I 概要
(1)内政面では,大統領予備選挙が実施され,フェルナンデス大統領が50%以上の得票率を記録して第1位となった他,ブエノスアイレス州知事選挙の予備選挙が実施され,シオリ同州知事が50%近くの得票率を記録して第1位となった。また,コルドバ州知事選挙が実施され,デ・ラ・ソタ候補(ペロン党)が当選した他,トゥクマン州知事選挙が実施され,キルチネル派の候補が当選した。その他,政府,経営者及び労組の3者間で最低賃金の引き上げに係る合意が成立した。
(2)外交面では,亜において第5回アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)外相会合が開催され,我が国からは山花政務官が出席した。また,亜において南米諸国連合(UNASUR)経済相・中央銀行総裁会合及びUNASUR外相評議会会合が開催された。また,ムヒカ・ウルグアイ大統領及びサントス・コロンビア大統領がそれぞれ訪亜してフェルナンデス大統領と会談した。その他,フェルナンデス大統領はウルグアイを訪問し,ムヒカ大統領と共に,亜・ウルグアイ間鉄道路線再開通式に出席した。
II 内政
1 コルドバ州知事選挙
(1)7日,コルドバ州において,知事・副知事,州議会議員(全70議席),市長(13の市),市議会議員等の選挙が実施された。知事選挙には,デ・ラ・ソタ候補(前同州知事。ペロン党),フエス候補(上院議員。新鋭党),アグアッド候補(下院議員。急進党)等が出馬していたが,開票の結果,デ・ラ・ソタ候補の当選が決定した(得票率は,デ・ラ・ソタ候補が42.6%,フエス候補が29.49%,アグアッド候補が22.94%(開票率97.68%時点))。
(2)当選したデ・ラ・ソタ候補は,「全てのコルドバ州民に感謝する。これから,コルドバ州の発展という大いなる挑戦が始まる」,「分裂を助長するためではなく,団結するため,連邦制を強化するため,そして諸問題を解決するために,国には,コルドバ州をあてにしてもらいたい」等述べた。
(3)フェルナンデス大統領は,デ・ラ・ソタ候補に電話で祝意を伝えた。その他,キルチネル派の多くの政治家等がデ・ラ・ソタ候補の勝利を祝福した(注:今次知事選挙にはキルチネル派の候補が出馬していなかった。デ・ラ・ソタ候補はキルチネル派ではないが,現在は強硬な反キルチネル派でもないため,フェルナンデス政権にとって,同候補の当選は比較的望ましい結果であった旨当地各紙は報じた)。
(4)フエス候補は,「不正があった時にはそれを告発するが(注:フエス候補は,2007年のコルドバ州知事選挙において,スキアレッティ候補(当時)に僅差で敗北したが,この際,票の不正な操作があったとして,州選挙裁判所に告訴した),負けた時には負けを認める」と述べた上で,「我々は,かれら(デ・ラ・ソタ次期政権)を野放しにはしない。我々は,かれらのクライエンティリズムと汚職に反対している」と述べた。また,フエス候補を支持していたビネル・サンタフェ州知事(社会党。「革新派拡大戦線」大統領候補)は,「問題は結果ではない。我々にとって,コルドバ州におけるフエス候補の存在は極めて重要である」と述べた。
(5)アグアッド候補は,敗北を認めた上で,「今次選挙において誠実に戦ってくれた他勢力に感謝する」,「コルドバ州の急進党は,州議会において,党の利益を守って行くだろう」等述べた。また,アルフォンシン下院議員(急進党。「社会開発のための戦線」大統領候補)は,「アグアッド候補はできる限りのことをした」と述べた他,「キルチネル派は当選したデ・ラ・ソタ候補と結び付こうとしているようだが,コルドバ州のペロン党は(キルチネル派とは)一線を画そうとしており,今回デ・ラ・ソタ候補に投票した有権者の多くが,14日の選挙(注:国政選挙の予備選挙)ではキルチネル派以外の候補に投票するだろう」と述べた。
2 国政選挙の予備選挙
(1)14日,国政選挙の予備選挙が実施され,同日夜より暫定結果の発表が始まったところ,15日朝時点の暫定結果における主要大統領候補の得票率は,フェルナンデス候補(大統領。「勝利のための戦線」)が約50%,アルフォンシン候補(下院議員。急進党。「社会開発のための連合」)及びドゥアルデ候補(元暫定大統領。ペロン党反キルチネル派。「民衆戦線」)がいずれも約12%,ビネル候補(サンタフェ州知事。社会党。「革新派拡大戦線」)が約10%となった。
(2)フェルナンデス候補は,14日夜に勝利宣言を行った他,15日に記者会見を行い,「亜社会は,2003年以降の(キルチネル派)政権に対して票を投じた。(同政権の)働き振りが評価されたのである」,「約78%もの人々が今次選挙に参加した。この記録的な投票率こそ最も重要なデータである」等述べた。
(3)15日,アルフォンシン候補は,「我々はもっと多くの票を獲得できると思っていた」,「困難は承知だが,決選投票に進むため努力を続ける」,「政府がほしいままに振る舞うのを避けるため,急進党の役割を高め,(同党の)国会議員がより多く選出されるよう目指す」等述べた。ビネル候補は,「とても満足している。(同候補自身が)短期間のキャンペーンで10%以上の得票率に至ったことは偉業であり,「革新派拡大戦線」が更なる成長を遂げる可能性は極めて高い」等述べた。16日,ドゥアルデ候補は,「私が決選投票に進む。現政権に同意していない半数の亜国民を代弁したい」等述べた。なお,マクリ・ブエノスアイレス市長(共和国提案)は,上記暫定結果を受け,フェルナンデス候補に電話で祝意を伝えた。
(4)25日,カマニョ下院議員(ペロン党反キルチネル派),フェラリ下院議員(ペロン党反キルチネル派),ブルリッチ下院議員(市民連合)及びピネド下院議員(共和国提案)は,今次予備選挙の集計作業において誤謬等があったとして,ブランコ・ブエノスアイレス州連邦判事に告訴した。これを受け,同判事は,「全ての勢力に影響を及ぼすような大きな誤謬である」との見解を示した。他方,26日,ロレンセッティ最高裁長官は,「誤謬があったなら正さねばならないが,結果が左右される程のものではない。選挙のプロセスを疑問視するような風潮を生じさせるべきではない」との見解を示した。
(5)30日,ランダッソ内相は,大統領予備選挙の最終結果を発表するための記者会見を行った。同会見において,同相は,上記野党議員らの告発並びにそれを報じているラ・ナシオン紙及びクラリン紙について,「民主主義及び選挙制度の透明性を明らかに侵害する態度である」等述べ,強く批判した。ラ・ナシオン紙及びクラリン紙の記者は,「野党の告発を報じるためには大統領の許可を得なければならないのか」,「マスメディアが民主主義を侵害しているとのことだが,貴大臣の発言こそ危険ではないか」等述べ,同会見の場で反論した。また,野党からも,ランダッソ内相の上記発言に対する批判が相次いだ。
(6)同日に発表された大統領予備選挙の最終結果は下記の通り。
(ア) |
フェルナンデス候補(「勝利のための戦線」) |
1,076万2,217票 |
50.24% |
(イ) |
アルフォンシン候補(「社会開発のための連合」) |
261万4,211票 |
12.20% |
(ウ) |
ドゥアルデ候補(「民衆戦線」) |
259万5,996票 |
12.12% |
(エ) |
ビネル候補(「革新派拡大戦線」) |
218万0,110票 |
10.18% |
(オ) |
ロドリゲス・サア候補(「連邦戦線」) |
174万9,971票 |
8.17% |
(カ) |
カリオ候補(「市民連合」) |
68万9,033票 |
3.22% |
(キ) |
アルタミラ候補(「左派戦線」) |
52万7,237票 |
2.46% |
(ク) |
アルグメド候補(「南プロジェクト」) |
19万0,094票 |
0.89% |
(ケ) |
白票 |
100万7,753票 |
|
(コ) |
無効票 |
27万4,951票 |
|
(サ) |
投票率 |
|
78.67% |
3 ブエノスアイレス州知事選挙の予備選挙
(1)14日,上記国政選挙の予備選挙と同時に,ブエノスアイレス州では地方選挙(知事・副知事,州議会議員,市長・市議会議員等の選挙)の予備選挙も実施された(注:その他,サンフアン州,サンルイス州及びエントレリオス州においても同様に地方選挙の予備選挙が実施された)。知事選挙には,「勝利のための戦線」から,シオリ候補(ブエノスアイレス州知事。ペロン党キルチネル派)及びイシイ候補(ホセ・C・パス市長。ペロン党キルチネル派)の2名が出馬していたが,前者が後者を大差で破り,知事候補に選出された。その他の勢力の知事候補は1名であった。なお,主要候補の得票率は,シオリ候補が48.2%,デ・ナルバエス候補(下院議員。ペロン党反キルチネル派。「社会開発のための戦線」)が16.8%,アマデオ候補(下院議員。ペロン党反キルチネル派。「民衆戦線」)が8.9%,ストルビセル候補(下院議員。GEN。「革新派拡大戦線」)が6.5%,サバテラ候補(下院議員。「新たな会合」)が5.8%であった(開票率91.30%時点)。
(2)第1位の得票率を獲得したシオリ候補は,「努力は報われるということを痛感した」,「明らかに,我々がフェルナンデス大統領と共に行ってきた仕事に対する多大な評価がある」,「私に信頼を抱いてくれていた故キルチネル前大統領に感謝する。私は忠実に(キルチネル前政権の)副大統領を務めた」等述べた。
4 トゥクマン州知事選挙
(1)28日,トゥクマン州において,知事・副知事,州議会議員(全49議席),市長(19の市),市議会議員等の選挙が実施された。知事選挙には,アルペロビッチ候補(同州知事。ペロン党キルチネル派),カノ候補(上院議員。急進党)等が出馬していたが,開票の結果,アルペロビッチ候補の当選(再選)が決定した(得票率は,アルペロビッチ候補が69.9%,カノ候補が14.8%(開票率96.45%時点))。
(2)再選を果たしたアルペロビッチ候補は,「私を支持してくれたトゥクマン州民に感謝する。今次結果は,今は亡き友人であるキルチネル前大統領のおかげである」等述べた。
(3)今次結果を受け,フェルナンデス大統領は,アルペロビッチ候補に電話で祝意を伝えた。また,ブドゥー経済相(「勝利のための戦線」副大統領候補),ランダッソ内相,ボッシオ国家社会保障機構(ANSES)総裁等がトゥクマン州を訪問し,アルペロビッチ候補の当選祝賀会に出席した。ブドゥー経済相は,「私は偉大な勝者と同席するために(トゥクマン州に)来た。亜にとって素晴らしいこの時代は,トゥクマン州にとっても素晴らしいものである」と述べた。
5 年金の増額に係る発表
3日,フェルナンデス大統領は,賃金上昇率等に応じて毎年3月及び9月に年金額を改定する旨定めたスライド制年金法(2008年10月成立)の規定に基づき,9月以降の年金を16.8%増額する旨発表した。これにより,年金の最低支給額は月額1,434ペソとなった。同発表を受け,野党からは,予備選挙及び本選挙の15日前以降,公共事業の発表等,得票を促進し得るような政府行事を全般的に禁止するという選挙法の規定に違反しているとの批判が生じた。
6 最低賃金の引き上げ
(1)26日,労働省において,政府代表,経営者代表及び労組代表の3者による最低賃金審議会が開催されたところ,従来月額1,840ペソであった最低賃金を25%引き上げて2,300ペソとする旨合意に至った。今次会議には,政府代表としてトマダ労働相等,経営者代表としてフネス・デ・リオハ亜工業連盟(UIA)副会長等が出席し,労組代表としては,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長,ジャスキー亜労働者連盟(CTA)書記長等が出席した。
(2)会議終了後,フェルナンデス大統領は,労働省において記者会見を行い,上記合意の成立について発表した。同大統領は,亜の最低賃金及び年金は中南米地域において最高額となっていると述べ,(キルチネル前政権発足以降)8年連続で,政府の仲介により最低賃金の引き上げに係る合意が成されてきたことに言及した他,「亜の大統領であることを誇りに思う。この方向性を継続していきたい」と述べた。
7 サッファローニ最高裁裁判官を巡る問題
(1)7月末,サッファローニ最高裁裁判官(注:同人は,最高裁裁判官の中でも最もキルチネル派寄りの人物と言われている)が所有する複数のアパートが売春目的で使用されているとして,NGOにより告訴された。これを受け,2日,アルフォンシン下院議員は,「司法の権威と威信を明らかに害している」として,辞職すべきとの見解を示した。また,カリオ下院議員(市民連合。「市民連合」大統領候補)は,「弾劾裁判を行うべきである。本件のみならず,サッファローニ裁判官が行政府の助言者となって三権分立を侵害してきたことについても(追求すべきだ)」と述べ,ドゥアルデ元暫定大統領は,「(同裁判官が)より適切で説得力のある説明をしなければならない」と述べた。
(2)同日,サッファローニ裁判官は,自身の所有するアパートが売春目的で使用されていたことは認識していなかったとした上で,辞職するつもりはないとの意向を示し,「要請されれば国会であらゆる説明を行う準備がある」と述べた。
III 外交
1 第5回アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)外相会合
(1)24〜25日,ブエノスアイレス市において第5回アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)外相会合が開催され,我が国からは山花政務官が出席した。今次会合では,全体会合と外相リトリートが開催され,全体会合では,スリナム及びホンジュラスの新規加盟が承認されるとともに,各国出席者によるスピーチが行われ,会合の成果文書としてブエノスアイレス宣言が採択された。
(2)山花政務官は,全体会合のスピーチにおいて,我が国はアジアと中南米を結ぶFEALACを重視しており,今後ともFEALACへ積極的に関与する旨表明した。その一例として,昨年東京で開催された第4回外相会合で我が国が発表した「防災と環境に関する協力イニシアティブ(FROGイニシアティブ)」の進捗状況を報告した。また,東日本大震災に関し,各国からのお見舞いと支援に対する謝意を表明するとともに,我が国にとり,震災からの復興には国際社会との一層の連携が必要であると説明した。
(3)外相リトリートでは,「グローバルガバナンスの改革」をテーマとして出席者の間で国連改革,国際金融規制,食糧安全保障等につき議論が行われた。この中で山花政務官は,国連安保理改革と気候変動問題に関する我が国の立場を説明した。
(4)外相会合に先立って行われた高級実務者会合では,気候変動問題,国連改革やWTOドーハラウンド交渉等の国際的な諸課題及びFEALACの将来的な機能強化につき議論が行われ,その結果がブエノスアイレス宣言として外相会合にて採択された。
(5)今次会合の機会に,山花政務官は,各国代表とともにフェルナンデス大統領を表敬したほか,ティメルマン外相と会談を行った。また,その他6カ国の代表(ホンジュラス外相,コロンビア外相,パナマ副大統領兼外相,エルサルバドル外務次官,コスタリカ外務次官,キューバ外務次官)とも二国間会談を行い,シンガポール,ニカラグア等の代表と懇談した。
2 ウルグアイ
(1)2日,ムヒカ・ウルグアイ大統領が訪亜し,フェルナンデス大統領と会談し,署名済みの二国間協定等の成果についてレビューしたほか,下記の協定等に署名した。
(ア)亜・ウルグアイ経済合同委員会の設置に係る議事録
(イ)2030年ワールドカップの亜・ウルグアイ共同開催実現のための二国間委員会の設置に係る議事録
(ウ)液化天然ガス・プロジェクトにおける両国ガス事業者の協力に係る文書
(エ)液化天然ガス・プロジェクト進展のための二国間協定
(オ)地質学及び鉱業の分野における技術協力に係る協定
(カ)社会政策の分野における技術協力に係る協定
(キ)農業における協力覚書
(ク)両国間国境通行に係る協定
(ケ)両国間の移民管理に係る協定
(コ)国境地帯の治安改善のための情報交換に係る協定
(サ)サルト・グランデ水力発電所の整備に係る交換公文
(2)また,両大統領は,概要以下のとおりの共同宣言に署名した。
(ア)両大統領は,ウルグアイ川の環境モニタリング及びマルティン・ガルシア運河の浚渫工事のほか,エネルギー・鉱業,医療,経済・通商,国境地域の統合,二国間交通,及び教育・文化の各分野における二国間協力の進捗状況を確認した。
(イ)両大統領は,労働,司法,治安,社会開発,科学技術,南極協力,国際協力,領事協力,観光,2030年ワールドカップ共同開催,在ウルグアイ亜領事館の新設及び在ウルグアイ亜大使館の新事務所建設に関する成果を評価した。
(ウ)両大統領は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,亜の正当な権利に対する支持を改めて表明した。
(3)29日,フェルナンデス大統領は,ウルグアイ・サルト市を訪問し,ムヒカ・ウルグアイ大統領と共に,亜・ウルグアイ間鉄道路線再開通式に出席した。同鉄道路線は,亜ブエノスアイレス州ピラール市とウルグアイ・サルト市を結ぶ全長約495キロメートルの路線であり,約30年振りに再開通された。
3 バングラデシュ
3日,Mijarul Quayesバングラデシュ外務次官が訪亜し,ダロット筆頭外務副大臣と会談した。両者は,二国間アジェンダをレビューし,教育,科学,スポーツ分野における交流の強化,特に農業分野での亜の技術協力の増加,及び二国間協力に関する常設メカニズムの設置を図ることで合意した。また,両者は,在亜バングラデッシュ大使館新設の可能性についても協議した。
4 アンゴラ
4日,セルケイラ・アンゴラ・マスコミニケーション相が訪亜し,ダロット筆頭外務副大臣と会談した。ダロット副大臣は,政治,経済,技術・文化協力等の分野におけるアンゴラとの関係強化に向けた亜の意向を表明した。セルケイラ大臣は,両国の国営通信社間の緊密な協力関係に言及しつつ,テレビ・ラジオ番組情報の交換等の分野での二国間関係強化を図りたいとし,また,ドス・サントス・アンゴラ大統領からのフェルナンデス大統領に対するアンゴラ訪問招待を伝達した。
5 シリア
4日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,シリア情勢に関し,シリア当局による一般市民に対する武力行使と多くの死傷者の発生への憂慮を表明し,シリア当局による一般市民への弾圧の停止を呼びかけるとともに,外国により干渉されることなく,また武力を用いることなく,対話によって問題を解決するよう呼びかけた。
6 メルコスール
5日,ティメルマン外相は,在亜ブラジル大使の主催により開催された在亜メルコスール各国大使昼食会に出席した。同外相には,クレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)及びグリーンスプン外務省メルコスール局長が同行した。同昼食会では,メルコスールへの新規加盟を認めるための方法,地域内貿易の拡大,南米諸国連合(UNASUR)経済財務評議会新設の重要性等につき議論が行われた。
7 国連
10日,ダイス国連総会議長が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両者は,国際経済危機,世界における食料危機と貧困,本年亜が議長を務めるG77+中国,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題,UNASUR等につき協議した。
8 南米諸国連合(UNASUR)
(1)12日,ブエノスアイレス市において,UNASUR経済相・中央銀行総裁会合が開催され,UNASUR経済財務評議会規約及び同評議会の2011年〜2012年行動計画が採択された。両文書は,次期UNASUR外相評議会会合に提出されることになった。なお,同行動計画には,ラテンアメリカ準備基金(FLAR)の拡大等の可能性,域内貿易における自国通貨での貿易決済の推進,域内貿易の促進に関する3つのワーキング・グループの新設が定められている。
(2)24日,ブエノスアイレス市において,UNASUR外相評議会会合が開催された。同会合では,12日に開催されたUNASUR経済相・中央銀行総裁会合で採択されたUNASUR経済財務評議会規約及び同評議会の2011年〜2012年行動計画が承認され,両文書は,次期UNASUR首脳評議会会合(10月29日,パラグアイにおいて,イベロアメリカ・サミットと併せて開催予定)に提出されることになった。同行動計画において新設が定められている3つのワーキング・グループは,それぞれの報告書を60日以内にUNASUR首脳評議会に提出することになった。また,UNASUR加盟各国政府当局及び選挙機関から構成され,各国からの要請を受けて選挙監視を行うためのUNASUR選挙評議会の新設案が採択され,次期UNASUR首脳評議会会合に提出されることになった。なお,同案が首脳評議会会合の場で採択されるまでは,UNASUR選挙監視ミッションの派遣につき,各国は議長国を通じてUNASUR外相評議会に要請することになる。
(3)31日,第6回亜・エクアドル政治連携・統合促進委員会会合に出席するためエクアドルを訪問したティメルマン外相は,UNASUR暫定事務局を訪問し,メヒーアUNASUR事務局長と会談した。
9 ボリビア
16日,ダロット筆頭外務副大臣は,ボリビアを訪問し,アルラルデ・ボリビア外務次官と会談した。両者は,チョケワンカ・ボリビア外相の訪亜の準備を行った。また,両者は,両国を結ぶ橋「サルバドール・マサ」建設に関する二国間ワーキング・グループにおける進展を評価したほか,二国間国境地域の通行,教育及び二国間移民協定に関する次期二国間合同委員会の開催,外交官学校間の交流,UNASUR,メルコスール,OAS,国連場裡における協力,第5回FEALAC外相会合等につき協議した。更に,両者は,人道支援・防災分野における二国間覚書に署名した。
10 コロンビア
18日,サントス・コロンビア大統領が,同夫人,オルギン外相等を伴って訪亜し,フェルナンデス大統領と会談した。同会談には,途中から両国外相他閣僚が同席した。サントス大統領の今次訪亜の機会に,二国間協力・統合覚書のほか,科学技術,貿易,南南協力・三角協力,運輸・交通,河川・港湾管理の分野における二国間協力協定等が締結された。なお,コロンビア大統領の公式訪問は,10年以上行われていなかった。
上記会談後,両大統領は,亜・コロンビア関係の新たな幕開け,文化・教育,科学技術,農牧畜,貿易,南南協力・三角協力,運輸・交通,河川・港湾管理等の分野における二国間協力関係の強化に向けた意志,UNASUR強化の重要性,中南米カリブ諸国の統合促進の重要性,原子力研究炉の設計・設置等に関する二国間技術協力協定締結協議の開始,安保理改革に関しコンセンサス・グループとして協働歩調をとることの必要性,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する亜の合法的権利へのコロンビアの支持等を謳う共同宣言に署名した。
11 マレーシア
23日,ダロット筆頭外務副大臣は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜したリチャード・リオット・マレーシア外務副大臣と会談し,二国間経済・貿易関係の強化,技術協力の推進等につき協議した。また,ダロット副大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するマレーシアの支持に謝意を表明した。
12 中国
23日,ティメルマン外相は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜した張昆生(Zhang Kunsheng)中国外交部部長助理と会談し,世界経済危機,新興諸国の国連,G20,IMF等の国際機関における参加を強化するための新興諸国間の更なる協調の必要性等につき協議したほか,2010年7月のフェルナンデス大統領の中国訪問の成果,及び本年7月に北京で開催された第18回亜・中国経済・貿易合同委員会の成果を評価した。また,ティメルマン外相は「1つの中国」への亜の支持を再表明し,一方,張昆生助理はフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する亜の立場への支持を再表明した。
13 フィリピン
24日,ティメルマン外相は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜したデル・ロサリオ・フィリピン外相と会談し,両地域の現状を分析したほか,本年5月に開催された亜・フィリピン政策協議につき協議するとともに,二国間経済協議メカニズムの設置を提案した。また,両外相は,南南協力及び第三国協力を強化する目的で,二国間技術協力協定への署名を行った。
14 インドネシア
24日,ティメルマン外相は,第5回FEALAC外相会合において同外相と共に共同議長を務めるために訪亜したマルティ・インドネシア外相と会談し,世界経済危機の中でのFEALACの重要性,G20メンバーであるFEALAC7ヶ国間の協調,国連改革,特に貿易分野における二国間関係の強化等につき協議した。また,マルティ外相がASEANの重要性につき述べたのに対し,ティメルマン外相はASEAN代表部亜大使の任命決定につき報告した。更に,両外相は,亜水平協力基金(FO−AR)とインドネシア技術協力オフィス間の外交査証免除協定に署名した。
15 シンガポール
26日,ダロット筆頭外務副大臣は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜したズルキフリ・シンガポール内務兼外務担当国務相と会談し,二国間政策協議に関する覚書に署名した。また,ズルキフリ大臣は,両国間の貿易と観光を増加させるため,直行便開設に向けた両国航空会社間の協定の締結を提案した。
16 ベトナム
26日,ダロット筆頭外務副大臣は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜したフン・ベトナム外務次官と会談し,二国間協力を強化するための協力協定に署名したほか,ベトナムでの開催が予定されている次期二国間経済合同委員会会合により,両国の貿易・投資関係が促進されることになるという点で意見を同じくした。
17 ラオス
26日,ダロット筆頭外務副大臣は,第5回FEALAC外相会合に出席するため訪亜したサンソムサック・ラオス外務副大臣と会談し,二国間技術協力協定に署名したほか,具体的活動を通じて両国関係を強化する必要があるという点で意見を同じくした。
18 ナイジェリア
26日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,ナイジェリアにおける国連機関の入った建物に対するテロを非難し,また,全てのテロ行為を改めて強く拒絶するとともに,遺族,ナイジェリア政府・国民,国連機関に対する弔意と連帯を表明した。
19 エクアドル
31日,ティメルマン外相は,エクアドルを訪問し,パティーニョ・エクアドル外相と共に,第6回亜・エクアドル政治連携・統合促進委員会会合の議長を務めた。同会合では,国連等の国際機関の改革の必要性,国際貿易の均衡を図る必要性,新たな国際金融構造の推進,地域アジェンダ等につき協議された。
20 要人往来
(1)往訪
16日 |
ダロット筆頭外務副大臣のボリビア訪問(アルラルデ・ボリビア外務次官と会談) |
29日 |
フェルナンデス大統領のウルグアイ訪問(亜・ウルグアイ間鉄道路線再開通式に出席) |
31日 |
ティメルマン外相のエクアドル訪問(第6回亜・エクアドル政治連携・統合促進委員会会合に出席) |
(2)来訪
2日 |
ムヒカ・ウルグアイ大統領(フェルナンデス大統領と会談) |
3日 |
Mijarul Quayesバングラデシュ外務次官(ダロット筆頭外務副大臣と会談) |
4日 |
セルケイラ・アンゴラ・マスコミニケーション相(ダロット筆頭外務副大臣と会談) |
10日 |
ダイス国連総会議長(ティメルマン外相と会談) |
12日 |
UNASUR加盟諸国経済相・中央銀行総裁(UNASUR経済大臣・中央銀行総裁会合に出席) |
18日 |
サントス・コロンビア大統領(フェルナンデス大統領と会談) |
24日 |
UNASUR加盟諸国外相(UNASUR外相評議会会合に出席) |
24〜25日 |
アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)加盟諸国外相等(第5回FEALAC外相会合に出席) |