政治情報
月1回更新

2012年3月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2012年04月作成
在アルゼンチン大使館

I 概要


(1)内政:第130回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領が一般教書演説を行った。また,中央政府とブエノスアイレス市の間で,同市地下鉄運営権の委譲を巡り対立が続いた。その他,ブドゥー副大統領の汚職問題,YPF社の石油採掘権の剥奪等が注目を浴びた。


(2)外交:ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島海域において石油採掘活動を行う企業等に対し,行政,民事及び刑事措置をとる計画を発表した。フェルナンデス大統領は,チリを訪問し,ピニェラ大統領と会談した。また,ティメルマン外相は,アゼルバイジャン,アンゴラ,モザンビーク,ブラジル及びベトナムを訪問したほか,南米諸国連合(UNASUR)外相会合及び核セキュリティ・サミットに出席した。他方,アブダッラー・アラブ首長国連邦外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。

 

TT 内政


1 通常国会の開会


 1日,第130回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領は,3時間17分に亘り一般教書演説を行ったところ,概要以下のとおり。


(1)2003年(注:キルチネル派政権発足年)以来,亜は,域内で最高水準の経済成長を遂げてきた。今後とも,内需の維持と輸出の拡大とを継続していかなければならない。工業化の推進も継続する。工業と農牧業とを二項対立的に捉えるのではなく,両者の相乗効果が最良の結果をもたらすと考えるべきである。キルチネル派政権の補助金政策は,多くの国民に裨益し,国内産業の発展を可能にしてきた。そして,歴史上前例のない社会的包摂も実現し,失業率が低下し,医療保険への加入者も大幅に増加した。また,インフラ分野への投資を重視し,学校,道路,病院等の建設を推進してきた。厳しい国際情勢にも拘わらず,亜は債務削減を遂行してきている。また,外国からの融資に依存することなく経済成長を遂げてきている。


(2)オンセ駅での鉄道事故(注:ブエノスアイレス市内に位置する鉄道サルミエント線オンセ駅において,列車が終点の車止めに衝突し,死者51名及び負傷者700名以上となる事故が発生した。)に関し,早期に司法の判断が下され,責任の所在が明らかになることを望む。(その責任追及のために)必要な決断を下すことを躊躇することはない。


(3)キルチネル派政権にとって教育は重要なテーマの一つであった。しかし,残念ながら,教職員の賃金は2003年から今日までに651%も上昇しているにも拘わらず,本年の教職員業界の賃上げ交渉が合意に至っておらず,未だに授業が開始されていない地方がある。(注:今次演説において,フェルナンデス大統領は,「教職員は1日の勤務時間が4時間で3か月の休暇があり,他の職業に比べ恵まれている」との発言があり,これに対して教職員側から批判が生じた。)


(4)エネルギーの生産が著しく低下していることにより,その輸入が大幅に増大し,貿易収支を圧迫している。政府として,国民に供給するエネルギーを確保するためにあらゆる措置を取る。


(5)中銀定款及び兌換法を改正するための中銀改革法案を国会に提出した(注:21日に成立)。通貨価値の保持は中銀の主要な機能の一つだが,それが唯一の機能ではなく,中銀は生産等の実質的な経済活動に関与するべきである。また,民法及び商法を改正するための法案を提出する予定である。これらは,離婚手続きの簡素化,事実婚や養子縁組の権利拡充,先住民コミュニティの土地の保護等を含むものである。


(6)全国民に団結を呼び掛けたい。団結を欠けば国は秩序を失う。対立に価値はない。政治家であれ,企業家であれ,労組指導者であれ,社会活動家であれ,我々全員の義務は,より良いアイディアに近づくべく努力することである。

 

2 ブエノスアイレス市の地下鉄運営権委譲問題


(1)1月3日,中央政府とブエノスアイレス市の間で,同市地下鉄運営権を中央政府から同市に委譲する旨の合意文書への署名がなされた。これを受け,1月6日,マクリ市長は,市長令によって地下鉄運賃を1.10ペソから2.50ペソに引き上げていた。また,1月27日,治安省は,従来この地下鉄の警備に当たっていた連邦警察を,3月1日以降全員撤退させる旨発表していた。


(2)1日,フェルナンデス大統領は,「地下鉄車両が老朽化していることは既に分かっていたことであるのに,責任を放棄しようとするマクリ市長は子供染みており我が儘である。」等述べた。また,同日,中央政府は,連邦警察を地下鉄警備から撤退させた。しかし,ブエノスアイレス市も同市警察には余力がないとして警官を配置しなかったため,地下鉄労働者のストを招き,市民の不満に押されて,再度中央政府は連邦警察を配置した。


(3)5日,ブエノスアイレス市は,連邦裁判所に対し,地下鉄委譲の取り止め及び地下鉄警備に当たる連邦警察の撤退の取り止めを求めて保護請求を行った。他方,6日,公共事業省は,連邦裁判所に対し,ブエノスアイレス市を合意不履行により訴えた。29日,連邦裁判所は,本件について判断する権限を持たないとして,双方の訴えを退けた。


(4)7日,フェルナンデス大統領は,1月3日にブエノスアイレス市との間で署名済みの上記2(1)の合意文書を法案の形にして議会に提出する旨発表した。8日,中央政府は,地下鉄運営権に加え,ブエノスアイレス市内を運行する路線バス及び路面電車の運営権についても中央政府からブエノスアイレス市に委譲する旨定める法案を国会に提出した。15日,マクリ市長は,同法案につき,「ブエノスアイレス市議会の承認が必要である。中央政府は,市内を運行する路線バス及び路面電車の運賃を低く抑えるために支出している補助金を捻出できない財政難にあるために,ブエノスアイレス市にこれらを押しつけようとしている。ブエノスアイレス市としては,中央政府が憲法に則り資金も手当てするのであれば(注:憲法第75条は,地方政府に権限,サービス或いは機能を委譲する際には,その資金も手当てしなくてはならないと定めている。),公共交通部門等の運営権の委譲を受け入れる用意がある。」等述べた。21日,ブエノスアイレス市の地下鉄,路線バス及び路面電車の運営権を中央政府から同市に委譲する旨定める法案が上院で可決された。28日,同法案は下院で可決されて成立した。


(5)29日,フェルナンデス大統領は,「地下鉄警備に当たる連邦警察の段階的撤退,及び委譲後1年間については路線バスに対する補助金の半分を中央政府が負担することを提案する。マクリ市長は,議会で決定された委譲を司法問題化しようとしている。同市長が要求している補助金は憲法が定める資金に該当しない。」等述べた。


(6)29日,マクリ市長は,「如何なる法令も憲法より上位に置かれることはない。中央政府は対話することなく一方的に物事を決めている。我々は,憲法に則った合意に基づき,市民の安全が確保される形で,地下鉄の委譲を受けたい。また,我々は,公共交通部門のみならず,港湾や賭博等の運営権の委譲も受けたい。」等延べた。また,同日,ブエノスアイレス市議会は,中央政府に同市との対話を呼びかける宣言を採択した。
また,30日,マクリ市長が率いる共和国提案(PRO)のピネド連邦下院議員等は,公共交通部門に加えて,港湾,賭博の運営権等の中央政府からブエノスアイレス市への委譲を求める法案を議会に提出した。

 

3 公共事業省運輸長官の交替


 7日,スキアビ公共事業省運輸長官が辞任し,ラモス・サンタフェ州グラナデロバイゴリア市長がその後任として任命された。スキアビ長官は,辞任の理由として,(2月29日に)心疾患の手術を受けた関係で,一定期間の休養を要するとの診断を受けているためと説明した。同長官は,2009年の就任以来,SUBE(注:バス,地下鉄及び一般鉄道で利用されるIC乗車カード・システム)の導入と普及,アルゼンチン航空の経営難等の問題で苦戦してきており,最近はデビード公共事業相との関係も良好ではなくなっていた由。また,2月22日のオンセ駅での鉄道事故以降はその対応に追われ,同事故の担当判事より出国禁止の命令を受けていた。こうした状況の上に同長官自身の健康問題が重なった。デビード公共事業相が,フェルナンデス大統領の指示を受けて,スキアビ長官に辞任を求めた由。

 

4 ブドゥー副大統領の汚職疑惑


(1)2010年7月,民間の印刷会社Ciccone Calcografica社が破産したが,同年9月,バンデンブロエレ弁護士が代表を務める投資ファンドThe Old Fund社が同印刷会社の株式を買収して子会社化する形で,同印刷会社は再建した。この時,同社はCompania de Valores Sudamericanas(CVS)社と改名した。同社は,破産した際,国家社会保障機構(ANSES)等に対して債務を抱えていたが,同社の再建にあたり,政府は,その債務の返済について,低利息で長期の返済期間という,同社にとって極めて有利となる異例の返済計画を承認した。同社は,2010年12月には印刷会社としての創業を再開し,その後,2011年の選挙の際には「勝利のための戦線」(注:ペロン党キルチネル派の選挙連合)の投票用紙の印刷を受注するなどしており,今年に入ってからは,造幣局から100ペソ紙幣の印刷を受注するという話も浮上していた(注:未だ正式な契約には至っていなかった)。


(2)CVS社を買収したThe Old Fund社の代表であるバンデンブロエレ弁護士は,ブドゥー副大統領の友人であったと言われており,2010年,同副大統領(当時経済相)は,CVS社が政府に対して債務の返済を行うにあたり,同社にとって極めて有利となる異例の返済計画が承認されるよう,不正に便宜を図った疑いがある旨報じられた。また,同社が造幣局より100ペソ紙幣の印刷を受注するという話についても,ブドゥー副大統領は,同社がこれを受注できるよう,不正に便宜を図った疑いがある旨報道された。


(3)16日,上記疑惑に関する捜査のため,The Old Fund社の事務所及びバンデンブロエレ弁護士の自宅が家宅捜索を受けた。また,同日に経済省も立ち入り検査を受けた。

 

5 YPF社の石油採掘権の剥奪


 YPF社が石油採掘権を持つ鉱区の存在する州は,石油生産量の低下に伴い,採掘税収入が減少したことから,YPF社側の探鉱及び生産拡大への投資の不足を強く批判していた。3月初旬,チュブット州政府(注:各州政府が採掘権の許可権限を有する。)は,YPF社の同州における投資計画が不十分であるとして,同社が有していたチュブット州内の2鉱区の石油採掘権の剥奪を発表した。更に,31日,同州政府は,YPF社が有する同州内の全ての鉱区の採掘権剥奪を発表した。また,同様に,サンタ・クルス州,ネウケン州,メンドサ州,サルタ州及びリオ・ネグロ州もYPF社の鉱区採掘権剥奪を発表した。

 

6 教職員労組のストライキ


 1日,フェルナンデス大統領が,通常国会開会式での演説において,「教職員は1日の勤務時間が4時間で3か月の休暇があり,他の職業に比べ恵まれている」旨発言したことに対し,5つの教職員労組は,6日より48時間に亘ってストライキを行う旨発表した。6日,上記5つの教職員労組の呼びかけにより,ストライキが全国で実施され,1千万人の生徒に影響が出た模様。

 

7 労働総同盟(CGT)書記長選挙


 27日,CGT書記長選挙が7月12日に実施されることが決定した。また,モジャーノCGT書記長は,同選挙に出馬する旨発表した。

 

III 外交


1 フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題


(1)1日,フェルナンデス大統領は第130通常国会開会式での一般教書演説において,マルビナス諸島領有権問題に関する発言を行ったところ,概要以下のとおり。


(ア)マルビナス諸島領有権問題は,当国のみならず,中南米カリブ地域や世界を巻き込んだ闘いとなっており,我々としても一層真剣に取り組む必要がある。これまで国連決議を尊重させるために,国際機関や友好国をまわり,外交努力を尽くしてきている。また,我々はマルビナス諸島の自然資源を略奪する企業を各証券取引所に告発することを考えている。


(イ)しかし,亜英合意に基づき(南米から同諸島への)航空便を許可するなど,我々だけが約束を履行している状況が続いている。以前,自分は,国連総会の場において,同航空便の運航停止を示唆したことがあるが,それは領有権の回復どころか交渉すら実現できない状況に疲れ切り,惨めに感じていたからである。そして,今日,マルビナス諸島の軍事化があり,また,数々の挑発行為がなされている。2955人の島民の3人に1人が軍人という状況を「軍事化」と言わず,何というのだろうか。


(ウ)こうした状況を踏まえて,我々は,国連における我々の発言等をあらためて振り返っているところであるが,自分としては,現在,(チリの)LAN航空がリオ・ガジェゴ経由で月2便を飛ばしているが,この2便を3便に増やす,ただし,これをブエノスアイレス発にするという方向で交渉するよう外務大臣と駐英大使に指示したい。また,この為,アルゼンチン航空社長に対して,ブエノスアイレス発プエルト・アルヘンティーノ便を週3便用意するよう指示したところである。


(エ)いずれにせよ,我々としては国連決議が遵守されることを望んでいるのであり,我々として島民にせよ,島民でないにせよ,英国人にせよ,中南米域内諸国民にせよ,誰を傷つける意図も有していないということである。他方,自分は,植民地主義からの独立を戦った移民の子孫として,植民地主義の残滓を認める訳にはいかない。だからこそ,自分は6月14日に開催される国連非植民地化特別委員会会合に出席するつもりであり,是非,野党指導者の皆にも同行をお願いしたい。


(2)14日,上院において,亜の正当な権利を主張し,英国による同問題の「軍事化」を非難し,同問題を巡り中南米諸国から受けている支持に謝意を表する等の亜政府の立場を支持する「ウシュアイア宣言」が採択された。


(3)15日,ティメルマン外相は,「(マルビナス諸島の位置する)南大西洋での非合法な石油採掘活動に対する亜国による国内及び国外での法的行動計画」を発表した。同計画の内容は以下のとおり。


(ア)マルビナス諸島海域において非合法な石油採掘活動を既に行っており,過去に活動を停止するよう呼びかける文書を送付したものの現在も活動を継続している企業に対し,行政,民事及び刑事措置をとる。


(イ)非合法な石油採掘活動に関心を持ち得る企業に対し,行政,民事及び刑事措置がとられる可能性があることを警告する文書を送付する。また,非合法な石油採掘活動を行う企業の株主に対しても同様の文書を送付する。


(ウ)(非合法な石油採掘活動を行っている企業が上場している)証券取引所に対し書簡を送付して,マルビナス諸島の主権対立が存在する旨情報を提供し,(かかる石油採掘が)違法であることを通報する。また,非合法な石油採掘活動に関与する船舶の旗国及び海上設備の所属国に対しても警告の書簡を送付する。


(4)19日,ティメルマン外相は,上記「南大西洋での非合法な石油採掘活動に対する亜国による国内及び国外での法的行動計画」に基づき,ロンドン証券取引所社長及びニューヨーク証券取引所社長宛に,「Argos Resources Limited,Borders&Southern Petroleum PLC,Folkland Oil and Gas Limited及びRockhopper Exploration PLCの5社は,マルビナス諸島近くの亜大陸棚において,亜の承認なしに石油採掘活動を行っている。亜政府は,亜国内法に違反しているこれら5社に対して司法措置をとる旨通知する。貴社長には,これら5社に対し,上記石油採掘活動及び同活動に含まれるリスクに関する情報を貴社長及び市場に提供するよう要請してほしい。」等記した書簡を送付した。また,同書簡には,これら5社と直接或いは間接的に関係する企業のリストが別添された。また,20日,ティメルマン外相は,上記両証券取引所社長宛に,「上記5社の企業リスク情報を作成した評価会社は,これら5社の石油採掘活動が非合法であることによるリスクにつき,省略したか,不完全な形で投資家に情報提供した。」等記した書簡を送付した。また,同書簡には,企業リスク情報を作成した複数の評価会社の会社名も明記された。


(4)20日,フェルナンデス大統領は,公共事業の式典の場で,ペルー政府が英国護衛艦のペルー入港の中止を決定したとして,ペルー政府に対する謝意を表明した。

 

2 アゼルバイジャン


 1〜2日,ティメルマン外相は,貿易ミッションを率いてアゼルバイジャンを訪問した。2日,ティメルマン外相は,アリエフ大統領と会談し,2010年末に在亜アゼルバイジャン大使館が開設されたことにつき言及しつつ,先般フェルナンデス大統領が署名した,在アゼルバイジャン亜大使館の早期開設を命じる政令の写しを手交したほか,マルビナス諸島領有権問題に関する亜の立場を改めて説明した。また,ティメルマン外相は,メメディヤロフ外相と会談し,安保理をはじめとする国際場裡での協力の重要性,エネルギー分野等における二国間貿易関係強化の必要性等につき協議した。更に,ティメルマン外相は,ラシザデ首相と会談し,国際政治の現状と両国の内政状況につき意見交換を行った。

 

3 アンゴラ


 5〜7日,ティメルマン外相及びモレーノ経済省国内取引庁長官は,貿易ミッションを率いてアンゴラを訪問した。5日,ティメルマン外相は,シコティ外相と会談し,二国間アジェンダ,特に農業技術移転,食料生産,医薬品製造分野における二国間技術協力を強化する可能性,南大西洋における英国による軍事化,安保理改革,国際金融構造改革,G77等につき協議した。ティメルマン外相は,シコティ外相に対し,マルビナス諸島領有権問題に関するアンゴラの従来からの支持に謝意を表明した。また,7日,ティメルマン外相は,ドス・サントス大統領と会談し,南大西洋の軍事化を防止することの重要性,二国間貿易を強化する必要性等につき協議した。

 

4 モザンビーク


 8〜9日,ティメルマン外相は,モザンビークを訪問し,8日,バロイ外相と会談した。両外相は,マルビナス諸島領有権問題,二国間技術協力の可能性,国際機関改革,国際金融構造改革,気候変動問題等につき協議した。また,9日,ティメルマン外相は,ゲブーザ大統領と会談し,フェルナンデス大統領からの訪亜招待のメッセージを伝達したほか,マルビナス諸島領有権問題に関する亜の立場につき説明を行った。同説明を受け,ゲブーザ大統領は,亜に対する支持を表明した。なお,今次訪問は,1981年に両国外交関係樹立以来,亜外相として初めての訪問であった。

 

5 ブラジル


 13日,ティメルマン外相は,ブラジルを訪問し,パトリオッタ外相と会談した。両外相は,科学技術及び原子力分野における二国間の協力,非核地帯としての南米の重要性,英国による南大西洋の軍事化,次期UNASUR外相会合,次期米州サミット等につき協議した。パトリオッタ外相は,マルビナス諸島領有権問題に関し,亜の合法的権利へのブラジルの支持を再表明した。

 

6 ベルギー


 14日,ティメルマン外相は,レンデルス・ベルギー外相宛てに書簡を送付し,スイスでの交通事故に関し,亜政府及び国民のベルギー政府及び国民に対する弔意と連帯の意を表明した。

 

7 チリ


 15〜16日,フェルナンデス大統領は,チリを公式訪問し,16日,ピニェラ大統領と約3時間に亘り会談した。両大統領は,アンデス貫通鉄道トンネル建設計画の推進に向けた意思を再表明した。今次訪問の機に,相互学位認定,国境地域のコントロールに関する協力,チリ警察と亜国境警備隊の組織的犯罪取り締まりに関する協力,臓器移植に関する協力等に関する協定等への署名が行われた。その他,フェルナンデス大統領は,チリのコロマ独立民主同盟党党首から,チリ人元ゲリラ・アパブラサのチリへの引渡を要請する書簡を受け取ったほか,チリ企業関係者との会合を持った。当地各紙は,今次会談について,亜の輸入規制問題が中心テーマであった,先般亜政府が発表済みのマルビナス諸島海域で石油採掘活動を行う企業に対する法的措置につき協議された旨報じたが,亜外務省はこれらを否定するプレスリリースを発出した。

 

8 アラブ首長国連邦


 15日,アブダッラー・アラブ首長国連邦外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両外相は,二国間貿易・投資関係,原子力エネルギーの平和利用に関する二国間協力協定締結交渉の進捗状況,第1回二国間経済合同委員会会合の本年中の開催等につき協議した。また,ティメルマン外相は,マルビナス諸島領有権問題に関するアラブ首長国連邦の支持に謝意を表明した。

 

9 イスラエル大使館爆破事件20周年追悼式典


(1)12日,リーベルマン・イスラエル外相は,1992年のイスラエル大使館爆破事件での犠牲者を追悼するためにも,遅くとも2013年中にブエノスアイレスに新たなイスラエル大使館を建設したいと発表した。


(2)16日,イスラエル大使館爆破事件の20周年追悼式典が開催され,ブドゥー副大統領他亜政府関係者,アヤロン・イスラエル外務副大臣他イスラエル政府関係者,遺族等が同式典に参列した。

 

10 南米諸国連合(UNASUR)


 17日,ティメルマン外相は,パラグアイを訪問し,UNASUR外相会合に出席した。なお,同会合において,マルビナス諸島問題に関し,亜の合法的な権利への支持を表明するUNASUR外相会合宣言が採択された。

 

11 フランス


 20日,ティメルマン外相は,フランス・トゥールーズのユダヤ人学校における殺害事件を多民族の平和的共存への攻撃であるとして非難し,フランス国民及び遺族をはじめとするトゥールーズのユダヤ人社会への弔意と連帯の意を表明するとともに,包摂,寛容及び多文化主義といった価値の重要性を再表明した。

 

12 ベトナム


(1)23〜24日,ティメルマン外相は,ベトナムを訪問した。23日,ティメルマン外相は,ズン首相と会談し,ベトナムが,その解放の闘いにおいて,より公平な世界の構築に貢献したとして敬意を表したほか,多国間フォーラム及び地域フォーラムにおける両国の協力関係の強化が重要である旨述べるとともに,天然資源を守る必要性及び気候変動問題への緊急対応措置の必要性につき言及した。


(2)また,同日,ティメルマン外相は,ミン外相との会談し,2013年に外交関係樹立40周年を迎える両国の関係及び主要な国際テーマのレビューを行うとともに,南南協力・三角協力協定,国際経済交渉分野における協力協定,及び外交官学校間の協力協定に署名した。更に,ティメルマン外相は,植民地主義に対するベトナム国民の英雄的闘いに言及しつつ,マルビナス諸島領有権問題に関する亜の立場につき説明した。両外相は,主権問題が国際法に則り平和的交渉によって解決されるべきである点につき合意した。


(3)その他,ティメルマン外相は,ベトナム国会外交委員会メンバー及びマルビナス諸島領有権問題につき亜の立場を支持するグループとそれぞれ意見交換を行ったほか,ホーチミン墓廟を訪れた。

 

13 マリ


 24日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じて,マリでのクーデターを強く非難するとともに,人権の尊重,合法的な憲法秩序の早期回復及び選挙プロセスの継続を呼びかけ,マリ国民に対する強い連帯の意を表明した。

 

14 核セキュリティ・サミット


 25〜27日,ティメルマン外相は,核セキュリティ・サミットに出席するため韓国を訪問した。27日,同外相は,核セキュリティ・サミットにおいて演説を行ったところ,概要以下のとおり。なお,同外相は,今次訪問の機会に,韓国の金星煥・外交通商部長官,及びオランダのルッテ首相並びにローゼンタール外相とそれぞれ二国間会談を行った。


(1)核物質の物理的防護を確保する責任は各国にあり,亜においては,原子力規制庁が原子力分野の全てのアクションをコントロールしている。また,亜の輸出は,原子力供給国グループ(NSG)が定めた基準によって国がコントロールしている。また,亜は,IAEAが唯一無二の重要な役割を果たしていると確信しており,今次サミットにおいてIAEAの役割の強化が図られるべきである。


(2)亜が支持し積極的に参加している核テロリズムとの闘いによって,技術及び原子力エネルギーの平和利用という各国が持つ権利が制限されてはならない。核兵器の物理的防護を確保する責任は,核兵器供給国のみにある。


(3)発達した原子力産業及び不拡散へのコミットを有する亜は,ブラジルとともに,南大西洋の非核化のための中心的役割を果たしてきた。本日は,この非核地帯の軍事化について警鐘を鳴らしたい。最近,域外の大国(注:英国を指す)が,国連によって主権問題があるとされている南大西洋の地域(注:マルビナス諸島領域を指す)に原子力潜水艦を派遣しながら,非核地帯に核兵器を持ち込むことにはならないと述べている。しかし,これは,我々に核保有国の義務について考えさせる出来事である。時代錯誤な利益を擁護するために,核非保有国が,核兵器によって脅かさせるようなことがあってはならない。


(4)第1回核セキュリティ・サミットでの合意は,物理的防護に関する協力政策を立案するための重要なツールである。今次第2回サミットでは,当初の行動計画に沿った進展が図られるべきである。この意味で,幾つかの議論が我々を誤った方向に導いてしまうことを危惧している。まず,放射線源の物理的防護を強調する向きがあるが,これは我々の作業の焦点をずらすものであり,核物質の物理的防護こそが強調されるべきである。また,高濃縮ウラン及びプルトニウムの取り扱いに関する措置は,IAEAの保障措置と重複したものとなるべきではない。

 

15 要人往来


(1) 往訪

1〜2日 ティメルマン外相のアゼルバイジャン訪問(アリエフ・アゼルバイジャン大統領と会談)
5〜7日 ティメルマン外相及びモレーノ経済省国内取引長官のアンゴラ訪問(シコティ・アンゴラ外相と会談)
8〜9日 ティメルマン外相のモザンビーク訪問(バロイ・モザンビーク外相と会談)
13日 ティメルマン外相のブラジル訪問(パトリオッタ・ブラジル外相と会談)
13日 メイヤー観光相のブラジル訪問(観光フォーラムに出席)
15〜16日 フェルナンデス大統領のチリ訪問(ピニェラ・チリ大統領と会談)
16日 ロレンシノ経済相のウルグアイ訪問(IDB総会に出席)
17日 ティメルマン外相のパラグアイ訪問(UNASUR外相会合に出席)
23〜24日 ティメルマン外相のベトナム訪問(ズン・ベトナム首相及びミン・ベトナム外相と会談)
26〜27日 ティメルマン外相の韓国訪問(核セキュリティ・サミットに出席)
27日 プリチェリ国防相のチリ訪問(アラマン・チリ国防相と会談)


(2)来訪

7日 ロバオ・ブラジル鉱山エネルギー相(デビード公共事業相と会談)ロバオ・ブラジル鉱山エネルギー相(デビード公共事業相と会談)
13〜14日 モレノ米州開発銀行(IDB)総裁(フェルナンデス大統領と会談)
15日 アブダッラー・アラブ首長国連邦外相(ティメルマン外相と会談)
16日 メンデス・ブラジル農牧相(ジャウアル農牧相と会談)
19日 エド・ファスト・カナダ国際貿易相(デビード公共事業相と会談)


 

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