30日より学校の授業を再開する旨決定した。同決定は,同州政府との交渉を再開するためのものであった由であり,同労組は,今後とも賃上げ要求を継続するという姿勢を示すと共に,サンタクルス州政府及び中央政府を批判した。
9 国会の動向
(1)1日,上院本会議において,マネーロンダリング対策法案が審議されたところ,賛成票61,反対票2により可決され,法律として成立した(注:5月4日に下院で可決済み)。同法は,21日付官報掲載を以て公布されたが,同官報掲載にあたり,金融情報機構(UIF)の活動を規制する一部の条項(同法第25条)に対し拒否権が発動された(注:同条は,UIFの活動に公正性が欠如していると主張する野党により盛り込まれた条項であった)。
(2)1日,下院本会議において,在亜イスラエル大使館爆破事件(1992年)の被害者(犠牲者についてはその遺族)に対する損害賠償について規定するための法案が審議されたところ,全会一致により可決され,上院に送付された。29日,上院本会議において同法案が審議されたところ,全会一致により可決され,法律として成立した。
(3)29日,上院本会議において,南米銀行(Banco del Sur)の設立に係る協定(注:チャベス・ベネズエラ大統領のイニシアティブであり,2009年9月,亜,ブラジル,パラグアイ,ウルグアイ,ボリビア,エクアドル及びベネズエラの各大統領により署名されたもの)を承認するための法案が審議されたところ,全会一致により可決され,下院に送付された。
III 外交
1 ホンジュラス
(1)1日,ダロット筆頭外務副大臣は,OAS特別会合に出席するため米国を訪問した。同会合では,エクアドルを除く全加盟国の賛成により,ホンジュラスのOAS参加資格停止を解除する決議が採択された。同会合において,ダロット副大臣は,ホンジュラスにおけるクーデターを改めて非難し,民主主義と人権擁護への亜のコミットを再表明するとともに,サントス・コロンビア大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領の尽力を賞賛し,カルタヘナ合意への祝意を表明した。
(2)5〜7日,ティメルマン外相は,第41回OAS総会に出席するためエルサルバドルを訪問し,同総会においてホンジュラスのOAS復帰に祝意を表明した。
2 ペルー
(1)亜政府は,6日付外務省プレスリリースを通じ,ペルー大統領選挙におけるウマラ候補の勝利を祝福した。
(2)13〜14日,ウマラ・ペルー次期大統領は,大統領当選後初の南米諸国歴訪の一環として夫人を伴い訪亜した。14日,ウマラ次期大統領は,フェルナンデス大統領と会談し,ペルーのメルコスール加盟の可能性,麻薬密輸,安全保障,教育分野の交流,二国間貿易バランス,在亜ペルー人が本国に送金する際の手数料の引き下げ,学位・資格の相互認定等につき協議した。
3 英国
(1)7日,第41回OAS総会において,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,同問題の平和的解決のために,亜と英国が交渉を再開する必要性を再確認する宣言が採択された。
(2)14日,フェルナンデス大統領は,マルビナス紛争において戦死した亜国人ヘリコプター・パイロットの名を冠した大統領府ヘリポート開所式において,英国籍を放棄しアルゼンチン国籍を選択したマルビナス諸島生まれの男性1名に対し,亜身分証明書(DNI)を手交した。
(3)15日,キャメロン英首相が,マルビナス諸島領有権問題に関し,「諸島民が英国領であることを望む限り,同諸島は英国領であり続けるべきである。それだけである。問題終了。」等述べたのに対し,亜政府は,同日付外務省プレスリリースを通じ,「亜は,英国が,残念ながらも傲慢な同発言によって,国連により認められている未解決の主権問題につき,「問題終了」とする権限を得ようとすることを遺憾とする。」等同発言を批判した。また,16日,フェルナンデス大統領は,キャメロン首相の「問題終了」との発言につき,「そのような表現を使うとは,つまらない行為であり,愚かとさえ言える。亜国人は,人権問題について問題終了などと考えたことはなかったし,主権問題についても同様である。植民地主義は遺物であるだけでなく馬鹿げており,(英国は)衰退期にある帝国である。引き続き全ての国際会議の場で本件問題に関する要請を行っていく。国際法に従い平和的にマルビナス諸島を取り戻すことを約束する。」等述べた。
(4)17日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,マルビナス諸島領有権問題に関し,「英国は,国際社会からの度重なる要請にも拘わらず,同問題を平和的に解決するための交渉に否定的である。」等英国を批判した。
(5)21日,ティメルマン外相は,国連非植民地化特別委員会会合に出席し,マルビナス諸島領有権問題につき,「亜政府は,国連の決議により当事国双方が等しく負う交渉再開義務を果たすため,全ての機会に交渉する意志があることを表明してきた。英国は国際社会の呼びかけを前にして何ら反応していないが,英国が国際平和と安全の維持を主目的とする安保理の常任理事国であることを考えると,その態度は殊更憂慮される。」等演説を行った。なお,同日,国連非植民地化特別委員会は,マルビナス諸島領有権問題に関し,平和的解決策を見出すための交渉の再開を亜及び英国に改めて呼びかける決議を採択した。
(6)27日,フォックス英国防相が,マルビナス諸島領有権問題に関し,「マルビナス諸島の独立・主権を保持するための我々の政策に変更はない。同地域には戦闘機を配置済みであり,我々は,諸島の自由を保障するための海軍力を有しているのだという明白なメッセージを発出している。」等述べたのに対し,亜政府は,同日付外務省プレスリリースを通じ,「英国は,国際社会からの度重なる呼びかけを聞き入れようとしておらず,国際法を軽視し続けている。フォックス国防相の発言は,南大西洋における英国の軍国主義的姿勢を示すものであり,一貫して問題の平和的解決を求めてきた亜の姿勢と正反対である。亜は,フォックス国防省の発言のような好戦的挑発には乗らず,国際社会の責任ある一員としての義務を果たし続ける。世界が深刻な経済危機に直面している時に,フォックス国防相が英国の過度な軍事支出に言及したことは,特に不適切である。」等同発言を批判した。
(7)29日,フェルナンデス大統領の代理としてメルコスール首脳会合に出席するためパラグアイを訪問したティメルマン外相は,同会合において,マルビナス諸島領有権問題に関するメルコスール加盟国・準加盟国からの支持に謝意を表明した。また,同会合では,「メルコスール加盟国・準加盟国は,マルビナス諸島領域における戦闘機の配置と海軍力に関する英国防相の遺憾な発言を強く拒絶する。英国は,国連決議等に従い本件主権問題を解決するため亜との交渉の席に着くようにとの度重なる国際社会の呼びかけを聞き入れてきていない。上記(英国防相の)発言は,本件主権問題の平和的解決を一貫して模索する亜を我々地域が強く支持していることと正反対である。メルコスール加盟国・準加盟国は,亜のマルビナス諸島における合法的な権利への支持を再表明する。」とする宣言が採択された。
4 米国
(1)2月10日,亜税関及び亜空港警察は,米軍関係者が亜連邦警察に人質救助等の技術指導を実施する目的で当地国際空港に到着した際,ティメルマン外相の陣頭指揮の下,同関係者を乗せた米軍用機の一部積載物を未申告の物品であるとして押収していた。
(2)13日,在亜米国大使館は,亜政府による上記押収積載物の返還決定を受け,プレスリリースを通じ,「事前に計画・承認されていた共同訓練活動に関係した米国所有物品が,行政上の過失により押収された件に関し,無事に解決されたことを喜んで報告する。亜及び米国は,同様の税関規則を持ち,同規則を互いに尊重している。税関及び外務省との数次に亘る会合を経て,税関規則及び全ての亜法令を履行したことにより,本件物品は返還された。我々は,共通の関心,相互尊重及び共有する価値観と責任に基づいたパートナーシップの下に,亜と引き続き協働していくことを約束する。」と発表した。
5 国連
(1)12〜14日,潘基文国連事務総長は,南米諸国歴訪の一環として夫人を伴い訪亜し,13日,フェルナンデス大統領と会談した。同会談後の共同記者会見において,フェルナンデス大統領は,「亜は,国連の存在理由といえる多国間主義を一貫して擁護してきた国であり,従来から,国際政治上の対立は国連の場で解決されるべきであるとの立場をとってきた。今次会談において,潘事務総長に対し,マルビナス諸島領有権問題につき,交渉の席に着くよう呼びかける国連決議の英国による遵守を我々が望んでいることを改めて伝えた。国連決議は,全ての国により遵守されるべきものであり,特に先進国は,その国力に応じた責任を果たすべきである。最後に,潘事務総長の今次訪問への喜びと謝意を表明するとともに,亜は,潘事務総長の再選を支持する旨明らかにしたい。」等述べた。一方,潘事務総長は,「亜は,国連の最も重要な加盟国の1つであり,重要な役割を果たしている国である。亜は,G20とG77+中国の間の架け橋となろう。亜は,人権侵害との闘いにおいて,世界の模範となる国である。また,亜の対ハイチ支援は非常に重要である。更に,亜では,幼児死亡率,初等教育,及び女性の社会進出分野において進展が見られている。」等述べた。
(2)14日,潘事務総長は,亜平和活動共同訓練センター(CAECOPAZ:Centro Argentino de
Entrenamiento Conjunto para Operaciones de Paz)を視察した。同視察の機に,プリチェリ国防相及びアラマン・チリ国防相は,亜・チリ共同平和軍「南十字星(Cruz
del Sur)」(注:2006年12月,亜・チリ共同平和軍「南十字星」創設覚書が締結された。同共同平和軍は,将来,国連平和維持活動部隊として出動することを念頭に設置されたものであり,2007年以降亜・チリ合同軍事演習が実施されてきていた。)が,2012年以降,国連のマンデートの下で,国連待機制度の基準及び手続等に従って行動するための国連との間の覚書に署名した。また,潘事務総長は,同視察後,ホワイト・ヘルメット委員会(注:国連の下で活動する当国緊急援助隊)関係者と懇談したほか,ティメルマン外相主催昼食会に出席した。
(3)また,潘事務総長は,亜外交官学校において講演を行ったほか,「記憶のための空間」(Espacio para
la Memoria)及び国際人権推進センター(注:「記憶のための空間」は,軍事政権下で反体制活動家等の収容所となり,激しい拷問が行われた元海軍機械学校の跡地にあり,軍政期の人権侵害の記憶を留める施設となっている。ユネスコの後援により創設された国際人権推進センターは,同敷地内に設置されている。)を視察し,亜人権団体「5月広場の祖母」と会談した。
6 モザンビーク
15日,バロイ・モザンビーク外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両外相は,二国間共通関心事項諮問協定に署名するとともに,多様な国際テーマにつき意見交換を行った。
7 原子力安全に関するIAEA閣僚会議
20〜21日,ダロット筆頭外務副大臣は,原子力安全に関するIAEA閣僚会議に出席するためオーストリアを訪問し,同会議での演説において,亜の原子力計画の進捗状況につき述べるとともに,原子力技術の安全基準を遵守する亜の姿勢を再表明した。
8 第34回南極条約協議国会議
20日〜7月1日,ブエノスアイレス市において,第34回南極条約協議国会議が開催され,南極における科学的調査活動,環境保護,観光・非政府活動のあり方等について議論が行われた。23日,ティメルマン外相は,南極条約発効50周年記念式典を主催し,同式典には,モレノ・チリ外相,アルマグロ・ウルグアイ外相,ロカール元フランス首相のほか,各協議国代表団が出席した。同式典において,南極における国際協力及び平和的共存が南極条約により強化されたことを讃えるとともに,より一層の協力を約束する「南極協力に関するブエノスアイレス宣言」が採択された。
9 ブラジル
26日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,ブラジルのグラジアーノ候補がFAO事務局長に選出されたことにつき,「亜は,当初からグラジアーノ候補を支持してきており,同候補の選挙キャンペーンに積極的に協力してきた。今次結果は,亜に誇りと喜びをもたらした。グラジアーノ候補の当選は,ブラジルの貧困撲滅・食料増産政策に対する評価を意味するのみならず,貧困撲滅・食料増産に向けた我々地域全体の尽力に対する評価でもある。FAO創設以来,初めて中南米から事務局長が選出されたことは特筆に値する。」等祝意を表明した。
10 サウジアラビア
(1)27〜28日,テビード公共事業相は,サウジアラビアを訪問し,28日,ヤマニ・サウジアラビア商工相とともに二国間原子力エネルギー平和利用協力協定に署名した。同署名に際し,ヤマニ商工相は,「サウジアラビアは,技術移転においてリーダーシップを発揮し続けてきた亜との今次協力協定の締結に大変満足している。ハイテク産業分野を発展させた亜の成功例は,サウジアラビアにおいて国際基準を満たす分野を育成する際にモデルとなり得る。サウジアラビアにとって,電力需要が増している中,原子力エネルギー及び再生可能エネルギー技術を取り入れることは非常に重要である。」等述べた。また,デビード公共事業相は,「サウジアラビアが,原子力エネルギー及びその他代替エネルギーをエネルギー供給源として取り入れることの重要性に関しリーダーシップを発揮していることに祝意を表明する。今次協力協定により,ノウハウを交換し,相互互恵の関係を築いていきたい。」等述べた。
(2)また,デビード公共事業相は,28日,サウジアラビアの企業関係者と懇談し対亜投資を呼びかけたほか,亜INVAP社のリヤド支社を視察した。デビード公共事業相は,「サウジアラビアにおける石油生産では,放射性廃棄物が生じる。INVAP社は2年間からリヤドにおいてこれら廃棄物の処理のためのプロジェクトを進めている。」旨述べた。
11 第41回メルコスール共同市場審議会・首脳会合
(1)28〜29日,ティメルマン外相,ブドゥー経済相及びジョルジ産業相は,第41回メルコスール共同市場審議会に出席するためパラグアイを訪問した。28日,同審議会において,亜人権擁護団体「5月広場の祖母」のカルロット代表をメルコスール名誉市民とする宣言が採択された。
(2)29日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領の代理としてメルコスール首脳会合に出席し,「メルコスールは時に統合プロセスに必要な調和が十分にないように見られるが,我々の強みは,加盟国間の利害対立を消滅させる力ではなく,対立に立ち向かい解決する力である。近年,メルコスール加盟諸国は歴史的な成長を遂げたが,今後は,加盟国間で均衡の取れた発展を目指していくべきである。メルコスール域外との自由貿易協定の締結により,我々の輸出の市場が広がることになる一方,我々が原材料或いは付加価値の少ない品の供給者という役割に収まってしまう可能性もある。メルコスール域外との関係については,より広い概念を持つ必要がある。一致団結してメルコスール域外との貿易増加に当たる必要があるが,また,メルコスール域内の貿易の増加を図ることも重要である。」等演説を行った。
12 ボリビア
(1)30日〜7日1日,モラレス・ボリビア大統領が訪亜し,30日,フェルナンデス大統領と共に天然ガスパイプライン「フアナ・アスルドゥイ」落成式に出席した。同パイプラインは,ボリビア・タリハ県から亜サルタ州までの約48キロメートル(ボリビア側約13キロメートル,亜側約35キロメートル)に及ぶ。当初の輸送量は,日量770万立米〜1,100万立米で,その後徐々に増加し,2026年には日量最大2,700万立米に達する予定。また,同パイプラインは,亜北東部の複数の州への天然ガス供給を可能にするために以前より建設が計画されている亜北東ガスパイプラインと将来接続される見込み。
(2)また,モラレス大統領は,ドンシス在亜イスラエル協会(DAIA)代表と会談し,5月末のバヒディ・イラン国防相(注:元イラン軍司令官であり,1994年に亜で起きたイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の容疑者の1人として国際指名手配中)のボリビア公式訪問につき,誤りであったとして謝罪した。
13 要人往来
(1)往訪
1日 |
ダロット筆頭外務副大臣の米国訪問(OAS特別会合に出席) |
3日 |
ダロット筆頭外務副大臣のスペイン訪問(亜・スペイン政策協議に出席) |
5〜7日 |
ティメルマン外相のエルサルバドル訪問(第41回OAS総会に出席) |
8〜10日 |
ティメルマン外相の米国訪問(亜衛星SAC-D Aquarius打ち上げ式に出席) |
20〜21日 |
ダロット筆頭外務副大臣のオーストリア訪問(原子力に関するIAEA閣僚会議に出席) |
21日 |
ティメルマン外相の米国訪問(国連非植民地化特別委員会会合に出席) |
21〜23日 |
ドミンゲス農牧相のフランス訪問(G20農牧相会合に出席) |
22〜24日 |
アラク司法相のメキシコ訪問(金融活動作業部会(FATF)会合に出席) |
27日 |
ティメルマン外相のブラジル訪問(パトリオッタ・ブラジル外相と会談) |
27〜28日 |
デビード公共事業相のサウジアラビア訪問(ヤマニ・サウジアラビア商工相と会談) |
28〜29日 |
ティメルマン外相のパラグアイ訪問(第41回メルコスール共同審議会・首脳会合に出席) |
(2)来訪
10日 |
タヤーニ欧州委員会副委員長(フェルナンデス首相等と会談) |
12〜14日 |
潘基文国連事務総長(フェルナンデス大統領と会談) |
13〜14日 |
ウマラ次期ペルー大統領(フェルナンデス大統領と会談) |
14日 |
アラマン・チリ国防相(亜・チリ共同平和軍「南十字星」の国連平和維持活動部隊として出動に関する亜・チリ・国連間の覚書署名式に出席) |
15日 |
バロイ・モザンビーク外相(ティメルマン外相と会談) |
23日 |
南極条約協議国閣僚等(南極条約発効50周年記念閣僚級会合に出席) |
30日〜7日1日 |
モラレス・ボリビア大統領(天然ガスパイプライン「フアナ・アスルドゥイ」落成式に出席) |