政治情報
月1回更新

2011年12月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2012年01月作成
在アルゼンチン大使館

I 概要


(1)内政面では,大統領及び閣僚の就任式がそれぞれ行われ,フェルナンデス大統領は就任演説を行った。国会では,下院の準備セッションが開催され,同院の執行部役員が選出された他,臨時国会が召集され,2012年予算法案を始め,与党が推進する各種法案が成立した。また,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は,厳しい政府批判と各種要求を行った他,ペロン党執行部から離脱する旨発表した。その他,フェルナンデス大統領が甲状腺乳頭癌を患っているという診断を受けた旨発表された。

 

(2)外交面では,フェルナンデス大統領が,ラ米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合に出席するためベネズエラを訪問し,チャベス同国大統領及びルセーフ・ブラジル大統領とそれぞれ会談した他,メルコスール首脳会合に出席するためウルグアイを訪問した。また,亜大統領就任式に出席するため,菅直人特派大使が訪亜し,フェルナンデス大統領及びティメルマン外相とそれぞれ会談した。

 

TT 内政


1 フェルナンデス大統領の就任演説

 

  10日,連邦議会下院本会議場において大統領就任式が行われ,フェルナンデス大統領及びブドゥー副大統領が就任宣誓を行った後,フェルナンデス大統領が約1時間10分に亘り就任演説を行った。同式典には,閣僚,州知事,国内各界代表,諸外国代表等が列席した。同大統領の就任演説の概要は以下の通り。

 

(1)人権

  私は,人権分野において世界の指導的立場にある国の大統領であることを誇りに思っている。キルチネル政権下では,軍政期の人権侵害に対する免責が無効とされた。そして,私は,2007年の大統領就任時の演説において,4年間の任期中に軍政期の人権侵害関連の裁判を完了させたいと述べ,実際に,それらの裁判は大きく進展した。2015年に就任する大統領が再び同じ発言をする必要がなくなることを切に願っている。

 

(2)経済

  キルチネル政権発足時(2003年),亜の失業率,貧困率,債務残高対GDP比等は非常に高く,工業化も立ち遅れていたが,現在では,一人当たりGDPは世界的に見ても高い水準となり,目覚しい工業発展をも遂げてきている。当時と比べて,貿易黒字,外貨準備高等も伸び,2008〜2009年の厳しい国際金融危機にも屈することなく,2010年以降は再び経済成長を遂げてきている。

 

(3)社会政策

  我々は,多くの雇用を創出し,最低賃金の引き上げ等の雇用条件の改善に尽力してきた他,年金受給対象者を拡大し,失業者世帯等向けの児童手当等を創設した。

 

(4)債務削減

  2001年末のデフォルト後,我々は,国連総会の場で,債務返済に向けた亜の方針を示した。それは即ち,死人が債務を返済することはできないため,(緊縮財政により財源を捻出するのではなく)亜の経済成長が許される必要があるということであった。そして,(対民間債務については,)キルチネル政権下の2005年に第1回目の債券交換,現政権下の2010年に第2回目の債券交換が実施されたことにより,(同債務の)93%が再編された。残りの(未解決分の)債権者は,世界中で獲物を物色しているハゲタカ・ファンド等である。亜はかれらの犠牲にはなるまい。

 

(5)行政組織再編

  経済省内に国際通商庁(Secretaría de Comercio Exterior)を創設する旨決定した。国際通商と国内取引は表裏一体であり,分断することはできないため,(従来,外務省通商・国際経済庁の下に置かれていた機能を)経済省国内取引庁と同じ経済省の傘下に置くことにしたということである。また,(同省経済政策庁内に)競争力副庁(注:正式名称は,経済調整・競争力強化副庁(Subsecretaría de Coordinación Económica y Mejora de la Competitividad))を創設する旨も決定した。これからの時代において競争力の強化は実に重要な課題である。そのためには,科学技術等による付加価値の追求等が必要である。

 

(6)国会

(ア)現政権下では他政権期と比べて法律の成立件数が少ないというだけの理由で,現政権における制度の質を疑問視するような者がいる。しかし,(1983年の民政移管以降,)法律の成立件数が最も多かったのは(政権末期に経済危機を迎えた)デ・ラ・ルア政権期であったことを指摘しておきたい。そして,現政権下では,放送法改正法(2009年成立),民間年金基金(AFJP)国営化法(2008年成立),スライド制年金法(2008年成立)といった重要な法律が成立してきたのである。

(イ)外国人土地所有制限法案の審議を推進することを改めて求める。同法案は,外国人差別や権利の剥奪ではなく,世界において食料やエネルギーの需要が高まる中で戦略的資源を確保するための措置である。また,脱税対策法案の審議も引き続き要求する。

 

(7)労組  

  亜が重要な成長過程にあり,国際情勢が複雑化する中で,私は,全ての亜国民に責任を持つよう求めたい。サンタクルス州の教職員労組及び石油業界労組は不当なストライキにより政府や企業の利益を大幅に損失させた。ストライキ権は,憲法において定められた全ての労働者が有する権利である。しかし,それはストライキを行う権利であり,恐喝する権利ではない。

 

(8)教育  

  地方政府の責任者らに対し,規定の授業日数が全て消化されるべく努力するよう改めて求める。我々は,学校へのパソコンの無料配布等,教育格差の是正を目指すプログラムに着手してきた。先日提示された報告書によれば,幸いにも亜の教育評価は向上していた。今後とも,生徒のみならず教員の評価も行うことなどにより,教育の質的向上を図らなければならない。

 

(9)南米地域  

  我々は,困難な世界に立ち向かうに当たり,南米地域が防衛線になると理解しているため,メルコスール等の域内経済関係を戦略的に重視してきた。幸運にも,南米諸国の大統領は,各国間の相違を超えて,我々の将来は我々が手を取り合って作るべきものだということを理解している。

 

(10)その他

(ア)私は既得権益層の大統領ではなく,全ての亜国民の大統領である。

(イ)私が閣僚らに命令を下していることを以て私のことを独裁的であると批判する者がいるが,これは実におかしなことである。閣僚が大統領に命令を下すべきだと言うのだろうか。私は,世界の他の国々と同様,国民により選出された大統領が閣僚に命令を下し,閣僚がそれに同意しなければ辞職の選択肢が与えられるという国に住んでいる。

 

2 組閣


  10日,大統領府において,下記16名の閣僚が就任宣誓を行った。なお,新任された閣僚は,アバル・メディナ首相(前首相府報道長官),ロレンシノ経済相(前経済省金融長官)及びジャウアル農牧相(前農牧省漁業長官補)の3名であり,その他13名は全て留任となった。

 

役職 氏名
首相 フアン・マヌエル・アバル・メディナ(Juan Manuel ABAL MEDINA)
内務大臣 フロレンシオ・ランダッソ(Florencio RANDAZZO)
外務・宗務大臣 エクトル・ティメルマン(Héctor TIMERMAN)
国防大臣 アルトゥロ・プリチェリ(Arturo PURICELLI)
経済・財政大臣 エルナン・ロレンシノ(Hernán LORENCINO)
連邦企画・公共投資・サービス大臣 フリオ・デビード(Julio DE VIDO)
司法・人権大臣 フリオ・アラク(Julio ALAK)
教育大臣 アルベルト・シレオニ(Alberto SILEONI)
科学技術・生産革新大臣 リノ・バラニャオ(Lino BARAÑAO)
労働・雇用・社会保障大臣 カルロス・トマダ(Carlos TOMADA)
厚生大臣 フアン・ルイス・マンスール (Juan Luis MANZUR)
社会開発大臣 アリシア・キルチネル(Alicia KIRCHNER)
産業大臣 デボラ・ジョルジ(Débora GIORGI)
観光大臣 エンリケ・メイヤー(Enrique MEYER)
農牧・漁業大臣 ノルベルト・ジャウアル(Norberto YAHUAR)
治安大臣 ニルダ・ガレ(Nilda GARRÉ)

 

3 下院の執行部役員選出


  6日,下院において,新任議員の就任式兼準備セッションが開催され(注:下院の執行部役員を選出するための準備セッションは毎年12月1〜10日の間に開催される旨,下院規則において規定されている),同院の次期執行部役員が下記の通り選出された。

(1)議長:ドミンゲス下院議員(ペロン党キルチネル派。前農牧相)

(2)第1副議長:アブダラ・デ・マタラッソ下院議員(サンティアゴ市民戦線(キルチネル派))

(3)第2副議長:ネグリ下院議員(急進党)

(4)第3副議長:シシリアニ下院議員(社会党)

 

 

4 臨時国会における各種法案の成立


  12日,一部の未成立の法案の審議を行うことを目的として,12〜30日の間に臨時国会を召集する旨定める政令が公布された。この臨時国会において審議された法案は以下の通り(いずれも与党が推進する法案)。

 

(1)2012年予算法案  

  14日,下院本会議において,賛成票141,反対票103により可決された後,21日,上院本会議において,賛成票44,反対票26により可決され,法律として成立した。

 

(2)その他の経済関連法案  

  下記5法案は,2012年予算法案と同様,14日に下院本会議において可決された後,21日に上院本会議において可決され,法律として成立した。

(ア)緊急経済法延長法案:緊急経済法を2年間延長する法案(注:同法は,2001年末の経済危機を受けて2002年に成立した法律であり,経済の危機的状況に対処するため,民営化企業との料金交渉,金融システム改革,為替政策等に関する広範な裁量を行政府に付与するもの。これまで数次に亘り延長されてきたが,本年(2011年)末で再び失効を迎えることとなっていた)。

(イ)金融取引税及びたばこ税延長法案:金融取引税の課税期間を2年間延長し,また,たばこ税の課税期間を1年間延長する法案(注:金融取引税は2001年に制定された法律により導入されたもので,たばこ税は1995年に制定された法律により導入されたもの。これらの課税期間は数次に亘り延長されてきたが,いずれも本年(2011年)末で再び失効を迎えることとなっていた)。

(ウ)石油・天然ガス輸出税延長法案:石油・天然ガス輸出税の課税期間を5年間延長する法案(注:同輸出税は2002年に制定された法律により導入されたもので,この課税期間は過去に一度延長されていたが,本年(2011年)末で再び失効を迎えることとなっていた)。

(エ)所得税課税最低限承認法案:2010〜2011年の間に行政府の措置として実施された所得税課税最低限の引き上げを法的に承認する法案。

 

(3)刑法関連法案  

下記3法案は,15日に下院本会議において可決された後,21日に上院本会議において可決され,法律として成立した。

(ア)テロ対策法案:国民や政府等を脅かすことを目的とするテロ活動を取り締まるため,刑罰を強化する法案。なお,本法案反対派は,刑罰の対象となるテロ活動の定義が不明瞭であるため,社会的な抗議活動等が取り締まりの対象となってしまう可能性があるなどと批判しており,かかる批判は,フェルナンデス政権の支持基盤である人権団体等からも生じていた。

(イ)不正金融取引対策法案:マネーロンダリングや,その他,為替や株式市場等に混乱を引き起こし得るような不正な金融取引を取り締まるため刑法を改正する法案。

(ウ)脱税対策法案:脱税を取り締まるため刑罰を強化する法案。

 

(4)農業労働者労働条件改正法案  

  16日に下院本会議において可決された後,21日に上院本会議において可決され,法律として成立した。本法案は,農業労働者の労働条件を改善するために,労働時間,休暇,超過勤務手当,安全衛生等に係る規定を改正する法案。また,農業労働者の労働条件を管理する機関として従来存在していた全国農業労働者登録所(RENATRE)を解体し,農牧省等によって運営される新しい機関を創設する旨定めている。そのため,これまでRENATREの運営において中心的な地位を占めていた農牧港湾労組(UATRE)(注:ベネガス書記長が率いるドゥアルデ派の労組)等が本法案に反発し,抗議活動を行っていた。

 

(5)外国人土地所有制限法案  

  16日に下院本会議において可決された後,22日に上院本会議において可決され,法律として成立した。本法案は,外国人が所有できる農村土地面積を全国の農村土地面積の15%以下に制限すること等を定める法案。本法案は与党が提出したものであったが,野党議員もほぼ全員が賛成票を投じた。レウテマン上院議員(ペロン党反キルチネル派)は,「亜は特別な土壌を持ち,世界の穀倉とみなされてきた。そのため,この土地を保護し,亜国民の管理下に置く必要がある」と述べ,本法案を支持した。また, ジウスティニアーニ上院議員(社会党党首)は,本法案を「一歩前進である」とした上で,「土地の寡占を制限し,天然資源を保護し,経済発展を保証するための,土地の利用と所有に関する包括的な法律を別途制定することにより補完されなければならない」と述べた。

 

(6)新聞用紙統制法案

  15日に下院本会議において可決された後,22日に上院本会議において可決され,法律として成立した。本法案は,新聞用紙の製造・販売・配給を「公共の利益」と宣言し,その製造・販売・配給に対し,経済省が各種統制を実施する旨定める法案。本法案の目的について,与党は,全ての新聞社に対し同一の条件で新聞用紙を提供すること等により「言論の多様性」を保障することである旨主張してきており,ピチェト・キルチネル派上院議員団長は,「より民主的で,より平等に,全ての新聞社が各自の見解を発信できるようになる」と述べていた。他方,本法案は,中央政府がパペルプレンサ社(注:亜国内の新聞用紙の大部分を供給している新聞用紙製造会社)において資本増強することを認めていることから,同社の主要株主であるクラリン紙及びラ・ナシオン紙の権利を侵害するものであるなどとして,両紙は本法案を強く批判していた。また,野党議員や国内外の報道関連組織からも,本法案が報道の自由等を侵犯するものであるとする批判が生じていた。

 

5 モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長の動向


(1)15日,ブエノスアイレス市において,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長(兼トラック運転手労組書記長)の主催によりトラック運転手労働者の日を祝す式典が開催され,多数の労働者等の列席する中,同書記長が演説を行った。

 

(2)同書記長は,フェルナンデス大統領が就任演説において「ストライキ権はあるが恐喝する権利はない」旨述べて労組を批判したこと(上記1(7)参照)に反発して,「労働者は正当に要求しているのであり,恐喝などしていない」と述べた他,「54%(注:先般の大統領選挙におけるフェルナンデス大統領の得票率)の大部分は労働者の票である。良家の坊ちゃんたち(注:キルチネル派若手グループ「ラ・カンポラ」等を指す)の票だけではない」と述べた。また,2008年のフェルナンデス政権と農牧団体との対立の際,同政権が,農牧団体の抗議行動を抑制するためにトラック運転手労組の協力を求めたこと等に言及し,「政府の中にそのことを覚えている者はいないのか」等述べた。

 

(3)そして,現在のペロン党について,「ペロニズム(の精神)を欠き,抜け殻と化している」,「政治的権力を気紛れで操作する装置であり,(先般の各種選挙においては)どこの誰だかわからないペロニズムとは殆ど関係のない連中を候補者として招き入れた」等述べて批判した上で,自らはペロン党第2副党首及び同党ブエノスアイレス州支部代表を辞職する旨発表した。更に,「ペロン政権こそ歴史上最も良い政権であった」と述べた上で,労働者を中心としてペロニズムを「再構築」することを呼び掛けた。

 

(4)その他,労組が運営する健康保険事業に対し政府が負っている債務の返済,労働者世帯向け児童手当の拡充,所得税課税最低限の引き上げ,企業利益分配法案の推進等を改めて強く要求した。

 

(5)当地各紙は,上記演説により,モジャーノ書記長とフェルナンデス政権との関係が断絶されたとした上で,バリオヌエボ飲食業労組書記長(兼「CGT青と白」書記長),ミチェリ亜労働者連盟(CTA)書記長(注:昨年12月以降,CTAは2派に分裂しているが,ミチェリ派は反政府派のCTA)等,従来反モジャーノ派の立場にあった労組指導者らも上記演説に共感を示しており,今後,これらの労組やその他の反キルチネル勢力がモジャーノ書記長との団結に向かう可能性があるとして,フェルナンデス政権内では懸念も生じている旨報じた。

 

6 フェルナンデス大統領の健康状態

 

  27日,スコッチマーロ首相府報道長官は,22日に実施された定期健康診断の結果,フェルナンデス大統領に甲状腺乳頭癌が発見されたが,転移はないことが確認されている旨発表した。また,2012年1月4日にアウストラル病院(ブエノスアイレス州ピラール市)で手術が実施される予定であり,3日間の入院及び20日間の療養のため,同月4〜24日の期間に同大統領が休職する予定であるとし,この期間,憲法第88条の規定に基づき,ブドゥー副大統領が大統領職を代行する旨発表した。(注:なお,予定通り2012年1月4日に手術が実施された結果,癌細胞は発見されず,上記診断において発見されたものは濾胞腺腫(良性腫瘍)であったことが判明した。)

 

7 サンタクルス州政府の問題

 

  下旬,ペラルタ・サンタクルス州知事が,同州議会において臨時議会を召集し,年金や公務員給与の引き下げ等の法案を推進して財政の緊縮を図ろうとしたところ,公務員労組等から激しい反発を受け,29日には暴動に発展して21名の負傷者が生じた他,ペラルタ知事に反発する同州の閣僚3名が辞職した。また,31日には,同州のキルチネル派若手グループ「ラ・カンポラ」が,同知事の施政を強く批判するコミュニケを地元紙に掲載した。

 

III 外交


1 外務省の正式名称変更等

(1)10日,外務省通商・国際経済庁の下に置かれていた機能が,新設の経済省国際通商庁の下に移動されたこと(上記TT.1(5)参照)に伴い,外務省の正式名称が,外務・国際通商・宗務省(Ministerio de Relaciones Exteriores, Comercio Internacional y Culto)から外務・宗務省(Ministerio de Relaciones Exteriores y Culto)に変更された。

(2)10日,ティメルマン外相は,ダロット筆頭外務副大臣の後任としてエドゥアルド・アントニオ・スアイン大使を任命した。

(3)20日,ティメルマン外相は,ダロット前筆頭外務副大臣を,在ジュネーブ代表部大使に任命した。

 

2 日本
(1)9〜10日,菅前総理大臣は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため,特派大使として訪亜した。菅特派大使は,9日,ティメルマン外相と会談を行った他,10日にはフェルナンデス大統領とも会談を行い,東日本大震災の際のお見舞いに謝意を表すと共に,二国間関係強化の必要性等につき意見交換を行った。なお,フェルナンデス大統領がこの機会に個別会談を行ったのは,菅特派大使の他,フェリペ・スペイン皇太子及び中国蒋樹声(JIANG Shusheng)全国人民代表大会常務委員会副委員長のみであった。また,菅特派大使は,当地訪問中に日系企業幹部及び日系団体幹部とそれぞれ意見交換を行った他,10日には当地沖縄県人連合会が主催する「沖縄祭り」に参加した。

(2)15日,フェルナンデス大統領は,アルゼンチン・トヨタのサラテ工場(ブエノスアイレス州サラテ市)において開催された生産能力拡大記念式典に出席して演説を行い,亜国人,特に若者の雇用確保が重要な課題であると述べた上で,多数の亜国人を雇用しているサラテ工場を賞賛する等の祝辞を述べた。また,同大統領は,14日にブエノスアイレス州サンイシドロ市において開催されたスズキ二輪工場オープニング式典において,ビデオ会議システムを利用して大統領府から挨拶を行い,中小企業支援の重要性等について述べた。

 

3 ラ米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合
  11月30日〜12月3日,フェルナンデス大統領は,CELAC首脳会合に出席するためにベネズエラを訪問した。2日,同大統領は,CELAC首脳会合に出席し,概要以下のとおりの演説を行った。

(1)中南米33か国の貿易額全体の内,域内貿易が占めている割合はわずか16%に過ぎず,CELACにおいては,域内貿易の活性化を優先課題とする必要がある。

(2)麻薬取引は先進諸国,消費国及びマネーロンダリングに関わる国が大きな責任を持つ問題である。問題の所在を見定め,これと闘うための戦術を策定する必要がある。

(3)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題は,(亜・英国間の問題であるのみならず,)他の諸国にも関係する問題である。自らの基準を他者に強要するという原理が同問題の原因である。

(4)我々(中南米諸国)が21世紀の主役となるためには具体的な政策が必要とされる。地域を強化していくために,メルコスール,南米諸国連合(UNASUR)及びCELACが形成されてきたが,これら一つ一つを更に確固たるものにしていかなければならない。EUの良い部分を見習いながら,我々が成すべきことを見定めるべきである。

 

4 ベネズエラ

   CELAC首脳会合に出席するためベネズエラを訪問したフェルナンデス大統領は,1日,チャベス・ベネズエラ大統領と会談した。両大統領は,家族手当・住宅建設等の社会開発政策における協力,ベネズエラ国民の食糧主権の保障を目的とする亜食料品6億ドル分の対ベネズエラ輸出,石油等の鉱物探査に係る各種協定のほか,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する亜の立場へのベネズエラの支持を再表明する共同コミュニケに署名した。

 

5 ブラジル 
   CELAC首脳会合に出席するためベネズエラを訪問したフェルナンデス大統領は,2日,ルセーフ・ブラジル大統領と会談した。両大統領は,国際経済金融情勢の悪化により両国の経済成長が停滞することを避けるため,二国間の生産統合を推進することの必要性について協議し,生産分野における二国間関係を深化するための機関として生産統合メカニズム(MIP:Mecanismo de Integración Productiva)が創設された。

 

6 メキシコ

   9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したエスピノサ・メキシコ外相と会談し,2007年に締結された二国間戦略的パートナーシップの進捗状況と課題につきレビューしたほか,二国間貿易関係を強化すること,G20において共同歩調をとること,またそのための二国間外相会合を2012年2月に開催すること,国連改革が必要であることにつき合意した。また,両者は,OASの現況についても意見交換を行った。更に,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するメキシコの支持に謝意を表明した。

 

7 ペルー

   9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したロンカリオロ・ペルー外相と会談し,二国間主要テーマにつき協議した。両者は,2010年に締結された二国間戦略的パートナーシップの枠組みにおいて,2012年2月第2週にニ国間外相会合を開催する旨合意した。また,両者は,UNASURやCELACといった地域統合メカニズムにつきレビューした。更に,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するペルーの支持に謝意を表明した。

 

8 グルジア

   9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したヴァシャッゼ・グルジア外相と会談し,2012年初頭に予定されている在亜グルジア大使館の新設等につき協議した。

 

9 アンゴラ

  9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したルイ・マンゲイラ・アンゴラ外務官房担当長官と会談し,二国間関係の強化,及び南米・アフリカ関係の強化に向けた意向を表明した。更に,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するアンゴラの支持に謝意を表明した。

 

10 ILO

   9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したソマビアILO事務局長と会談し,特に尊厳ある労働や社会的包摂の促進といった亜とILOとの協力アジェンダ等につき協議した。

 

11 OAS

   9日,ティメルマン外相は,フェルナンデス大統領就任式に出席するため訪亜したインスルサOAS事務局長と会談し,次期米州サミット及び次期OAS総会,並びに米州人権委員会における活動につき協議した。

 

12 中国

   14日,亜外務省サンマルティン宮殿において,対亜中国投資促進フォーラムが開催され,ナオン外務副大臣(国際経済担当)が同フォーラムの議長を務めた。同フォーラムには,製鉄,金融,建築,貿易,製薬及び再生可能なエネルギー分野に従事する中国人企業家,並びに亜国人企業家が出席した。

 

13 メルコスール

  19〜20日,フェルナンデス大統領は,メルコスール首脳会合に出席するためウルグアイを訪問した。同大統領には,ティメルマン外相,ロレンシノ経済相等が同行した。20日,フェルナンデス大統領は,メルコスール首脳会合での演説において,国際経済危機の悪影響を緩和させ,地域における社会的包摂を伴う成長を維持するために,地域の経済的及び政治的統合の強化を呼びかけたほか,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する支持に謝意を表明した。また,今次首脳会合において,亜は,2012年上半期のメルコスール議長国に就任した。なお,20日,本首脳会合に同行していたヘイン経済省国際通商長官補が,宿泊先のホテルで縊死しているのが発見された。

 

14 フォークランド(マルビナス)諸島問題

(1)20日,メルコスール首脳会合において,フォークランド(マルビナス)諸島船籍の域内入港に関し,「メルコスール加盟国及び準加盟国は,国際法及び国内関連法に即し,フォークランド(マルビナス)諸島の不法な旗を掲げる船舶の各国の港湾への入港を妨げるための全ての措置をとる。また,域内諸国で入港を拒否された船舶は,フォークランド(マルビナス)諸島の旗を掲げている限り,その他メルコスール加盟国及び準加盟国の港湾に入港できず,入港を試みた場合には同船舶に対して前述と同様の措置をとる。」旨の声明が採択された。 (2)なお,18日には,ウルグアイからフォークランド(マルビナス)諸島に向かおうとしたスペイン漁船が,亜水上警察の船に停戦命令を出され,追跡を受けるという事案が発生した。

 

15 EU  

  19日,フェルナンデス大統領に同行してウルグアイを訪問したティメルマン外相は,タヤーニ欧州委員会副委員長(企業担当)と会談し,メルコスール・EU自由貿易協定の交渉状況,投資及び観光分野における亜とEU間の協力強化等につき協議した。

 

16 オーストラリア  

  19日,フェルナンデス大統領に同行してウルグアイを訪問したティメルマン外相は,マールズ・オーストラリア外務政務次官と会談し,両国経済の補完性,WTOやG20等の枠組みにおける両国の協調を継続していくことの重要性等につき協議した。

 

17 要人往来

(1)往訪

11日30日〜12月3日 フェルナンデス大統領のベネズエラ訪問(CELAC首脳会合に出席)
19〜20日 フェルナンデス大統領のウルグアイ訪問(メルコスール首脳会合に出席)


(2)来訪

2〜4日9〜10日 菅直人特派大使,中南米諸国大統領等(フェルナンデス大統領就任式に出席)
13日 アリ・ロドリゲス・ベネズエラ電力大臣(デビード公共事業相と会談)
18日 タヤーニ欧州委員会副委員長(企業担当)(ジョルジ産業相と会談)

 

バックナンバー
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002

2011年11月

2011年10月

2011年9月

2011年8月

2011年7月

2011年6月

2011年5月

2011年4月

2011年3月

2011年2月

2011年1月

2010年12月

2010年11月

2010年10月

2010年9月

2010年8月

2010年7月

2010年6月

2010年5月

2010年4月

2010年3月

2010年2月

2010年1月

2009年12月

2009年11月

2009年10月

2009年9月

2009年8月

2009年7月

2009年6月

2009年5月

2009年4月

2009年3月

2009年2月

2009年1月

2007年12月

2007年11月

2007年10月

2007年9月

2007年8月

2007年7月

2007年6月

2007年5月

2007年4月

2007年3月

2007年2月

2007年1月

2006年12月

2006年11月

2006年10月

2006年9月

2006年8月

2006年7月

2006年6月

2006年5月

2006年4月

2006年3月

2006年2月

2006年1月

2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年9月
2005年8月
2005年7月
2005年6月
2005年5月
2005年4月
2005年3月
2005年2月
2005年1月
2004年12月
2004年11月
2004年10月
2004年9月
2004年8月
2004年7月
2004年6月
2004年5月
2004年4月
2004年3月
2004年2月
2004年1月
2003年12月
2003年11月
2003年10月
2003年9月
2003年8月
2003年7月
2003年6月
2003年5月
2003年4月
2003年3月
2003年2月
2003年1月
 
2002年12月
2002年11月
2002年10月
2002年9月
2002年8月
2002年7月
2002年6月
2002年5月
2002年4月
2002年3月
2002年2月
2002年1月