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2011年5月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2011年6月作成
在アルゼンチン大使館

 

T 概要


(1)内政面では,ブエノスアイレス市選挙の候補者登録が行われ,サンタフェ州選挙の予備選挙が実施された他,チュブット州及びラリオハ州において知事等が選出された。また,フェルナンデス大統領が労働総同盟(CGT)に批判的な発言を行い,CGTは同大統領への各種要求を繰り返した。ペロン党の会合では,同大統領の次期再選を支持することが合意された。その他,賃上げを求めるサンタクルス州の教職員労組がストライキを継続して同州政府との対立が深まり,また,人権団体「5月広場の母たち」が運営する住宅建設事業における補助金の不正な扱い等の疑惑が報じられた。


(2)外交面では,フェルナンデス大統領がメキシコを訪問してカルデロン同国大統領と会談した他,イタリアを訪問して同国統一150周年祝賀式典に出席した。ティメルマン外相は,バチカンを訪問して故法王ヨハネ・パウロ2世の列福式に出席した後,グローバル・ガバナンス及び安保理改革会合に出席するためイタリアを訪問した。また,同外相はチリを訪問して亜・チリ統合委員会州知事会合に出席し,ロシアを訪問してラヴロフ同国外相と会談した他,経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会に出席するためフランスを訪問した。

 

TT 内政


1 労働総同盟(CGT)関連


(1)2日,大統領府において,フェルナンデス大統領(ブドゥー経済相及びトマダ労働相同席)は,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長を始めとするCGT幹部ら(計35名)と会談した。同会談において,フェルナンデス大統領は,フェルナンデス政権の政策モデルを尊重して労使交渉を円滑化するようCGTに要求した。また,同大統領は,今後はCGTとの会談をより頻繁に設ける旨述べた。他方,CGT側は,企業利益分配法案の成立,健康保険会社規制法案(下記9(2)参照)の成立を含む医療制度全般の改革,労組が運営する健康保険事業に対し政府が負っている債務の返済等を要求した。


(2)10日,フェルナンデス大統領は,大統領府で行った演説において,「私の再選を支持するよりも,物事を平穏に解決するようにしてもらいたい」旨述べた。また,12日,同大統領は,ブエノスアイレス州で行った演説において,一部の労組が「既得権益集団」と化しつつある旨述べた。これらの発言は,同大統領がCGTを批判したものとして報じられた。


(3)19日,ブエノスアイレス市において,CGT執行部の会合が開催された。同会合において,モジャーノ書記長は,フェルナンデス大統領の上記批判について,「我々はフェルナンデス大統領を尊重しよう。同大統領(の批判)に応酬するようなことをしてはならない」旨述べた。他方,賃上げ,所得税課税最低限の更なる引き上げ,企業利益分配法案の成立,及び,労組が運営する健康保険事業に対し政府が負っている債務の返済の要求については,今後とも活発に行っていく姿勢が確認された。

 

2 ペロン党の動向


(1)19日,ブエノスアイレス州において,ペロン党全国執行委員会の会合が開催され,シオリ副党首(同州知事)以下計55名が出席した。同会合において,2003年以降のキルチネル派政権の業績を再確認し,フェルナンデス大統領の次期再選を支持する旨明記した文書が採択された。


(2)28日,ペロン党全国大会が開催された。同大会において,本年の各種選挙のための選挙連合の形成について協議された他,フェルナンデス大統領の次期再選を支持することが全会一致で合意された。

 

3 ブエノスアイレス市選挙関連


(1)11日,7月10日に実施されるブエノスアイレス市選挙(市長・副市長,市議会議員等の選挙)のための選挙連合の登録が締め切られ,以下の選挙連合が登録された。


(ア)「共和国提案(Propuesta Republicana)」:共和国提案及びその他2政党。
(イ)「勝利のための戦線(Frente para la Victoria)」:ペロン党キルチネル派及びその他9政党。
(ウ)「南プロジェクト(Proyecto Sur)」:南プロジェクト,社会党,GEN及びその他4政党。
(エ)「市民連合(Coalicion Civica)」:市民連合及びその他2政党。
(オ)「新たな会合(Nuevo Encuentro)」:4政党。
(カ)「左派・労働者戦線(Frente de Izquierda y de los Trabajadores)」:労働者党(Partido Obrero)及びその他2政党。
(キ)「市のための結集戦線(Frente Junto por la Ciudad)」:4政党。
(ク)「市民たちの戦線(Frente de los Ciudadanos)」:5政党。


(2)21日,同選挙に出馬する候補者の登録が締め切られ,各勢力の候補者が登録された。主要勢力の市長候補及び副市長候補は以下の通り。


(ア)「共和国提案」


正:マウリシオ・マクリ・ブエノスアイレス市長
副:マリア・エウヘニア・ビダル・ブエノスアイレス市社会開発相


(イ)「勝利のための戦線」


正:ダニエル・フィルムス上院議員
副:カルロス・トマダ労働相


(ウ)「南プロジェクト」


正:フェルナンド・ソラナス下院議員
副:ホルヘ・セルセル・ブエノスアイレス市議会議員


(エ)「市民連合」


正:マリア・エウヘニア・エステンソロ下院議員
副:フェルナンド・サンチェス・ブエノスアイレス市議会議員


(オ)急進党


正:シルバナ・ヒウディチ下院議員
副:クラウディオ・アウググリアロ元急進党ブエノスアイレス市支部代表


(カ)拡大ブエノスアイレス党(Mas Buenos Aires)


正:ホルヘ・テレルマン前ブエノスアイレス市長
副:ディエゴ・クラベッツ・ブエノスアイレス市議会議員


(キ)連邦結束党(Convergencia Federal)


正:リカルド・ロペス・ムルフィ元経済相
副:アナ・パウレス弁護士

 

4 サンタフェ州選挙の予備選挙


(1)22日,サンタフェ州選挙(知事・副知事,州議会議員,市長及び市議会議員の選挙)のための予備選挙が実施された。


(2)同選挙の結果,社会党においては,ビネル同州知事の擁立するボンファッティ候補(同州官房長官)が,バルレッタ候補(同州サンタフェ市長),ジウスティニアーニ候補(同党党首)等を破って知事候補に選出され,キルチネル派においては,ロッシ候補(キルチネル派下院議員団長)が,ペロッティ候補(同州ラファエラ市長),ビエルサ候補(元外相)等を破って知事候補に選出された。なお,得票数は,社会党のボンファッティ候補が約29万票を得て第1位,キルチネル派のロッシ候補が約27万票を得て第2位,共和国提案(PRO)が擁立しているトレス候補(俳優)が約23万票を得て第3位であった。

 

5 チュブット州知事選挙のやり直し


(1)結果が未確定となっていたチュブット州知事選挙について(注:同州知事選挙は3月20日に実施され,ブッシ候補(コモドロリバダビア市長)(ペロン党反キルチネル派。ダス・ネベス同州知事による擁立)が当選した旨発表されたが,エリセチェ候補(プエルトマドリン市長)(ペロン党キルチネル派)等のキルチネル派は,同選挙の過程で不正な操作があったとして,発表された開票結果を否定していた。これを受け,同月23日より再集計が行われたが,キルチネル派は,一部の投票所において投票のやり直しを行うよう要求していた),9日,同州最高裁は,29日に6箇所の投票所において投票のやり直しを行うとする判決を下した。


(2)同判決に基づき,29日,6箇所の投票所において,ブッシ候補及びエリセチェ候補の2名を候補とする知事選挙が改めて実施された。同選挙では,エリセチェ候補がブッシ候補よりも多くの票を獲得したが(エリセチェ候補が738票,ブッシ候補が687票),合計得票数においてブッシ候補を上回るには至らなかったため(合計得票数は,ブッシ候補が99,367票,エリセチェ候補が98,983票),最終的にブッシ候補の当選が確定した。


(3)同結果を受け,ダス・ネベス知事は,「我々はキルチネル派に2度勝利した」,「(キルチネル派による)誹謗中傷が続いていたが,真実は必ず欺瞞に勝るのである」等述べた。他方,ブッシ候補は,「3月20日以来の陰鬱な状況に終止符を打った」,「この土地(チュブット州)を好機の土地にするための挑戦を続けよう」等述べたが,キルチネル派に対する直接的な批判等は避けた。


(4)エリセチェ候補は,上記結果を受け,「状況を逆転するには至らなかった」と述べ,ブッシ候補の当選を認めたが,3月の選挙後に実施された再集計の方法に不満を呈し,「(実際には)キルチネル派が勝利していたと確信している」と述べた。

 

6 ラリオハ州選挙


(1)29日,ラリオハ州において,知事,副知事,州議会議員(36議席中19議席),市長(18の市),市議会議員等の選挙が実施された。


(2)知事選挙には,ベデル・エレラ候補(現同州知事)(ラリオハ人民戦線,キルチネル派),マルティネス候補(下院議員)(急進党),マサ候補(前同州知事)(ペロン党反キルチネル派)等が出馬していたが,開票の結果,ベデル・エレラ候補の当選(再選)が決定した(得票率は,ベデル・エレラ候補が67.2%,マルティネス候補が19.6%,マサ候補が10.9%)。


(3)当選したベデル・エレラ候補は,「州民が政権に賛同したのだ。今次勝利は国家の傘の下で達成したものであり,フェルナンデス大統領の勝利でもある」,「得票率が60%に達したのは歴史的なことだ」等述べた。


(4)今次結果を祝福するためにラリオハ州を訪問したランダッソ内相は,メキシコ訪問中のフェルナンデス大統領に今次選挙結果を電話で報告した上で,フェルナンデス政権からの祝意をベデル・エレラ候補に伝えた。また,同内相は,「(中央)政府が実施している政策が認められたのである」等述べた。


(5)落選したマルティネス候補及びマサ候補は,今次選挙においてキルチネル派が票の不正操作等を行っていたと主張した。これに対し,ベデル・エレラ候補は,「平和的で秩序立った模範的な選挙であった」と述べた。

 

7 サンタクルス州の教職員労組のストライキ


(1)11日,サンタクルス州政府は,同州の教職員労組によるストライキが長期化していることを受け(注:同労組は,4月12日より賃上げを要求してストライキを開始し,同月25日より,同州内の複数の石油採掘施設の出入口を封鎖するデモを行っていた),同ストライキにより授業が中断されている学校に代理の教職員を派遣して授業を再開する旨の政令を公布した。これに対し,ストライキを実施している教職員側は,ストライキ権を侵害する措置であり違憲であるとして強く批判した。15日,同教職員労組が会合を開催し,今後とも上記ストライキを継続する旨決定した。他方,同日,ペラルタ同州知事(ペロン党キルチネル派)は,同労組の賃上げ要求には応じられないとの意向を示した。


(2)23日,同州裁判所のケリン判事は,同労組による石油採掘施設の出入口の封鎖を解除させるよう国境警備隊に命じた。これを受け,国境警備隊が派遣されたが,同封鎖は解除されなかった。


(3)31日,上記ストライキにより授業が中断されている学校の生徒の父兄らが,同教職員労組に対し,同ストライキを中止して授業を再開するよう要求するため,道路封鎖による抗議デモを実施した。

 

8 「5月広場の母」の住宅建設事業を巡る問題


(1)25日,人権団体「5月広場の母」が政府の補助金を受けて運営している住宅建設事業の運営責任者を務めていたショクレンデル弁護士が同責任者のポストを辞任した。当地各紙は,ショクレンデル弁護士の辞任の背景には,同事業の運営を巡る同団体と同弁護士との間の対立があった旨報じた。


(2)26日,ヒル・ラベドラ急進党下院議員団長等は,上記事業において,政府から支給された補助金が不正に扱われていた可能性がある旨主張した。また,キロス下院議員(市民連合)は,客年,ショクレンデル弁護士のマネーロンダリング関与疑惑について金融情報機構(UIF)に提訴したにもかかわらず,同疑惑に関する調査が未だ進展していないことを批判し,同調査を進めるよう改めて要求した。


(3)28日,フェルナンデス首相は,「本件に関して政府が懸念すべきことはない。調べるべきことがあれば司法が行うだろう」と述べた。また,30日,デビード公共事業相は,「本件は「5月広場の母」内部の問題であり,政府とは全く関係ない。また,ボナフィニ「5月広場の母」代表も(上記不正疑惑とは)関係ない」と述べた。


(4)30日,下院の野党議員らは,上記事業に係る補助金の金額やその管理体制等に関して国会で説明を行うよう,フェルナンデス首相に要求した。


(5)31日,公共事業省は,「(上記事業は)有効な手続を踏んで適切に遂行されている」とし,「「5月広場の母」を攻撃するためのマスメディアの操作がある」ことを批判するコミュニケを発出した。

 

9 国会の動向


(1)4月13日に公布された,国家社会保障機構(ANSES)による議決権行使に係る制限を撤廃する緊急大統領令(DNU)が,4日,両院常設委員会において審議されたところ,同DNUを有効とする与党の意見書が多数派として採択され,同DNUを無効とする野党の意見書が少数派として採択された。


(2)同日,下院本会議において,健康保険会社規制法案(注:2010年11月に上院で可決済)が審議されたところ,賛成票190,棄権29により可決され,法律として成立した。本法案は,民間の健康保険会社に対し,加入条件の緩和等の改正を義務付けるものであり,規制の対象となる保険会社らは本法案に反対していた。


(3)同日,下院本会議において,マネーロンダリング対策法案が審議されたところ,賛成票181,棄権7により可決され,上院に送付された。本法案は,刑法を改正してマネーロンダリングの取り締まりを強化するもの。

 

III 外交


1 イタリア


(1)1〜2日,ティメルマン外相はバチカンを訪問し,1日,故法王ヨハネ・パウロ2世列福式に出席した。また,ティメルマン外相は,フラッティーニ・イタリア外相と会談し,6月に予定されているフェルナンデス大統領のイタリア訪問の準備を行うとともに,16日にイタリアで開催される「グローバル・ガバナンス及び安保理改革」会合に出席することを約束した。更に,2日,ティメルマン外相は,モレノ・チリ外相とともに,ビーグル海峡を巡る亜・チリ間の領土紛争における故法王ヨハネ・パウロ2世の仲介を讃える式典を主催した。


(2)31日〜6月3日,フェルナンデス大統領は,イタリア統一150周年祝賀式典に出席するためイタリアを訪問した。同大統領には,企業関係者約120名が同行した。6月1日,フェルナンデス大統領は,ナポリターノ・イタリア大統領及びベルルスコーニ・イタリア首相とそれぞれ会談したほか,両国企業関係者会合において演説し,二国間貿易・投資関係の強化を呼びかけた。また,同月3日,フェルナンデス大統領は,ヴェネチアを訪問し,ヴェネチア・ビエンナーレへの亜バビリオン出展に関する合意文書署名式に出席した。

 

2 米国


 2日,亜外務省は,ウサマ・ビン・ラーディン殺害を受け,概要以下のとおりのプレスリリースを発表した。


(1)ウサマ・ビン・ラーディンの死により,国際テロが再び社会の関心を集めているが,亜は,犯罪行為のために政治や宗教を利用する者に対する強い拒絶を表明する。


(2)無実の多くの人間に痛みをもたらした責任者を死に至らしめた軍事オペレーションは,アラブ世界が,国民に自由な生活をもたらすための民主的改革を模索している時に行われた。亜は,この出来事が,中東諸国の人々を,平和的変革に向けた道から逸脱させないよう望む。


(3)亜社会は,2度に亘り国際テロの被害者となった(注:1992年の在亜イスラエル大使館爆破,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破)。我々は,あらゆる会合,あらゆる機会に,国際テロを非難し続けるという我々の変わらぬ決意を再確認する。更に,我々は,亜で起きた国際テロの責任者全てが法の下で裁かれるまで闘いを続ける。


(4)ウサマ・ビン・ラーディンの犯罪行為は,人間の尊厳を尊重する全ての人及び国によって非難されるものであり,我々は,同犯罪行為の被害者全てに改めて連帯する。

 

3 デンマーク


 2日,ダロット筆頭外務副大臣はデンマークを訪問し,ツィルマー=ヨーンス・デンマーク外務審議官とともに第6回亜・デンマーク政策協議の議長を務めた。同協議において,新たな貿易投資チャンスの開拓,並びにエネルギー,科学技術及び教育分野における協力を通じて二国間関係の強化を図ることへの関心が表明されたほか,国連,G20,EU,北極評議会及び南極,メルコスール,中東情勢,中南米情勢等に関する意見交換が行われた。また,ダロット副大臣は,フォークランド(マルビナス)領有権問題における亜の立場を説明した。

 

4 メルコスール


 4日,ギマラエンス・メルコスール上級代表(ブラジルの前大統領府戦略担当庁長官)が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。ティメルマン外相は,ギマラエンス上級代表に対し,同ポスト任命へのアグレマンを表明するとともに,亜のメルコスールに対する強いコミットと地域統合強化に向けた意志を伝えた。なお,上級代表ポストは,2010年12月にブラジルで開催された第40回メルコスール首脳会合において新設された任期3年のポストであり,メルコスールを代表して発言する等の役割を持つ。

 

5 パラグアイ


 6日,ララ・カストロ・パラグアイ外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両外相は,メルコスールの現状や,南米諸国連合(UNASUR)等の地域のテーマ等につき意見交換を行った。

 

6 第4回国連後発開発途上国(LDC)会議


 8日,トルコを訪問したティメルマン外相は,G77+中国議長国として第4回LDC会議に出席して演説を行い,発展途上国の国民生活を向上させる権利を擁護し,また,南北関係の現状を変え,貧しい国々から豊かな国々に資金が移動するようになっている現状を打開するよう呼びかけた。

 

7 コロンビア


(1)10日,訪亜したランセタ・コロンビア外務次官は,ダロット筆頭外務副大臣と会談し,二国間で協力可能な分野等につき協議を行ったほか,オルギン・コロンビア外相の訪亜準備を行った。


(2)13日,オルギン・コロンビア外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両外相は,二国間委員会における成果及び前回の二国間外相会談(3月14日,於:コロンビア)において開催が決定された両国共通関心分野の分野別会合につきレビューし,これら会合における成果が良好であることを確認した。また,両外相は,現状の幅広い二国間アジェンダに即した形での二国間関係メカニズム構築のための協定案につき協議したほか,本年8月に予定されているサントス・コロンビア大統領の訪亜の準備を行った。更に,両外相は,統合プロセス,特にUNASUR等の地域アジェンダ及び多国間アジェンダについても協議した。

 

8 ウルグアイ


 11日,訪亜したアルマグロ・ウルグアイ外相は,ティメルマン外相と会談し,ウルグアイ川管理委員会(CARU)・ラプラタ川管理委員会(CARP)における二国間アジェンダの現状,UPM社製紙工場によるウルグアイ川への排水問題,エネルギー分野における二国間協力等につき協議した。

 

9 スペイン


 11日,亜外務省は,プレスリリースを通じ,スペイン南部で発生した地震に関し,スペイン政府及び国民に対する亜政府及び国民の深い哀悼と連帯を表明するとともに,必要な支援を行う用意があることを伝達した。

 

10 中国


 12日,陳徳銘(Chen Deming)中国商務部部長が約60名の中国企業関係者を率いて訪亜し,フェルナンデス大統領と会談した。また,陳徳銘部長は,ティメルマン外相及びドミンゲス農牧相と共に記者会見を行い,「亜は,中国にとって重要なパートナーである。亜は,天然資源及び高い人的資源を有しており,幾つかの協力案件において非常に良い見通しが得られている。中国は亜産大豆油を購入し続ける。中国の対亜投資総額は既に140億ドルを超えているが,今次訪問の機に行われる各種商談により,更に増加するだろう。」等述べた。一方,ティメルマン外相は,「今般,中国は,50万トンの大豆油購入契約に署名した。亜は,中国の新たな5ヶ年計画において,貿易・投資先としての優先順位の高い中南米の2ヶ国のうちの1ヶ国とされている。亜は,G77+中国やG20において中国と協力してきたように,中国との政治・経済関係を重視している。亜は「1つの中国」を支持しており,また,中国によるフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題への中国の支持に感謝する。」等述べた。

 

11 グローバル・ガバナンス及び安保理改革会合


 16日,イタリアを訪問したティメルマン外相は,グローバル・ガバナンス及び安保理改革会合に出席し,要旨以下のとおりの演説を行った。


(1)亜政府の多国間主義へのコミットを再確認する。国際関係において,特に民主的代表制等の原則を尊重することが必須である。アフリカのようにこれまで代表されてこなかった地域を考慮に入れた,均衡の取れた地理的配分を尊重しながら安保理理事国を拡大する必要がある。


(2)安保理理事国の選出において地域機関の参加を強化すべきとの考えを支持する。(中南米地域の多様な地域機関がコンセンサスに基づいて機能している点を強調した上で,)中南米カリブ諸国は,安保理における地域配分議席を占める候補国を,民主的システムに基づき定期的に選挙により選出するという前提に基づき,選ばなくてはならない。


(3)(安保理が現在の構成となった歴史的経緯に言及するとともに,)第二次世界大戦の戦勝国及び敗戦国という状況は過去のものとなっているのであるから,当然,拒否権を正当化してきた状況も過去のものとなっている。民主主義に沿い,国連総会による拒否権の否決を可能にする方法の検討を提案する。

 

12 チリ


 18日,ティメルマン外相は,チリを訪問し,モレノ・チリ外相とともに,第1回二国間統合委員会州知事会合の議長を務めた。同会合開会式は,ピニェラ・チリ大統領の出席の下開催され,亜側からは州知事14名が出席した。同会合では,二国間統合に関する主要テーマ等につき議論された。

 

13 サウジアラビア


 18日,ダロット筆頭外務副大臣は,サウジアラビアを訪問し,イブラヒム・サウジアラビア外務副大臣と会談した。両者は,農業,エネルギー及び文化分野における二国間協力の進展を評価したほか,G20及びG77+中国のメンバー国として新興国の利益を共に代弁していくことで合意した。また,両者は,メルコスールと湾岸協力会議の自由貿易協定締結に向けた交渉についても協議した。

 

14 ロシア


 21〜24日,ティメルマン外相は,デビード公共事業相,ドミンゲス農牧相及びクレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)と共にロシアを訪問した。ティメルマン外相は,ラヴロフ・ロシア外相との会談後,同外相とともに農牧畜,投資,原子力平和利用及び地理・鉱山調査の各分野における二国間協力覚書等署名式に出席したほか,スヴェトラナ・ロシア連邦議会下院副議長と会談した。今次訪問では,2015年までに二国間貿易を現行の10億米ドルから50億米ドルに増加させる目標,及びロシアによる亜の多様な分野(ハイテク,造船,石油,バイオテクノロジー,原子力,風力,運輸,鉱業,農産加工業等)における総額180億米ドルに上る各種投資プロジェクトを推進していく両国の意志が確認された。また,亜は,ロシアのWTO加盟に対する従来からの支持を改めて表明した上で,今般,ロシアを市場経済国と認定した。

 

15 第50回経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会


 24〜26日,ティメルマン外相は,フランスを訪問し,第50回OECD閣僚会合にオブザーバー国として出席し,国際貿易に関する議論において尊厳ある労働の創出を中心テーマとすべき等演説した。また,25日,ティメルマン外相は,グリアOECD事務総長と会談し,OECDの幾つかの委員会への亜の参加,及びG20の枠組みにおけるOECDの業績につきレビューした。ティメルマン外相は,協力及び経済発展のために,OECD加盟国がG77+中国の推進する提案を考慮に入れることの重要性を伝えた。また,両者は,欧州経済危機及び同危機が発展途上国に与えうる影響について意見交換を行った。

 

16 オーストラリア


 25日,OECD閣僚会合に出席するためフランスを訪問したティメルマン外相は,エマーソン・オーストラリア貿易相と会談し,ドーハ・ラウンド交渉を進展させるための工程につき協議した。両者は,WTO及び多角的貿易体制の重要性を強調し,ドーハ・ラウンド交渉において均衡の取れた合意に至るため尽力することを約束した。また,両者は,メルコスールとオーストラリア・ニュージーランドの関係を強化することへの関心を表明するとともに,本年亜で開催されるアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)外相会合の重要性を強調した。

 

17 インド


 25日,OECD閣僚会合に出席するためフランスを訪問したティメルマン外相は,シャルマ・インド商工相と会談した。シャルマ商工相は,インドが,亜における情報技術,製薬及び工学分野への投資に関心を有していることを伝達するとともに,本年後半に亜を含む南米南部諸国を訪問予定であり,同訪問の機会にメルコスール・インド・南部アフリカ関税同盟(SACU)会合を開催する可能性に言及した。また,両者は,ドーハ・ラウンド交渉に関する対話を継続すべきであるとし,特に発展途上国に利益を与えるような均衡の取れた合意に至る必要性がある旨述べた。

 

18 韓国


 25日,OECD閣僚会合に出席するためフランスを訪問したティメルマン外相は,金宗フン(キム・ジョンフン)韓国外交通商部通商交渉本部長と会談した。両者は,G20における両国の協働を強調するとともに,ドーハ・ラウンド交渉で合意に至るための全ての方策を検討する必要がある旨述べた。また,金宗フン本部長は,韓国企業が対南米投資を増加させることに関心を有している旨述べた。

 

19 世界貿易機関(WTO)


 26日,OECD閣僚会合に出席するためフランスを訪問したティメルマン外相は,ラミーWTO事務局長と会談し,ドーハ・ラウンド交渉の現状をレビューするとともに,今後の合意の可能性につき協議した。同会談後,ティメルマン外相は,「亜は,先進国と途上国の経済・社会格差を縮めることを目的とするのであれば,どのような新たなアイデアであれ議論を行う用意がある。」等述べた。

 

20 ホンジュラス


 24日,亜外務省は,プレスリリースを通じて,ホンジュラス情勢に係るカルタヘナ合意に対するメルコスールとしての祝意を表明したところ,概要以下のとおり。


(1)メルコスール加盟諸国は,22日に,ホンジュラス政府とセラヤ前大統領との間でカルタヘナ合意が署名され,同前大統領が,2009年6月28日のクーデターによる訴追から解放され,諸権利を完全に行使できる状態でホンジュラスに帰国する道が開かれたことへの喜びを表明する。


(2)今次合意は,ホンジュラスの国際社会における関係正常化のための重要な一歩となる。


(3)メルコスール加盟諸国は,今次合意の実現に向けたコロンビア及びベネズエラ政府による支援と仲介を祝福する。今次合意は,民主主義の維持と強化に対する中南米全体のコミットを改めて示すものである。更に,メルコスール加盟諸国は,1998年のメルコスール・ウシュアイア議定書に基づき,地域統合プロセス推進のためには,民主的国家機構の完全なる機能が必要不可欠であるとの信念を再表明する。

 

21 南米諸国連合(UNASUR)


 26〜27日,亜において,UNASUR国防評議会の主催により,「21世紀における南米の戦略的位置付け」と題するセミナーが開催された。同セミナーにおいて,プリチェリ国防相が,UNASUR国防評議会の下に国防戦略研究所が当地に開設されたことを発表し,また,フェルナンデス大統領が演説を行った。なお,今次セミナーには,トルネUNASUR国防評議会委員長(ペルー国防相),ガルシア・ボリビア副大統領,メヒーアUNASUR事務局長のほか,ブラジル,エクアドル,ウルグアイ,ベネズエラ及びボリビアの国防相が出席した。

 

22 メキシコ


 29〜30日,メキシコを訪問したフェルナンデス大統領は,カルデロン大統領と会談し,教育,科学技術,農業,牧畜,漁業,鉱業等の分野の二国間協力協定等10件に署名した。また,フェルナンデス大統領は,カルロス・スリム財団の出資により建設されたソウマヤ美術館を視察したほか,カルロス・スリム氏主催のメキシコ企業関係者との夕食会に出席した。

 

23 フィリピン


 30日,バシリオ・フィリピン外務省政策担当次官が訪亜し,ダロット筆頭外務副大臣とともに,第1回亜・フィリピン政策協議の議長を務めた。また,両者は,亜外交官学校とフィリピン外交官学校間の協力覚書に署名した。

 

24 ボリビア


 ボリビア政府の招聘を受け,バヒディ・イラン国防相(元イラン軍司令官であり,1994年に亜で起きたイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の容疑者の1人として国際指名手配中)がボリビアを公式訪問したことに関し,亜外務省は,31日付プレスリリースを通じて,チョケワンカ・ボリビア外相発ティメルマン外相宛謝罪書簡を受領した旨発表した。

 

25 要人往来


(1)往訪

1〜2日 ティメルマン外相のバチカン訪問(故法王ヨハネ・パウロ2世の列福式に出席)
2〜3日 ドミンゲス農牧相のブラジル訪問(第10回南米南部農牧審議会特別会合に出席
4日 クレックレル外務副大臣(通商・国際経済担当)のパラグアイ訪問(メルコスール・EU自由貿易協定締結交渉委員会会合に出席)
8日 ティメルマン外相のトルコ訪問(第4回LDC会議に出席)
12日 プリチェリ国防相のペルー訪問(第3回UNASUR国防評議会会合に出席)
9〜10日 ティメルマン外相のトルコ訪問(後発開発途上国会議に出席)
16日 ティメルマン外相のイタリア訪問(グローバル・ガバナンス及び安保理改革会合に出席)
18日 ティメルマン外相のチリ訪問(第1回亜・チリ統合委員会州知事会合に出席)
18日 プリチェリ国防相のウルグアイ訪問(ウルグアイ独立200周年祝賀式典に出席)
18日 ダロット筆頭外務副大臣のサウジアラビア訪問(イブラヒム・サウジアラビア外務副大臣と会談)
21〜24日 ティメルマン外相のロシア訪問(ラヴロフ・ロシア外相と会談)
24〜26日 ティメルマン外相のフランス訪問(OECD閣僚会合に出席)
29〜30日 フェルナンデス大統領のメキシコ訪問(カルデロン・メキシコ大統領と会談)
31日〜6月3日 フェルナンデス大統領のイタリア訪問(イタリア統一150周年祝賀式典に出席)

 


(2)来訪

3日 シンディア・インド商工担当閣外相(インド貿易・投資ミッション団長として訪問)
4日 ギマラエンス・メルコスール上級代表(ティメルマン外相と会談)
6日 ララ・カストロ・パラグアイ外相(ティメルマン外相と会談)
10日 ランセタ・コロンビア外務次官(ダロット筆頭外務副大臣と会談)
11日 アルマグロ・ウルグアイ外相(ティメルマン外相と会談)
12日 陳徳銘・中国商務部部長(フェルナンデス大統領と会談)
13日 オルギン・コロンビア外相(ティメルマン外相と会談)
18〜19日 ジャマーリー・パキスタン科学技術相(バラニャオ科学技術相と会談)
23〜24日 テイセイラ・ブラジル開発商工長官(ビアンチ産業省商工中小企業長官と会談)
26〜27日 UNASUR諸国国防相(UNASUR国防評議会主催セミナーに出席)
27日 モレノ米州開発銀行(IBD)総裁(同総裁執筆新書の紹介)
30日 バシリオ・フィリピン外務省政策担当次官(第1回亜・フィリピン政策協議に出席)

 

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