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2011年3月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2011年4月作成
在アルゼンチン大使館

 

T 概要


(1)内政面では,第129回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領が一般教書演説を行った。また,カタマルカ州知事選挙が実施されてキルチネル派候補が当選し,チュブット州知事選挙も実施された(結果は未確定)。サンス上院議員は,急進党の党内予備選挙に参加しない意向を表明した。モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は,マネーロンダリングへの関与疑惑を巡り,大規模な抗議デモ等を実施する旨予告した。また,新聞の印刷工場封鎖問題を巡り,報道の自由等に係る議論が再燃した。その他,トラック運転手業界の労使交渉において,賃上げ率等に係る協定が成立した。


(2)外交面では,チャベス・ベネズエラ大統領が訪亜して,フェルナンデス大統領と会談した。また,別所外務審議官が訪亜して,ティメルマン外相と会談した他,日亜政策協議に出席した。ティメルマン外相は,米国を訪問してG77+中国諸国大使会議に出席し,ウルグアイを訪問してハイチに関する南米外相会合に出席した他,コロンビアを訪問してオルギン同国外相と会談した。その他,亜において,第2回亜・ウルグアイ二国間閣僚会合が開催された。

 

TT 内政


1 フェルナンデス大統領の一般教書演説


 1日,連邦議会において,第129回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領は,約1時間半に亘り一般教書演説を行った。同演説の概要は以下の通り。


(1)経済全般:キルチネル前政権の下で築かれた経済発展のモデルは,2010年には確固たるものとなった。近年亜は,歴史上最も重要な,社会的包摂を伴う経済成長を実現している。昨年は,対民間債務の再編を行い,中銀の外貨準備が記録的な増加を遂げ,多くの州政府の債務が削減された他,輸入の大幅な増加にも拘わらず120億ドルを超える貿易黒字を生じさせた。なお,為替レートの切り下げを求めるセクターがあるが,我々はかかる圧力には屈しない。


(2)エネルギー:キルチネル前政権以降,亜のエネルギーの需要と生産は記録的な増加を遂げた。特に,37年間に及んだヤシレタ・ダム(水力発電所)の工事が完了したことは誇るべきことである。また,今年9月より,アトゥーチャTT原発が始動することは,エネルギー及び科学技術の発展の象徴と言える。


(3)教育:今年は,全ての州において規定の授業日数をこなし,その他,教育の質的向上のために必要な行事等を行うことができるよう,教員たちと共に努力しなければならない。なお,キルチネル前政権以降,多くの学校が新設され,教員の給与等が上昇した他,公教育が抱えていた多大な債務も片付き始めている。


(4)公共サービス:アルゼンチン航空は,民営化時代を象徴する企業であったが,再国有化以降,乗客が増加し,従業員数も増えた上,従業員の賃金も上昇した。


(5)労組:交通機関やその他の公共サービス等に関わる全ての労組は,(スト等の強硬手段による抗議活動によって)利用者や消費者を人質に取ってはならない。なぜなら,飛行機や電車やバス等を利用するのは労働者自身だからである。私は,労組の味方であり続けたいし,労働者を傷つける共犯者にはなりたくない。現政権の計画とモデルによって最大の恩恵を受けるのは労働者たちである。


(6)労働:キルチネル前政権発足時,非正規雇用の比率は50%であったが,現在はこれが35%まで低下しており,失業率についても,昨年末時点で7.3%まで低下している。


(7)社会保障:亜は,中南米で最も優れた社会保障制度を持っている。キルチネル前政権以降,年金の最低支給額が増額しており,また,失業者世帯向けの児童手当も非常に大きな好影響をもたらした。更に,今年5月1日より,同児童手当の支給対象を,妊娠3か月以降の妊婦にまで拡大することを決定した。


(8)治安:治安対策としては,治安省の創設や,連邦警察,国境警備隊,水上警察等への支出の拡大を行っている。また,連邦警察の人員について,事務方の人員を減らして,街路と警察署の人員を増加する旨決定した。しかし,治安に関する問題を,選挙目的のアピールに利用することはしない。また,パスポート,CEDULA,DNI等の身分証明書の扱いをすべて内務省の管轄下に置き,これらを刷新することを決定した。


(9)文化:キルチネル前政権以降,文化関連の輸出が増加している。本や映画やコンテンツ等の文化関連事業は,亜の競争力を高めている。


(10)観光:観光は経済政策の支柱の一つである。現在,観光収入はGDPの6.5%を成しており,雇用機会の増加,インフラ投資の増加等に寄与している。


(11)人権:現政権発足以降,人権侵害関連の起訴件数や有罪判決の件数が増加している他,人身売買から救出された被害者の数も増加している。


(12)外交:亜・ウルグアイ間の関係に支障を来していた問題(注:ウルグアイにおける製紙工場建設問題)は,もはや克服されたと言える。二国間の信頼醸成においてムヒカ・ウルグアイ大統領が成してくれた努力に感謝しなければならない。また,亜が,南米諸国連合(UNASUR)の初代事務局長を持ったことは名誉であった。その他,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に係る要求,及び,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決のための要求を,我々は継続していく。


(13)国会:今年の国会では,金融活動作業部会(FATF)の要求に応え,マネーロンダリング対策法案を成立させて欲しい。その他,我々は,今年の国会において,借地法に係る法案と養子縁組に係る法案を提出する。

 

2 議会の動向


 16日,下院本会議において,家庭内労働規則法案が審議されたところ,賛成票193の全会一致により可決され,上院に送付された。本法案は,家庭内労働者の有給休暇(産前産後休暇等),年末手当,解雇手当等を拡充するもの。

 

3 カタマルカ州知事選挙


(1)13日,カタマルカ州において,知事,副知事,州議会議員(上院16議席中8議席,下院41議席中20議席),市長(36の市),市議会議員等の選挙が実施された。


(2)知事選挙では,ブリスエラ候補(現同州知事)(急進党コボス派)とコルパッチ候補(上院議員)(ペロン党キルチネル派)の2候補が有力であったが,開票の結果,コルパッチ候補が当選した(得票率は,コルパッチ候補が47.3%,ブリスエラ候補が43.5%)。


(3)当選したコルパッチ候補は,「カタマルカ州をより良い州にしたい」,「ブリスエラ知事は州の諸問題を把握していなかった」等述べた他,「今次選挙は国政選挙にとっても重要である」,「フェルナンデス大統領の次期再選を望む」等述べた。


(4)選挙結果の判明を受け,ランダッソ内相,ウルトゥベイ・サルタ州知事等がカタマルカ州を訪問してコルパッチ候補の勝利を祝福した他,フェルナンデス大統領は,電話にて同候補に祝意を伝えた。ランダッソ内相は,「(コルパッチ候補の勝利は)カタマルカ州民がフェルナンデス政権の政策による恩恵を理解したことの現れであった」と述べた。


(5)選挙結果の判明を受け,ロサス急進党党首は,「今次敗北は,中央政府の強力な影響力のためであったというよりも,20年に亘り同じ顔ぶれであったカタマルカ州政府が交替の必要に迫られたためであった(注:同州知事のポストは,1991年以降急進党が占めており,ブリスエラ現知事も2003年より2期連続で同知事を務めていた)」と述べた。

 

4 チュブット州知事選挙


(1)20日,チュブット州において,知事,副知事,州議会議員(全27議席),市長(27の市),市議会議員等の選挙が実施された。


(2)知事選挙では,ブッシ候補(コモドロリバダビア市長)(ペロン党反キルチネル派)とエリセチェ候補(プエルトマドリン市長)(ペロン党キルチネル派)の2候補が有力であったが,暫定集計において,ブッシ候補が当選した旨発表された(得票率は,ブッシ候補が37.8%,エリセチェ候補が37.2%(開票率98.85%時点))。


(3)この発表を受け,ブッシ候補は,「我々は,キルチネル派に勝利することができるということを示した」と述べて勝利を宣言した。また,ダス・ネベス・チュブット州知事(ペロン党反キルチネル派)は,「これは第一歩である。社会の人々に対し,変化は可能であるということを立証した」と述べ,ブッシ候補の勝利を祝福した。


(4)しかし,エリセチェ候補は,今次選挙の過程で不正な操作があったとして,上記開票結果を否定し,自分が勝利したと宣言した。また,フェルナンデス首相は,「(ブッシ候補側は)負けそうになったため,不正で以て勝利した」と述べ,ランダッソ内相も,「我々は,不正に繋がる操作があったと疑っている」と述べた。また,22日,フェルナンデス大統領は,大統領府を訪問したエリセチェ候補に対し,不正があったという同候補の主張を支持する旨述べた。


(5)キルチネル派の要求を受け,23日以降,上記選挙の再集計が実施された。また,一部の投票所では,投票が公正に実施されなかった可能性があるとして,再投票の実施が検討された。

 

5 ブエノスアイレス市長選挙の動向


 29日,マクリ・ブエノスアイレス市長は,次期ブエノスアイレス市長選挙(注:副市長及び市議会議員の選挙も含む)の実施日を7月10日とし,決選投票が実施される場合には同31日に実施する旨発表した。同市長は,同選挙の実施日を国政選挙の実施日(10月23日)とは別日にしたことについて,「国政選挙とは異なる場で,市に特有の問題を議論するという,ブエノスアイレス市選挙が常に抱いてきた理念を尊重した」と述べた。

 

6 急進党の動向


(1)29日,サンス上院議員(急進党)は,次期大統領選挙に出馬する意向である旨改めて述べた上で,4月30日に予定されていた急進党の党内予備選挙(注:サンス上院議員及びアルフォンシン下院議員の2名が参加する予定であった)には参加せず,8月14日に予定されている公式な予備選挙に参加するという意向を表明した。この決定について,同上院議員は,「3か月間全国を遊説した末,国民の間では,4月30日の投票への意識は高くないということに気づいた。急進党の大統領候補を選出する選挙には,より多くの有権者に参加してもらいたい」と述べた。


(2)サンス上院議員の上記決定を受け,ロサス急進党党首(アルフォンシン派)は,「サンス上院議員は約束に背き,急進党全体の利益を害した」,「一方の候補(サンス上院議員)が党内予備選挙を辞退するならば,急進党は,もう一方の候補(アルフォンシン下院議員)を公式な大統領候補として宣言するだろう」等述べた。

 

7 モジャーノCGT書記長のマネーロンダリング関与疑惑問題


(1)17日,モジャーノCGT書記長及び同書記長と密接な関係にあると言われるコベリア社(ゴミ収集業者)がマネーロンダリングに関与していたという嫌疑について調査しているスイスの検事が(注:同検事は,1月24日,コベリア社社長らが開設していたスイスの銀行口座を凍結していた),モジャーノ書記長及びその家族の関与する亜国内の訴訟についての情報を提供するよう,亜司法府に要求した。


(2)これを受け,CGTは,フェルナンデス政権がスイスの判事による上記調査を後押ししているとして同政権を批判した他,モジャーノ書記長とマネーロンダリングの関連について報じた亜マスメディアを批判した。そして,モジャーノ書記長は,21日にブエノスアイレス市において大規模な抗議デモ等を実施する旨予告した。


(3)18日,モジャーノ書記長は,予告していた上記抗議デモ等を中止する旨発表した。同書記長がデモ等を中止した理由として,当地各紙は,フェルナンデス政権がモジャーノ書記長を説得した他,デモ等の実施についてCGT内各セクターの同調が十分に得られなかったためであったと報じた。

 

8 クラリン紙及びラ・ナシオン紙の印刷工場封鎖問題


(1)27日未明より,クラリン紙及びラ・ナシオン紙の印刷工場の従業員らが,モジャーノ派労組の支援を受け,同工場の入口等を封鎖した。この工場封鎖は,同日の両紙の配給に大きな支障を来し,クラリン紙は,同日の発行の中止を余儀なくされた。ランダッソ内相は,今回の工場封鎖は,報道の自由に対する攻撃ではなく,労働条件の改善等を求める労働者らの抗議活動であった旨述べた。他方,クラリン・グループは,「今回の工場封鎖において,連邦警察が適切な行動を取らなかったことは明らかであり,これは,連邦政府が,問題解決のための政治的命令を下さなかったことを意味する」とするコミュニケを発出した。また,同グループは,昨年12月及び今年1月に,オリベラ連邦判事が,フェルナンデス政権に対し,新聞の配給に支障を来すような行動を防止するよう命じる判決を下していたにも拘わらず,同政権がその命令を遵守しなかったとして,同政権を批判した。


(2)28日,下院の野党議員らは,表現の自由委員会,憲法委員会及び司法委員会の合同委員会を30日に開催し,ガレ治安相を召喚して,上記工場封鎖を防止するために連邦警察を派遣しなかった理由を説明するよう求める旨決定した。また,オリベラ連邦判事も,ガレ治安相に対し,上記判決を遵守しなかった理由を説明するよう求めた。その他,カトリック教会も,上記工場封鎖を批判し,表現の自由を保証するよう求めるコミュニケを発出した。他方,ガレ治安相は,今回の工場封鎖は労働者らの抗議活動であったとして,「労働者の要求を,報道の自由への攻撃とみなすのは不適切である」とするコミュニケを発出した。


(3)30日,ガレ治安相は,同日に下院で開催予定であった上記合同委員会について,「(野党の)下院議員らは,クラリン・グループを被害者扱いしようとしている。これはマスメディアのための見せ物である」と述べ,同合同委員会に出頭しなかった。同日,上院では,上記工場封鎖に対する非難を宣言する決議案が,全会一致で可決された。他方,ガレ治安相を上院に召喚して説明を求めるための決議案も審議されたが,与党の反対により否決された。


(4)31日,ランダッソ内相は,大統領府において,デッセイン亜ジャーナリズム機関協会(ADEPA)会長と会談した(アバル・メディナ首相府報道長官同席)。同会談において,ランダッソ内相は,上記工場封鎖を非難する立場を表明したが,同時に,本件は労働者らの抗議活動であり,フェルナンデス政権は労働者らの抗議活動を鎮圧しないという政策を維持している旨説明した。

 

9 労働問題


(1)30日,大統領府において,フェルナンデス大統領は,モジャーノCGT書記長(トラック運転手労組書記長)及びモラレス亜貨物輸送会社連盟(FADEEAC)会長と会談した(トマダ労働相及びブドゥー経済相同席)。同会談において,モジャーノ書記長及びモラレス会長は,フェルナンデス大統領に対し,労使交渉の結果,今年のトラック運転手業界の賃上げ率を24%とする等の協定が成立した旨報告した。


(2)同会談の後,トマダ労働相は記者会見において上記協定について発表し(ブドゥー経済相,モジャーノ書記長及びモラレス会長同席),24%の賃上げ率については,7月までに12%,11月までに更に6%,来年3月までに更に6%として,段階的に行われる旨説明した。また,同相は,バケーション期間に労働者に対し一日69ペソが上乗せして支払われることも合意された旨述べた。同相は,「交渉は簡単なものではなかったと承知しているが,合意に至ったのであるから,労使協定の有効性を強調しなければならない」と述べた。

 

III 外交


1 日本


(1)1〜4日,東京において開催されたFOODEXに,亜は独自のパベリオンを設置し,日本市場への進出を目指す亜企業がワイン等を紹介した。


(2)11日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じて,東日本大震災に関し,弔意と連帯の意を表明するとともに,ホワイト・ヘルメット委員会(注:国連の下で活動する当国緊急援助隊)による協力をオファーした。また,12日,フェルナンデス大統領は,菅総理に宛てたメッセージにおいて,親愛と連帯の意を表明するとともに,ホワイト・ヘルメット委員会による協力をオファーした。


(3)28〜29日,亜外交官学校において,第2回日亜交流シンポジウムが開催され,両国の有識者が出席し,二国間文化交流,俳句,デジタル時代の中のメディアの役割,現代美術と社会等のテーマにつき議論が行われた。


(4)29〜31日,別所外務審議官が訪亜し,30日,ダロット筆頭外務副大臣とともに日亜政策協議を行ったほか,ティメルマン外相と会談した。

 

2 ナイジェリア


 1日,ティメルマン外相は,訪亜したアジュモゴビア・ナイジェリア外相と会談し,コートジボワール情勢及びアフリカ情勢につき意見交換したほか,政策対話に関する覚書及び技術協力協定に署名した。また,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するナイジェリアの従来からの支持に謝意を表明した。

 

3 G77+中国


 4日,ティメルマン外相は,ニューヨークを訪問し,G77+中国諸国大使会合の議長を務めた。同会合には,潘基文国連事務総長も出席した。同会合において,ティメルマン外相は,亜は,多国間分野における発展途上諸国間の協力という大きな責任の下にG77+中国の議長国に就任した等述べた。

 

4 リビア


(1)4日,ティメルマン外相は,在リビア大使館の閉鎖と,亜外務省ホワイト・ヘルメット委員会(注:国連の下で活動する当国緊急援助隊)による人道支援をチュニジアとの国境地帯において実施することを発表した。


(2)9日,亜外務省は,プレスリリースを通じ,国連難民高等弁務官事務所(ACNUR)からの要請を受け,チュニジアとの国境地帯にロジ専門家チームを派遣する旨発表した。同チームは20日にリビアに到着して活動を開始した。


(3)29日,ティメルマン外相は,ACNURからの要請を受け,亜外務省ホワイト・ヘルメット委員会による人道支援活動期間を,予定されていたよりも15日間延長し4月17日までとすることに決定した。

 

5 中国


(1)9日,ティメルマン外相は,ミッションを率いて訪亜した李金章(Li Jinzhang)中国外交部副部長と会談した。李副部長は,両国がG77+中国,国連及びWTOにおいて多くの共通点を有しているとして,二国間関係が最良の時を迎えていることへの中国政府の満足の意を表明した。また,同副部長は,G20において,両国が発展途上国の利益擁護のために協働している点を強調したほか,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する亜の立場への中国の従来からの支持を表明した。ティメルマン外相は,「1つの中国」への亜の支持を表明した。


(2)上記会談後,ティメルマン外相は,同副部長及び同行の中国ミッションとの昼食会を主催した。同昼食会には,亜側から,ジョルジ産業相及びドミンゲス農牧相が同席した。同昼食会において,貿易投資関係のレビューが行われ,双方は,2010年に130億米ドルの最高額に達した二国間の貿易レベルを強調するとともに,貿易関係の更なる強化につき分析した。


(3)同日午後,第11回亜・中国政策協議が実施され,ダロット筆頭外務副大臣が亜側議長を務めた。同協議では,二国間及び多国間の重要テーマにつき議論がなされ,特に科学技術,原子力,宇宙及び新たなエネルギーの共同開発の分野における協力の可能性が強調された。多国間分野においては,国際機関選挙,環境テーマ,国連改革及びIMOやICAOといった国際機関におけるテーマについての分析が行われた。地域的テーマについては,北アフリカの状況についての分析がなされた他,中国側から地域統合プロセス,特にUNASURに対する高い関心が表明された。


(4)4月26から27日,北京における亜・中国経済合同委員会会合の開催が決定した。また,ティメルマン外相は,中国訪問招待を受けて,2011年に訪問する旨約した。

 

6 フィンランド


 9日,ティメルマン外相は,訪亜したバユリュネン・フィンランド貿易開発相と会談し,二国間の貿易関係の強化,特にハイテク分野におけるフィンランドの対亜投資増加の可能性等につき協議した。また,バユリュネン貿易開発相は,亜のG77+中国の議長国就任につき,発展途上国にとって重要であるとして関心を示した。

 

7 ハイチ


 10日,ウルグアイを訪問したティメルマン外相は,ウルグアイ,ボリビア,ブラジル,チリ,コロンビア,エクアドル,パラグアイ及びペルーの外相とともに,国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の状況とハイチ情勢につき協議した。

 

8 ウルグアイ


(1)16日,亜において,第2回亜・ウルグアイ二国間閣僚会合が開催され,ティメルマン外相及びアルマグロ・ウルグアイ外相が議長を務めた。また,亜側からはジョルジ産業相,メイヤー観光相,デビード公共事業相,アラク司法相,ガレ治安相,トマダ労働相,キルチネル社会開発相,シレオニ教育相,バラニャオ科学技術相等,ウルグアイ側からはボノミ内相,クレイメルマン工業エネルギー鉱業相,ピンタド運輸公共事業相,エルリッチ教育文化相,ビグノリ社会開発相,アゲレ農牧相,オレスケル厚生相,ムスレラ住宅土地整備環境相等が出席した。


(2)上記会談で扱われた主要なアジェンダは以下のとおり。


(ア)特別なプロジェクト等を扱い二国間関係の新たな体制を形成するための亜・ウルグアイ統合委員会(CIAU)の創設
(イ)ラプラタ川及びウルグアイ川の浚渫工事
(ウ)両国領事の定期会合等,両国の領事業務における協力体制の形成
(エ)入国審査等の国境管理体制の効率化
(オ)二国間交通アクセス改善のための両国共同研究の実施
(カ)(二国間国境地帯にある)サルト・グランデ水力発電所の整備,及び(ラプラタ川の河上の)液化天然ガスの再ガス化プラント建設計画の推進
(キ)1998年に締結された二国間文化協力協定の更新
(ク)学位相互承認協定に係る交渉
(ケ)労働を通じた社会参画等の社会政策の実施
(コ)2030年ワールドカップの亜・ウルグアイ両国共同開催に向けた亜サッカー協会及びウルグアイ・サッカー協会の共同イニシアティブを支持するための二国間委員会の設置


(3)上記会談において署名された協定等は以下のとおり。


(ア)(各種)二国間委員会の設置に係る規則を定める協定
(イ)人道支援の分野での協力促進のための二国間の交換公文に係る協定
(ウ)再生可能エネルギーに係る二国間センター開設のための議定書
(エ)食糧及び農業に係る二国間センター開設のための議定書
(オ)BIOTECSUR(注:メルコスールによるバイオテクノロジー関連のプロジェクト)を強化するための,亜科学技術省及びウルグアイ教育文化省間の同意書
(カ)(科学技術の分野における)EUとの協力促進のための,亜科学技術省及びウルグアイ教育文化省間の同意書
(キ)治安問題における協力のための覚書
(ク)国際組織犯罪分野における亜治安省及びウルグアイ内務省間の協力のための覚書

 

9 コロンビア


 14日,ティメルマン外相はコロンビアを訪問し,オルギン・コロンビア外相と会談した。両外相は,二国間関係の強化,及び両国の共通関心分野につき,各分野毎の会合を開催することで合意した。また,ティメルマン外相は,同会合に同席したメヒーア元コロンビア外相に対し,南米諸国連合(UNASUR)事務局長任命への祝意を表明した。

 

10 英国


 16日,上院本会議において,亜政府の許可なしに亜大陸棚において地下資源採掘活動等を行うことを禁止するための法案が審議されたところ,賛成票39の全会一致により可決され(注:昨年6月下院において可決済),法律として成立した。本法案は,英国によるフォークランド(マルビナス)諸島周辺海域における地下資源採掘活動を禁じることを目的として推進されたもの。

 

11 イスラエル


(1)16日,下院本会議において,メルコスール・イスラエル間自由貿易協定(2007年締結)を承認するための決議案が審議されたところ,賛成票144,反対票8,棄権10により可決され(注:昨年4月上院において可決済),同協定が正式に発効することとなった。


(2)17日,ティメルマン外相は,在亜イスラエル大使館爆破事件19周年追悼式典において演説し,亜政府は公平な裁判を求め続ける,昨年9月の国連総会においてフェルナンデス大統領がイラン当局に対してイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関与したとして(亜司法当局により)告発されたイラン人の裁判を第3国で実施することを提案したことからも分かるように,亜はテロを断固として拒絶し,犯罪人を無罪放免にはしない国である等述べた。

 

12 ベトナム


 22日,ダロット筆頭外務副大臣は,訪亜したDoan Xuan Hungベトナム外務副大臣と会談した。また,ベトナム副大臣は,二国間経済・貿易交渉分野における協力覚書の枠組に基づき,複数の亜政府高官とも会談した。

 

13 ロシア


 21〜23日,クレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)は,亜企業関係者を率いてロシアを訪問し,第9回亜・ロシア政府間経済貿易協力委員会会合に出席した。同会合では,今後5年間で二国間貿易額を50億米ドルに増加させるという目標が打ち立てられたほか,経済・貿易・投資,植物検疫,エネルギー,教育及び科学技術分野における作業グループがそれぞれ設置された。また,多国間分野に関し,WTOやG20の枠組における議論や交渉状況につき意見交換がなされた。

 

14 ベネズエラ


(1)29日,チャベス・ベネズエラ大統領が訪亜し,フェルナンデス大統領と会談した後,両大統領は共同記者会見を行った。同会見において,チャベス大統領は,(ア)二国間関係の強化を継続することが必要である,(イ)これ以上の戦争や対立等が生じないよう,「平和の区域」としての南米を確固たるものにしなければならない,(ウ)亜では,民主主義と平和の中で,所得格差の改善がみられた等述べた。フェルナンデス大統領は,(ア)今次会談は二国間関係の強化に繋がる有意義なものであった,(イ)亜国民の努力とフェルナンデス政権の政策の結果,現在の亜では,所得格差が1982年以降最も小さくなっている,(ウ)南米諸国民は,国際法に則り,平和への意志を持って,あらゆる相違を解決するために偉大な努力を行ってきた等述べた。同会見の後,両大統領は,亜国営造船会社Tandanor社の造船所を訪問したほか,フェルナンデス大統領は歓迎昼食会を主催した。


(2)上記訪問の機に両国政府により署名された文書は以下のとおり。

 

(ア)Tandador社製のタンカー16隻(8300万ドル相当)をベネズエラ石油公社(PDVSA)向けに輸出するための協定

(イ)亜からベネズエラへの自動車の輸出に関し,1万台の輸出枠を付与する協定
(ウ)亜における液化天然ガス再ガス化プラントの建設開始に係る議事録
(エ)亜からベネズエラに,粉ミルク,インゲンマメ,鶏肉,大豆油,米,小麦,トウモロコシ等の食料品(5億2000万ドル相当)を輸出するための協定
(オ)観光促進のための協調覚書
(カ)観光分野における行動計画
(キ)医療部門における協力に係る議事録
(ク)二国間関係の強化等を示す,両国大統領による共同宣言
(ケ)第3回二国間ハイレベル委員会会合議事録

 

15 チェコ


 30〜31日,クラウス・チェコ大統領がシュワルツェンベルグ・チェコ外相とともに訪亜した。31日,フェルナンデス大統領は,クラウス大統領と会談し,メルコスール・EU間自由貿易協定締結交渉,二国間貿易チャンス等につき協議した後,歓迎昼食会を主催した。また,同日,ティメルマン外相は,シュワルツェンベルグ外相と会談し,人権擁護政策,科学技術協力の強化,二国間貿易関係の強化,メルコスール・EU間自由貿易協定締結交渉,G20等につき協議した。

 

16 イタリア


 31日〜4月1日,フラッティーニ・イタリア外相が企業関係者を率いて訪亜し,ティメルマン外相とともに第2回亜・イタリア経済委員会会合の閉会式に出席したほか,第1回亜・イタリア政策協議会合の議長を務めた。同政策協議会合においては,国連改革,G20,亜が議長国を務めるG77+中国,平和維持活動,北アフリカ情勢,メルコスール・EU間自由貿易協定交渉等につき協議された。また,同政策協議会合の場で,原子力分野及び科学技術分野における協力を主とする計12件の協定等への署名が行われた。

 

17 要人往来


(1)往訪

4日 ティメルマン外相の米国訪問(G77+中国諸国大使会合に出席)
10日 ティメルマン外相のウルグアイ訪問(ハイチに関する南米外相会合に出席)
14日 ティメルマン外相のコロンビア訪問(オルギン・コロンビア外相と会談)
21〜23日 クレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)のロシア訪問(第9回亜・ロシア政府間経済貿易協力委員会会合に出席)
25〜26日 ブドゥー経済相のカナダ訪問(IDB年次総会に出席)

 

(2)来訪

1日 アジュモゴビア・ナイジェリア外相(ティメルマン外相と会談)
9日 李金章(Li Jinzhang)中国外交部副部長(ティメルマン外相と会談)
9日 バユリュネン・フィンランド貿易開発相(ティメルマン外相と会談)
16日 アルマグロ・ウルグアイ外相(第2回亜・ウルグアイ二国間閣僚会合に出席)
22日 Doan Xuan Hungベトナム外務副大臣(ティメルマン外相と会談)
29日 チャベス・ベネズエラ大統領(フェルナンデス大統領と会談)
29〜31日 別所外務審議官(日亜政策協議に出席,ティメルマン外相と会談)
30〜31日 クラウス・チェコ大統領(フェルナンデス大統領と会談)
31日〜4月1日 フラッティーニ・イタリア外相(第1回亜・イタリア政策協議に出席)

 

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