1 概要
(1)内政:ブエノスアイレス市内及び国内各地において,水上警察と国境警備隊が給与の大幅な減額に抗議し,8日間にわたって道路封鎖を伴うデモを行った。政府支持派の労働総同盟(CGT)書記長選挙が実施され,アントニオ・カロー冶金業労組代表が選出された。労災保険法改正法案,2013年国家予算法案及び選挙権取得年齢を引き下げる選挙制度法改正法案が上下両院で賛成多数により可決し,成立した。5月広場において,ミチェリ亜労働者連盟(CTA)書記長が,所得税の課税最低限度額の引き上げ及び家族手当の給付拡大等を求める「反政府デモ」を決行した。
(2)外交:亜政府の債務未払いを不服とする米ヘッジファンドの訴えにより,亜海軍の練習船「リベルタッド(LIBERTAD)」号が,ガーナの司法当局の判断に基づき同国テーマ港で拘留された。フェルナンデス大統領は,リマにて開催された第3回南米アラブ首脳会議(ASPA)に出席した他,訪亜したスレイマン・レバノン大統領と会談した。亜及びイラン政府関係者は,ジュネーブの国連代表部において,94年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関する初会合を行った。亜はニューヨークで開催された国連総会(ティメルマン外相出席)にて,国連安保理非常任理事国選挙に当選し,2013年〜2014年の2年間,非常任理事国を務めることとなった。モレーノ国内取引長官及びパグリエリ国際通商長官は,162の亜企業代表と共にベトナムを訪問し,地元企業関係者と会合した。
2 内政
(1)亜連邦治安部隊による抗議行動
(ア)2日,政令第1307号により,各種手当てが削られ,給与の手取額が40〜70%減額された水上警察(Prefectura)及び国境警備隊(Gendarmeria)が,ブエノスアイレス市内及び国内各地において道路封鎖を伴う抗議行動を開始した。両組織は2日以降,給料カットの撤回及び手取りで最低7,000ペソの月額賃金の支給等を求めてデモを行い,市内中心部に所在する水上警察本部庁舎前の道路(トラックが多く通行する幹線産業道路)を多数の隊員により封鎖した他,治安改善のために水上警察官及び国境警備隊が配置されている同市内南部地域等で抗議活動を行った。
(イ)3日,ガレー治安大臣は水上警察署長,国境警備隊総司令官及び両組織の幹部20名を,下士官の統率の不備及びデモの責任により解任した。
(ウ)9日,アバル・メディーナ官房長官及びロレンシーノ経済・財政大臣が記者会見を行い,水上警察及び国境警備隊が要求する手取り最低7,000ペソの月額賃金の支給は不可能であると発表した。これを受け,
亜の治安部隊は抗議行動の継続を決定した。同日夜,水上警察及び国境警備隊の約200名の隊員が,大統領府に隣接する5月広場までデモ行進を行った。
(エ)10日,アバル・メディーナ官房長官は,水上警察の下士官(注:月給12,500ペソまでの者)に対し,一回限りの補償金を支払うと発表した。また,国境警備隊に対しては,当月に関しては,減給前の給料と同額のものを支払う旨約束した。水上警察及び国境警備隊の上層部は,抗議行動参加者に対し,デモを終了し,職場に復帰するよう命じた。同参加者は,政府に対する要求は継続するとした上で,上層部の命令を受け入れ,8日にわたるデモを解散した。
(2)放送法改正法を巡る動き
(ア)2009年10月に成立した「視聴覚コミュニケーション・サービス法(通称:放送法改正法)」(法律第26,522号)は,マスメディアの寡占状態の撤廃,同業界に対する国の介入の強化及びコンテンツの国産化等を定めているが,同改正法によって事業の削減・縮小を迫られるクラリン・グループ等の大手メディアは,同年,右改正法が表現・報道の自由,既得権・私有財産の保障等を規定する憲法に違反するとして提訴し,同法の執行停止請求を行った。右請求に対し,第一審判事(カルボネ判事)は,一部条項の執行停止を認めた。政府は控訴及び上告したものの,最高裁は一審の判断を支持し,2009年12月より36ヶ月間,一部条項の執行が停止されることとなった(注:右措置は2012年12月7日に期限が切れる。なお,当該条項を除いて,放送法改正法は2010年9月に施行された)。
(イ)執行停止となっている条項の一つは第161条であり,右条項は,放送ライセンス数の上限等を定める条項(注:マスメディアの多様性を保障するため,単一放送事業者が保有するライセンス数に上限を設け,また事業形態にも制約を設ける)に違反するメディア・グループは,1年以内に事業の削減・縮小等を行わなければならないとしている。同条項の違憲性をめぐる訴訟は第一審から開始される必要があるが,カルボネ判事の定年退職後,現在に至るまで,判事不在のために進んでいない状態にある。
(ウ)本年10月2日,空席になっていた上記の一審判事のポストに,既に定年退職していたテタマンティ元判事が「代理判事」として就任したが,政府から精神的苦痛を受けたとして,9日に辞表を提出した(注:政府は政権に近いとされているガグリアルディ判事の就任を求めていた)。
(エ)10日,フェルナンデス大統領は放送法改正法の成立3周年記念の演説を行い,同改正法に背く大手メディアが存在するとした上で,右状況を「民主主義の制限」(Cepo
democratico)と呼び,クラリン・グループ等を批判した。
(オ)11日,連邦控訴裁判所の命令で抽選により,トルティ判事が一審判事のポストの「代理判事」に選任されたが,政府により忌避された。
(カ)15日,政府は最高裁に対し,連邦控訴裁判所の「代理判事」任命制度に問題があるとし,右制度を無効化し,最高裁自らが,司法・立法・行政の三権の代表者等によって構成される司法委員会(Consejo
de la Magistratura)に介入し,「常任判事」の選定を行うよう申し立てを行った。16日,最高裁は右申し立てを却下した(注:亜では常任判事の任命は司法委員会によって行われる。)
(キ)17日,政府は本件に携わる「代理判事」候補者名簿を上院に提出した(注:亜の法律第26,376号によると,第一審の代理判事の任命方法には2通りあり,連邦控訴裁判所が任命する場合と,政府が上院に提出する候補者リストの中から連邦控訴裁判所が抽選で決める場合とがある)。
(ク)17日,放送法改正法の第161条の違憲性(合憲性)をめぐる裁判に関し,政府は,一審から最高裁への直接の「跳躍上告」(Per
Saltum)を認めるよう定めた法案を上院に提出した。23日,右法案の審議が上院の憲法委員会にて開始された。
(ケ)18日,連邦控訴裁判所は政府により忌避されたトルティ代理判事に代わり,アルフォンソ判事を本件の代理判事に任命した。
(コ)25日,政府が上院に提出した代理判事候補者名簿の内容が明らかになり,政権と強い結びつきをもつ判事の名前が記載されていた旨報じられた。
(サ)31日,「跳躍上告」(Per Saltum)を認めるよう定めた法案が上院にて審議され,賛成43票,反対26票で通過し,翌1日,下院に送付された(注:11月14日に下院も通過し,成立した)。
(3)政府支持派の労働総同盟(CGT)書記長選挙の実施
(ア)労働総同盟(CGT)は,現職のモジャーノ書記長派と反モジャーノ派に分裂しているが,3日,反モジャーノ派(政府支持派)の書記長選挙が実施され,アントニオ・カロー冶金業労組代表が選出された。反モジャーノ派CGTには,カロー冶金業労組代表,「los
Gordos」(注:鉄道,医療,電気及び商業の各労組),「独立派」(注:建設業労組UOCRA及び国家公務員労組UPCN)及び一部の旧モジャーノ派労組代表等が属している。
(イ)9日,反モジャーノ派CGTの役員等は大統領府においてフェルナンデス大統領及び関係閣僚と会合を行った。当地報道によると,右会合において,フェルナンデス大統領はカロー書記長が率いるCGTを唯一のCGTと認める旨発言するとともに,同派に対し,キルチネリスモの政治・経済モデルを支持するよう要請した。右会合では,政府と反モジャーノ派CGTは互いの協調関係を確認するにとどまり,これまで同派が主張してきた内容(注:所得税の課税最低限度額の引き上げ等)の詳細には踏み込まなかったため,会合は内容に乏しい形式的なものに終わった旨報じられた。同日,ダエル反モジャーノ派CGT広報担当は報道陣に対し,CGTは(我々のもの)1つであり,もう1つのグループ(注:モジャーノ派CGT)は非合法なプロセスによって結成された団体である旨発言した。
(ウ)3日の選挙結果を受け,モジャーノ書記長は,反モジャーノ派の労組代表のうち,16名がCGTの会費(2期分)を滞納しており,同組織の役員選挙で投票する権利を有していないにもかかわらず投票したとして,カロー書記長を選出した右選挙が無効である旨,労働省及び司法に訴える意向を示した。
(エ)30日,労働省に属する国立労組団体管理局(Direccion Nacional de Asociaciones
Sindicales:DNAS)は,カロー書記長が率いる労組団体を正式な労働総同盟(CGT)として一時的に認める旨,証明書を以て発表した。これにより,モジャーノ書記長が率いるCGTは,公式な組織ではないという扱いを受ける事になった。
(4)労災保険法改正法案の成立
(ア)3日,労災保険法改正法案の採決が上院で行われ,賛成41票及び反対19票で通過し,下院に送付された。同改正法案には,急進党(UCR),社会党系の連合である「革新派拡大戦線」(FAP)及びペロン党反キルチネル派の一部が反対票を投じた。
(イ)24日,同改正法の採決が下院で行われ,賛成140票,反対83票,棄権1票で成立した。これにより,労災により障害を負った労働者や,労災により死亡した労働者の家族に対する最低補償額が大幅に増額となる一方で,被保険者(労働者またはその家族)は,右補償金を受け取るか,もしくは雇用主に対して訴訟を起こすかの二者択一を迫られることになった(注:現状では,被保険者は労災保険会社(ART:Aseguradora
de Riesgos del Trabajo)からの補償給付を受ける一方で,訴訟も起こすケースが殆どとなっている)。同改正法については,違憲性をめぐり野党から批判の声が上がっていた他,与党ペロン党のキルチネル派議員の数名も,反対票を投じるか,採決に欠席した。同改正法に猛反発していたトラック労組代表のモジャーノ労働総同盟(CGT)書記長及び亜労働者連盟(CTA)のミチェリ書記長は,下院における採決当日,国会議事堂前で抗議活動を行った(注:当地報道では,モジャーノ書記長とマクリ・ブエノスアイレス市長が,22日に初めての会合及び写真撮影を行い,両者が(今とは)「異なる国家」の建設に向け合意したことが話題となったが,同市長率いる野党PRO(「共和国提案」)が下院で同改正法に賛成票を投じたことにより,モジャーノ書記長はマクリ市長等に対する不信感を募らせたと報じられた)。
(ウ)26日,政令第2018号が官報に掲載され,改正労災保険法が施行された。
(5)反政府労組団体による5月広場でのデモ
(ア)10日,大統領府に面する5月広場において,ミチェリ亜労働者連盟(CTA)書記長が,所得税の課税最低限度額の引き上げ及び家族手当の給付拡大等を求める「反政府デモ」を決行した(注:2010年12月以降,CTAは政府支持派と反政府派の2派に分裂しているが,ミチェリ派は後者)。当地報道によると,今次デモの参加者は,当初の10万人の予想を大幅に下回る2〜4万人(注:報道によりばらつき有り)にとどまったとされている。
(イ)主な参加者は以下の通り。ミチェリ書記長率いる反政府派CTA関係者,反政府派の労働総同盟(CGT)代表であるモジャーノ書記長の2人の息子(トラック労組ナンバー2のパブロ・モジャーノ及びファクンド・モジャーノ下院議員),モジャーノ派CGT関係者(亜運輸労働者連盟(CATT)のシュミッド代表及びピウマト司法労組代表等),亜農業連盟(FAA)のブッシ会長ら農業関係者,極左セクター(MST),反政府系失業者団体(CCC及びBarrios
de Pie等),野党「南プロジェクト」のピノ・ソラナス下院議員,亜大学連盟(FUA)等。
(ウ)モジャーノCGT書記長自身も9月中旬に右デモに参加する旨発表していたが,直前になって参加を取りやめた。その理由につき,ミチェリ及びモジャーノ両代表は,今次デモにおける主役の混同を避けるためとした。デモ当日,モジャーノ書記長は,ブエノスアイレス州ネコチェア市において開催された農業関係労組(UATRE,ベネガス代表)の全国大会に出席していた。
(エ)今回のデモで演説を行ったミチェリCTA書記長は,存在するのは1つのCGTと1つのCTAであり,他のグループ(注:政府支持の立場を取るカロー書記長率いるCGT及びジャスキー書記長率いるCTAの2グループを指す)は裏切り者であると発言した。
(6)2013年国家予算法案の成立
(ア)10日,2013年国家予算法案(注:9月20日にロレンシーノ経済・財政大臣が議会に提出)の採決が下院で行われ,賛成142票,反対87票で通過し,上院に送付された。
(イ)31日〜1日にかけて,同法案が上院で採決にかけられ,賛成42票,反対23票で通過し成立した。
(7)亜市民権法の成立
(ア)17日,国政選挙における選挙権取得年齢を,現行の18歳以上から16歳以上へと引き下げる選挙制度法改正法案が上院で採決され,賛成52票,反対3票,棄権2票で,野党を含む賛成多数で可決され,下院に送付された。同法案はキルチネル派のアニバル・フェルナンデス上院議員等によって提出された。
(イ)31日,同法案が下院において,賛成131票,反対2票,棄権1票で可決され,法律第26,774号「亜市民権法」として成立した。右新法の対象となるのは亜国生まれの者(本来の亜国民)であり,帰化して亜国民となった者は,引き続き18歳からの投票となる。亜では国政選挙における投票は,70歳以上の者を除き,憲法により国民の義務と定められているが,亜市民権法によると,16〜17歳の者の投票は義務ではない。当地報道によると,投票権取得年齢の引き下げにより,新たに140万人が投票権を持つことになり,各メディアは,右が来年の連邦議会選挙及び大統領の再々選を含む憲法改正の議論にどの程度影響を及ぼすことになるのかが注目されると報じた。亜においては未成年の身分証明書(DNI)の更新は満16歳で行われていたが,今回の法改正により,右更新年齢が14歳に引き下げられる。
(8)「ペロン党忠誠の日」を祝う式典
17日,コルドバ州において,キルチネル派の若手活動家組織である「Unidos y Organizados」が中心となり,「国家・民主ペロン主義への忠誠」というスローガンのもと,「ペロン党忠誠の日」を祝う式典が開催された(注:フェルナンデス大統領は2年連続で,同記念日の式典に出席しなかった)。他方,反政府派のモジャーノCGT書記長は,ブエノスアイレス市内にあるCGTの本部で,ペロン党反キルチネル派とともに同記念日を祝った。
(9)オンセ駅での列車の衝突事故:元運輸長官等の起訴
19日,本年2月22日に発生したサルミエント線オンセ駅における駅端への列車衝突事故(注:51人が死亡,700人以上が重軽傷を負った)の刑事責任を問われ,ハイメ元運輸長官,スキアビ前運輸長官,同線を運営していたブエノスアイレス鉄道会社(TBA)社の元経営陣(シリグリアーノ兄弟等)他7名がボナディオ連邦判事によって起訴された(注:本年5月にTBA社はサルミエント線及びミトレ線の営業権を取り消されている)。なお,TBA社等から過失責任を問われていたコルドバ運転手及び交通調整国家委員会(CNRT)のシカロ元監査人は起訴されなかった。
(10)キルチネル前大統領の命日
27日,キルチネル前大統領の2年目の命日を迎え,同前大統領を追悼するための式典等が国内各地で行われた。フェルナンデス大統領は式典には参加せず,長男マキシモ氏及び長女フロレンシア氏とともに,同前大統領の出身地であるサンタクルス州リオガジェーゴス市にある同前大統領の霊廟を訪問した。ブエノスアイレス市ボカ地区のレサマ公園では,政権支持派の左派系知識人グループ「カルタ・アビエルタ」のメンバー及びラ・カンポラ等のキルチネル派若手活動家組織が中心となって「(キルチネル前大統領は)生きている」(“Insoportablemente
vivo”)と題する文化・音楽イベントを行い,ブドゥー副大統領及びアバル・メディーナ官房長官等の閣僚が出席した。
3 外交
(1)亜海軍練習船「リベルタッド」号拘留問題
(ア)「リベルタッド」号拘留
2日,亜政府の債務未払いを不服とする米ヘッジファンドの訴えにより,亜海軍の練習船「リベルタッド(LIBERTAD)」号が,ガーナの司法当局の判断に基づき同国テーマ港で拘留された。
(イ)亜政府による交渉
ガーナ政府との交渉の為,亜政府は,スアイン筆頭外務副大臣及びフォルティ国防副大臣を現地に派遣した(15日)。ティメルマン外相は,本件対応のため,予定されていた訪日を急遽キャンセルした。その後,同外相はニューヨーク国連本部を訪問し(22日),潘基文国連事務総長はじめ国連関係者と協議したが,拘留解除に向けた進展はなかった。
(ウ)乗組員の退避
20日,亜外務省が,船舶維持に必要な船長及び最低限の乗組員44名を残し,残りの乗組員を退避させる旨決定したことに伴い,25日午前0時8分,乗組員281名は,亜政府がチャーターしたエールフランス機にてブエノスアイレス,エセイサ空港に到着した。亜の航空会社を利用した場合,「リベルタッド」号と同様に,国外で拘留される恐れがあることから,政府は敢えてエールフランス機をチャーターしたと言われているが,レカルデ・アルゼンチン航空社長は,右を否定し,同社航空機は,退避当日に全て使用されていただけで,国外にて拘留される心配はない旨表明した。
(エ)ティメルマン外相による前例公表
25日,大統領府にて,ティメルマン外相はプレス関係者を前に,2003年以降,ハゲタカファンドにより一時差し押さえられるも,差し押さえが解除された28に上る国有財産,銀行口座等のリスト(大統領専用機Tango01,人工衛星,駐米亜大使公邸,マイアミ総領事館の銀行口座,亜中銀が米連邦銀行に所有する準備金,亜空軍が米国内に所有する複数の建物,仏にあるサン・マルティン博物館,等)を読み上げた。また,「我々はこれまで差し押さえられた国有財産を取り戻したように,「リベルタッド」号を取り戻す」と述べ,ハゲタカファンドとは交渉しない亜政府の意志を再表明した。
(オ)ニューヨーク控訴裁判所による判決
26日,ニューヨークの控訴裁判所は,亜政府が2005年と2010年の債務再編に応じなかった債権者らを差別しており,右はパリパス条項に違反する行為であるとの判決を出した。亜に対し,平等な扱いを要求する債権者の中には,「リベルタッド」号の拘留を請求しているヘッジファンドNMLも含まれており,29日,ロレンシーノ経済・財政大臣は,亜政府がハゲタカファンドに対して残存民間債務を支払うことはない旨発言した。
(カ)元外務大臣7名による現政権の取組支持
27日,民主政権確立後の1983年以降に就任した元外務大臣7名(現在も外務省に勤務するルイス・セルティ元外務大臣及び2001年に死去したディ・テラ元外務大臣を除く全員)は,「リベルタッド」号拘留解除に向けた現政権の取組を支持し,連帯を表明する書簡を発出した。
(2)ASPA
2日,フェルナンデス大統領は,リマにて開催された第3回南米アラブ首脳会議(ASPA)に出席し,総会にて南米とアラブ世界を繋ぐ絆及び,新興国が日々中心的役割を果たすようになっているこの世界におけるアラブ社会の莫大な潜在力に関し言及するスピーチを行った他,同会議の場を利用し,ヨルダン国王アブドゥッラー2世と会談した。両国首脳は,亜・ヨルダン二国間関係のレベルの高さを強調した他,地域及び国際的なアジェンダを確認した。
(3)レバノン
2日〜5日にかけ,スレイマン・レバノン大統領が訪問し,3日にフェルナンデス大統領(アバル・メディーナ官房長官及びティメルマン外相同席),5日にブドゥー副大統領と会談した。今次訪問中に,両国首脳は,共同声明及び,教育,通商,観光ビザに関する合意文書への署名を行った。
(4)イタリア
3日,ダッス伊副大臣は,スアイン筆頭外務副大臣と会談した。また,ティメルマン外相と共に,在亜イタリア大使館が保有していた60名の亜の軍事政権下で行方不明となったイタリア人に関する資料を亜政府に引き渡す式典に参加した。
(5)ベトナム
(ア)5日,バラニャオ科学技術大臣はベトナムを訪問し,ハノイにてクアン科学技術大臣と協力協定及び,両国の科学分野での関係強化を目的とした科学技術調査委員会(CONICET)・ベトナム科学技術アカデミー(VAST)間枠組協定への署名を行った。
(イ)28日〜31日かけ,モレーノ国内取引長官及びパグリエリ国際通商長官が,162の亜企業代表と共にベトナムを訪問し,地元企業関係者との間で約2500の会合の機会を設けた。
(6)フォークランド(マルビーナス)諸島領有権問題
(ア)5日,ティメルマン外相は,英国がフォークランド(マルビーナス)諸島からのミサイル打ち上げ訓練を計画していることを非難し,国連事務総長,国連安全保障理事会議長及び,米州機構(OAS)事務総長に対し,右状況を説明する書簡を発出した。右に対し,7日,英国国防省は,本件は毎年行っている軍事訓練である旨表明した。
(イ)8日〜10日にかけてプリチェリ国防大臣は,ウルグアイのプンタ・デ・エステにて開催された第10回米州国防大臣会合に出席した。右会合の最終宣言には,次期会合をペルーで実施する旨記載された他,フォークランド(マルビーナス)諸島に関する亜政府の要求も含められたが,米国及びカナダは,本件は二国間問題であるとの異論を唱えた。
(7)ベネズエラ
7日,フェルナンデス大統領は,今次ベネズエラ大統領選挙で再選を果たしたチャベス・ベネズエラ大統領に対し,亜政府及び亜国民の祝意を伝えた。また,チャベス大統領との電話会談にて,フェルナンデス大統領は,更なる南米統合に向け引き続き取り組んでいくとともに,歴史的になおざりにされてきた社会階層における雇用の増加,並びに教育及び福祉分野での改善を達成したメカニズムを強化していく決意を改めて伝え, 両国首脳は,国際機関の改革とともに,国家間のより平等な経済システム推進を目指し,世界の主要な政治・経済圏の中での,メルコスール及びUNASURの役割強化に向け引き続き協働していく旨約束した。
(8)スペイン
9日,マクリ・ブエノスアイレス市長は,スペインを訪問し,ラホイ首相と会談し,亜及びベネズエラの現状に関する分析を行った。また,ガジャルドン司法大臣,グラシア国際協力・イベロアメリカ担当長官及び,ボテージャ・マドリッド市長と会談した。
(9)ブラジル
11日,パトリオタ伯外相は,ティメルマン外相と会談し,ベネズエラのメルコスール加盟のプロセス,パラグアイにおける大統領選挙実施,メルコスールの対EU関係,ハイチへの協力,UNASUR,CELAC,イベロアメリカ・サミット等に関し協議した。また,両国外相は,原子力分野における協力,航空産業等に関する二国間協定を進める目的で,11月に両国外務次官会合を実施する旨決定した。
(10)国連
18日,亜はニューヨークで開催された国連総会(ティメルマン外相出席)にて,国連安保理非常任理事国選挙に当選し,2013年〜2014年の2年間,非常任理事国を務めることとなった。亜は,当選国の中で最多の182票の賛成票を獲得した。今次総会にて新たに選出された亜を含む5ヵ国は,2013年1月より理事国としての活動を開始する。
(11)在外公館
22日,亜政府は在エチオピア大使館の業務を再開する旨発表。また,31日にはスリナムに新公館を設置する旨発表した。
(12)国連人権理事会
24日,国連人権理事会は,ジュネーブにて,刑務所での拷問,更なる表現の自由,先住民グループの権利問題,公共情報へのアクセス不足,調査結果改ざん等,亜が考慮すべき人権に関する119の項目を含む人権状況評価最終報告書を発表した。
(13)イラン
29日,亜及びイラン政府関係者は,ジュネーブの国連代表部において,94年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に荷担したイラン人8名に対する訴訟問題解決に向けた法的メカニズム構築に関する初会合を行った。今次会合には,亜側よりアンヘリーナ・アボナ国庫監査官(亜側代表,弁護士団代表),エドゥアルド・スアイン筆頭外務次官,スサナ・ルイス・セルッティ大使(外務省公式顧問)が出席した。31日,亜外務省は,29日の同会合の結果はポジティブなものであったとするプレスリリースを発出し,同日,ティメルマン外相は右プレスリリースを大統領府にて読み上げたが,同会合の詳細な内容は明らかにされていない。
(14)特恵関税制度の廃止
31日,EUは2014年1月より亜に対する特恵関税制度を正式に廃止する旨発表した。ラテンアメリカ地域では,亜の他にブラジル,キューバ,ウルグアイ及びベネズエラが同制度廃止の対象となる。
(15)要人往来
(ア)往訪
1日〜2日 |
デビード公共事業大臣ロシア訪問 |
2日 |
フェルナンデス大統領ペルー訪問(第3回南米アラブ首脳会議(ASPA)出席) |
5日 |
バラニャオ科学技術大臣ベトナム訪問 |
7日 |
バラニャオ科学技術大臣訪日(科学技術フォーラム出席) |
8〜10日 |
プリチェリ国防大臣ウルグアイ訪問(第10回米州国防大臣会合出席) |
9日〜10日 |
デボラ・ジョルジ産業大臣ドイツ訪問(第7回国際自動車市開会式出席) |
10日〜11日 |
コセンティーノ金融長官訪日(IMF世銀総会出席) |
17日 |
サバテージャ金融情報機構(UIF)仏訪問(FATF総会出席) |
18日 |
ティメルマン外相米国訪問(国連総会出席) |
22日 |
ティメルマン外相米国訪問(国連本部訪問) |
28〜31日 |
モレーノ国内取引長官及びパグリエリ国際通商長官ベトナム訪問 |
(イ)来訪
2日〜5日 |
スレイマン・レバノン大統領 |
3日 |
ダッス伊副大臣 |
5日 |
ガルシア・リネラ・ボリビア副大統領 |
9日 |
サウジアラビア核開発代表団 |
11日〜13日 |
ヒギンズ・アイルランド大統領 |
11日 |
パトリオタ伯外務大臣 |
11日 |
メレンション仏左翼戦線党首 |
17日 |
ルゴ・パラグアイ前大統領 |
17日 |
ルーラ前伯大統領 |
17日 |
ムヒカ・ウルグアイ大統領 |