政治情報
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2012年7月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2012年08月作成
在アルゼンチン大使館

I 概要


(1)内政:フェルナンデス大統領は亜国独立宣言196周年を記念し,トゥクマン州にて演説を行った。また同大統領は,エバ・ペロン元大統領夫人の没後60周年を記念し,エビータの横顔が印刷された記念紙幣の発行を発表した。労働・雇用・社会保険省は,予定されていた労働総同盟(CGT)の役員選挙の告示を無効と判断する旨発表した。これを受け,モジャーノCGT書記長は上記労働省の決定を不服として予定通りに役員選挙を実施し,「3選」を果たした。一方,反モジャーノ派労組は労働省の決定により,別の日程でCGTの役員選挙を行う旨発表した。国からの地方交付金の減額により,ブエノスアイレス州では公務員の冬期ボーナスの支払い方法をめぐる混乱が発生し,公務員労組によるストライキが頻発した。


(2)外交:フェルナンデス大統領は,天然ガスの供給契約の交渉のためボリビアを訪問し,モラレス・ボリビア大統領と会談を行ったほか,メルコスール首脳会合に出席するためブラジルを訪問し,ルセフ・ブラジル大統領,ムヒカ・ウルグアイ大統領,及びチャベス・ベネズエラ大統領とともに,ベネズエラのメルコスールへの正式加盟の実現を宣言した。他方,ティメルマン外相及びモレーノ経済省国内取引長官は亜企業関係者250名以上を率いてアゼルバイジャンを訪問し,アリエフ大統領及びメメディヤロフ外相等と会談した。また,プリチェリ国防相は中国を訪問し,二国間協力覚書の改訂覚書に署名したほか,同相はベネズエラも訪問し,国防分野における二国間協力協定に署名した。その他,ブエノスアイレス市内のイスラエル共済会館(AMIA)本部において、AMIA爆破事件18周年追悼式典が開催された。

TT 内政


1 独立記念日の式典


 9日,フェルナンデス大統領は亜国独立宣言196周年を記念し,トゥクマン州にて演説を行った。同演説においてフェルナンデス大統領は,世界経済が危機的状況にある中,亜国は2003年のキルチネル前大統領の就任以降に実施してきた有益な政治・経済政策のおかげで,200年の国の歴史において前例を見ないほどの成長を達成した旨発言し,今後も成長促進路線を採用すると述べた。

 

2 ビデラ元大統領及びビニョーネ元大統領らに有罪判決


 軍事政権下(1976?1983年)で収監されていた女性活動家が獄中出産した乳児を組織的に拉致したとして,誘拐や監禁の罪に問われていたビデラ元大統領及びビニョーネ元大統領等に対する公判が5日,連邦裁判所で開かれ,両元大統領等に有罪判決が下された(注:同裁判は2011年2月に開始)。今次判決では,ビデラ元大統領に懲役50年,ビニョーネ元大統領に懲役15年が言い渡された。ロケタ裁判長は判決主文の朗読にあたり,同誘拐が反体制思想の根絶を目的として行われた国家によるテロ行為である旨述べるとともに,人道に反する組織的犯罪であるとした。今回の有罪判決を受けて,ビデラ元大統領の刑期は,1985年の裁判で出された有罪判決と統合され,無期懲役となった。

 

3 ブエノスアイレス州に対する地方交付金の減額


(1)6月末に発表された国からの地方交付金の減額を受けて,シオリ・ブエノスアイレス州知事が同州公務員の冬期ボーナスを分割支払いにする旨発表したところ,州内の教員労組等,複数のセクターから強い反発の声があがり,同州では公務員によるストライキが頻発する事態が発生した。


(2)ブエノスアイレス州政府は,亜国の人口の約4割を抱える同州においては,公共サービスに対する需要が非常に高く,いかなる財政上の努力を講じたとしても,現在の国からの地方交付金では然るべき行政水準には届かないと主張し,国の地方交付金の分配の仕方に問題がある旨主張するとともに,国からの追加助成の必要性を訴えた。


(3)5日,拡大する公務員のストライキを受けて,ブエノスアイレス州政府は収入に応じてボーナスの分割回数に差を設ける旨発表した。同措置によると,同州公務員のうち,収入の低い公務員(注:全体の10%に相当)に対しては冬期ボーナスを一括で支払うとし,残りの公務員のボーナスに関しては,収入に応じて2回,3回及び4回と,分割回数を変則的に設定する旨決定した。


(4)6日,シオリ・ブエノスアイレス州知事は公務員の冬期ボーナスの分割支払いを実施するべく,知事令を制定する旨発表した。同日,ブエノスアイレス州地方裁判所は公務員労組によるボーナスの一括支払いの訴えを認め,シオリ州知事に対して,5日以内に全公務員の冬期ボーナスを全額支払うよう命じた。


(5)7日,シオリ・ブエノスアイレス州知事は記者会見を行い,司法の判断に関わらず,55万人の同州公務員の冬期ボーナスを分割して支払う旨再度述べた。また,同州知事は当地報道で取り沙汰されているフェルナンデス大統領との関係悪化説を否定し,中央政府とブエノスアイレス州は互いに協力関係にあると述べた。なお、同会見において,「もし5月に(シオリ州知事が)2015年の大統領選挙への出馬の意思を表明していなかったら,中央政府による地方交付金の減額は生じなかったと考えるか」との記者の質問に対し、同州知事は「(そのような)エゴイストのような考え方はしない」と返答した。他方,2015年の同選挙にまだ出馬する意思があるかという質問に対しては,「それについては(5月に)既に述べた」とし,出馬の意向を否定しなかった。


(6)13日,ブエノスアイレス州政府は第一回目の冬期ボーナスの分割支払いを実施した(注:但し,同州の議会,地方裁判所及び医療分野に属する公務員に対しては,今次ボーナスは一括で支払われた)。


(7)19日,中央政府はブエノスアイレス州に対し,公務員の冬期ボーナスの支払いを正常化するため,国家社会保障機構(ANSES)の年金基金から同州に対して6億ペソの融資を実施する旨発表した。

 

4 労働総同盟(CGT)役員選挙


(1)6日,労働・雇用・社会保険省のトマーダ大臣は記者会見を行い,本年4月24日にモジャーノ現CGT書記長らが招集した役員会は,役員資格のない6名を加えて定足数を満たしていたため,同席で賛成多数により決定されたCGTの次期役員選挙の告示(7月12日投開票)を無効と判断する旨発表した。他方,同省はCGTの組織としての機能の中断を防ぐため,7月14日までであった現書記長の任期を,次期役員選挙で次の書記長を選出するまで延長することも発表した。


(2)労働省の上記決定を受けて,反モジャーノ派労組は10日に会合を行い,8月23日告示,10月3日投票という別の日程で役員選挙を実施する旨発表し,書記長の統一候補として,冶金業労組のアントニオ・カロー代表をたてることに決定した(注:その後,告示の日程を9月5日に変更)。これによりモジャーノ派と反モジャーノ派の決裂が決定的となり,CGTが再び分裂することとなった。今次反モジャーノ派会合に出席したのは,カロー冶金業労組代表の他,「los Gordos」(注:鉄道,医療,電気及び商業の各労組),「独立派」(注:建設労組及び国家公務員労組),及び旧モジャーノ派労組の代表らであり,CGTの全役員25名のうち,モジャーノ派の役員が8名なのに対し,反モジャーノ派の役員は13名となっているため(注:4名の役員は服役中または拘留中等の諸事情によりカウントされていない),組合数では過半数を超え優勢となっている。


(3)一方,モジャーノ派はCGTの自治権に労働省が介入したことを不服とし,当該告示による無効通達を無視して,予定通り7月12日にフェロ・スタジアムにおいて役員選挙を実施した。その結果,現職のモジャーノ書記長が当選し,「3選」を果たした(注:反モジャーノ派が今回の選挙及び当選の正当性を認めていないものの,CGTの歴史において,3期連続での書記長就任というのはモジャーノ書記長が初めてのこと)。当選後の演説でモジャーノ書記長は,昨年10月の大統領選挙において54%の得票率で当選したフェルナンデス大統領に対し,労働者への恩義を忘れるべきでないとの発言をした。また,もし政府から労働者に対する適切な「返答」がなされないのであれば,来年の中間選挙でキルチネル派を支援しない可能性がある旨言及し,さらに,同選挙において,野党支持に回る可能性及びモジャーノ派から独自の候補者を出す可能性についても示唆した。他方,本年5月に次期大統領選挙(2015年)への出馬の意思を表明して以降,中央政府による地方交付金の大幅な削減等,財政面で直接的な攻撃に晒されていると報じられているシオリ・ブエノスアイレス州知事に対しては,フェルナンデス政権と同州民との間で難しい立場に立たされているという理解を示した上で,同州知事を擁護した。


(4)16日,フェルナンデス大統領は大統領府において反モジャーノ派労組代表らと会談を行った。同大統領は,反発し合う労組のいずれの立場にも与しない旨冒頭で述べると,「今日ここに集まった人々は全員が労働者であり,労組を取りまとめる立場にある。必ずしも皆が同じ視点を有しているとは限らないが,それでも相違を乗り越え,団結し,異なる考えを持つ者たちとうまくやっていこうとしている。今日来ていない労組(モジャーノ派)があることは残念だ」と述べ,労組の分裂に懸念を示す発言をした。また,フェルナンデス大統領は,過去9年間に亜国の労働者が,2001年当時には考えられなかったような労働条件の改善を達成したとし,亜国の国益の為にも「団結した1つのCGTを望む」と述べた。さらに,同大統領は,労働者の要求及び権利は,国の然るべき政策の下に成就するのであって,単に権力を振りかざすだけでは何も得られない等の発言をした。また,経済や各産業界に対する国の積極的介入なしには成長は実現できないとし,会談に出席していた反モジャーノ派労組代表を指しながら,同じペロニスタとしてその点で理解し合えるのは幸運であると述べた。

 

5 内務・運輸省の各種政策


(1)18日,ランダッソ内務・運輸大臣は,首都圏のバスや鉄道などで使用されているICカード(SUBE)のチャージ・サービス等を委託する為に国が契約した会社の中に,実態不明の会社が何社かあった旨認める発言をした。同発言は,SUBEシステムの導入当時に運輸長官を務めていたスキアビ前運輸長官の「国は民間の詐欺師の被害者である」との主張と矛盾しており,裁判所は本件に関する証拠の収集保全手続きを開始した。


(2)19日,内務・運輸省はSUBEを利用しないバス及び鉄道の乗車に限リ,同運賃を引き上げる旨発表した。これにより,8月6日以降,バスの最低運賃は1.10ペソから2ペソに,鉄道の運賃は80センターボから1.50ペソに値上げとなった。


(3)同日,ランダッソ内務・運輸大臣は,全国のバス及び鉄道に対する国からの補助金に上限を設ける旨発表した。同措置はフェルナンデス大統領が2期目の大統領就任を果たした際に表明していたものであり,今後,公共交通機関に対して,国からの補助金額を上回る資本を注入する必要性が生じた際には,各地方自治体がその責任を担うことになる。地下鉄に関しては,ブエノスアイレス市への運営権委譲問題が議論されているが,現行の国からの補助金は今年の12月までとされている。


(4)26日,ランダッソ内務・運輸大臣は,全国の公共交通機関に対して国が支払った補助金の金額及び使途等が閲覧できるページを,内務・運輸省のホームページ内に新設した旨発表した。

 

6 タクシー及び高速道路料金の値上げ


(1)29日,ブエノスアイレス市とタクシー業界の合意により,市内のタクシー料金が12%の値上げとなり,初乗り料金が8.20ペソ(深夜割増の初乗り料金は9.80ペソ),加算料金が200m/82センターボ(深夜は200m/98センターボ)となった。タクシー料金は10月後半にもさらに12%の値上げとなることが決定しており,その時には,初乗り料金は9.10ペソ(深夜割増の初乗り料金は11ペソ)となる予定。


(2)30日,ブエノスアイレス市は高速道路料金の値上げを発表した。同市によると,都市高速道路会社(AUSA)との合意により,8月1日以降,市内に通じる高速道路料金は平均で20%の値上げとなる。 

 

7 電気料金の値上げ


 23日,ブエノスアイレス州政府及びサルタ州政府は,州内の電力会社に対し,電気料金の値上げを認める決定を下した(注:ブエノスアイレス州の場合は,一般家庭向けの電気料金が7月1日現在の価格より10〜28%増加,事業者向けの同料金が8〜10%増加,サルタ州の場合は14.5%増加)。これを受けて25日,デビード公共事業大臣は訪問先のベネズエラから,電気料金を引き上げる州については,値上げ幅と同じ分の発電向け補助金を削減すると通達した。

 

8 エバ・ペロン元大統領夫人の没後60周年記念


(1)25日,フェルナンデス大統領は,エバ・ペロン元大統領夫人の没後60周年を記念して発行された,同氏の横顔が印刷された100ペソ札を披露した。同大統領は演説において,亜国の200年の歴史において,女性が紙幣の顔になるのは初めてのことであり,その大役にふさわしい人物としてエバ・ペロン元大統領夫人以上の存在はいないと発言し,将来,この「エビータ札」が現行の100ペソ札(注:フリオ・ロカ元大統領の顔が印刷されている)に取って代わる日がくるよう,最大限の努力を尽くして欲しいと造幣局関係者らに要請した。


(2)26日,フェルナンデス大統領は,ブエノスアイレス首都圏のホセ・C・パス市において,エバ・ペロン元大統領夫人の没後60周年記念の演説を行った。同大統領は,エビータが生前の約束通り,国の尊厳を取り戻し,生まれ変わった亜国に象徴的に帰ってきた(ママ)ことを祝福するメッセージを送った。また同大統領は,エビータに対して亜国民が払いうる最高の敬意は,国民が一致団結して協力し合い,国の幸せと発展のために貢献することであると発言した。演説においてフェルナンデス大統領は,自身とキルチネル前大統領が若かりし頃,ペロン元大統領のもとで労働者や若者が主体となって亜国を変革していくのを,一若者として見届けた旨振り返るとともに,今の亜国が実施する政策には,エビータがかつて抱いていた信条や目指そうとしていた方向性が反映されていると述べた。さらに,同大統領は演説の途中で労組の抗議活動につき,「民主主義の下では,常にサボタージュをする人々がいるが,歴史はそれに屈しない」と発言した。


(3)同日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長はCGT本部で記者会見を行い,エバ・ペロン元大統領夫人の死後60年を偲ぶとともに,フェルナンデス大統領に対する批判を行った。同書記長は,エビータが象徴していたものとは「揺るぎなさと謙虚さ」に違いないが,自らをエビータと重ね合わせるなら,その謙虚さの部分まで真似てほしいと,フェルナンデス大統領に対する皮肉を述べた。さらに同大統領のことを指しながら「傲慢さがあふれ出る人物にはエビータを真似るのは難しい」とも発言した。

 

9 クラリン・グループの株主総会の開催要求


 25日,国家社会保障機構(ANSES)により提出されていた,クラリン・グループの株主総会の開催要求が司法監督局によって認められた。当地メディアは,これにより,同グループの株式を9%保有するANSESが,本年4月に開催された株主総会での決定事項を法的に無効化する可能性が高まったことにつき報じた他,今後,ANSESによる同グループの経営への干渉の強化が図られる可能性についても報じた。労働省のプレスリリースによると,クラリン・グループの株主の多くが信託を受けた者もしくは亜国内では登録されていない海外のビジネス・トラストであり,それらの株主が同グループの株を大量に保有すること,及び同グループの経営陣を決定する権限をもつことは違反行為であるとしている。

 

10 連邦刑務所の在監者の政治的利用に関する報道


 29日,クラリン紙はフェルナンデス政権が,国の管轄下にあるエセイサ連邦刑務所の在監者を一時的に釈放し,キルチネル派の政治キャンペーン等に利用していた旨報じた。同記事によると,政府は殺人の罪で有罪判決を受け服役していた元ドラマーのエドゥアルド・バスケス囚人等,複数の在監者を,過去8ヶ月間に少なくとも2回にわたってキルチネル派組織(Vatayon Militante)の政治キャンペーンのために刑務所外に連れ出し,同派の宣伝をさせていた由。アラク司法・人権大臣は,然るべき司法手続きに従って,在監者が刑務所外で行われたイベントに参加した旨認めたが,同イベントは文化的なものであって,在監者の更生及び社会復帰を目的としており,政治的要素はないと述べた。

 

11 サッカー・スタジアムにおける指紋認証システムの導入


 30日,フェルナンデス大統領は,サッカー観戦中の安全対策の一環として,試合会場の入り口に新しく指紋認証システム(SABED)を導入し,フーリガン(Barras Bravas)等の入場を阻止する措置をとる旨発表した。近年,亜国では暴徒化するサポーターが増加しており,サポーター間の抗争の結果,殺人等に至るケースが多発している。同システムによって競技場内への入場を拒否されるのは,亜国サッカー観戦法(注:サッカー観戦中の暴力行為を禁止する法律)に背き,過去に起訴または有罪判決を受けた者,及び各サッカークラブが危険人物として認定した者となる。フェルナンデス大統領によると,既に100台の指紋認証機器がアルゼンチン・サッカー協会側に提供された。同システム導入に際し,内務・運輸省とアルゼンチン・サッカー協会は安全協定を締結した。なお,大統領府で行われた同指紋認証システムの発表会の席で,フェルナンデス大統領自らその機器の性能を試したところ,同大統領の指紋が認識されないというハプニングが生じた。

 

III 外交


1 メキシコ


 2日,フェルナンデス大統領は,メキシコ大統領選挙において勝利したペニャ次期大統領に対し,電話にて祝意を表明した。ペニャ次期大統領は,両国関係の強化を約束するとともに,大統領就任後の訪亜の意向を表明した。また,フェルナンデス大統領は,中南米におけるメキシコの経済的重要性を強調するとともに,メキシコが亜軍政期に多くの亜移民を受け入れたことにつき言及した。

 

2 アゼルバイジャン


 2〜4日,ティメルマン外相及びモレーノ経済省国内取引長官は,亜企業関係者250名以上を率いてアゼルバイジャンを訪問した。ティメルマン外相は,アゼルバイジャンのアリエフ大統領,メメディヤロフ外相等と会談を行った。今次訪問時,ティメルマン外相は,「我々は,亜国民の雇用を維持・増加させるために,アゼルバイジャンでのビジネスを創出している。両国は,石油,農産業,農業機器,再生可能なエネルギー,情報技術,観光等の分野における貿易,技術移転並びに相互投資の可能性を有している。不透明な国際経済情勢の中で,亜やアゼルバイジャンといった新興諸国は,成長を維持していかねばならない。」等述べた。

 

3 中国


 4日,中国を訪問したプリチェリ国防相は,梁光烈・中国国防部長とともに,2007年に署名済みの国防分野における交流・協力強化のための二国間協力覚書の改訂覚書に署名した。また,プリチェリ国防相は,北京大学において講演を行い,国防分野における二国間の戦略的関係を強化すべきである旨述べたほか,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する中国の従来からの支持に謝意を表明した。

 

4 ベネズエラ


(1)10〜11日,ベネズエラを訪問したキルチネル社会開発相は,チャベス大統領と会談し,社会的包摂分野における両国の政治的関係を強化することで合意した。


(2)12〜14日,ベネズエラを訪問したプリチェリ国防相は,13日,シルバ・ベネズエラ国防相とともに,国防分野における二国間協力協定に署名した。同協定は,平等,相互主義,互恵及び相互尊重の原則に基づき,人材育成,政治的・戦略的対話の強化,国防分野における科学技術・産業の深化,災害支援,南極におけるロジ支援等を目的とするもの。プリチェリ国防相は,「我々は,今次協定を受けて,軍隊の育成に関する協力を推進するとともに,国防分野における生産を増加させるために科学技術分野での統合を図りたい。また,両国軍隊の共同訓練の拡大も目指したい。今次協定は,南米諸国連合(UNASUR)の枠組みに於いて,我々両国が提案してきた統合の目標に沿ったものである。」等述べた。


(3)24日,ベネズエラを訪問したデビード公共事業相及びガルッチオYPF社CEOは,チャベス大統領及びラミレス・エネルギー相兼PDVSA社CEOと会談を行い,同社とYPF社の炭化水素分野における連携につき話合いを行った。

 

5 シリア


(1)11日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,シリア情勢に対する懸念を表明し,対話により危機を解決するよう呼びかけるとともに,アナン国連・アラブ連盟共同特使の活動への支持を表明したほか,潘基文国連事務総長からの要請を受け,平和維持活動に亜要員7名を派遣する用意がある旨を発表した。


(2)26〜27日,亜政府は国外退避を希望するシリア在住の亜国民25名をレバノンに避難させた。

 

6 ロシア


 11日,ティメルマン外相は,ラヴロフ・ロシア外相宛に書簡を発出し,ロシア・クラスノダール地方で発生した洪水被害に対する弔意と連帯の意を表明した。

 

7 フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題


(1)13日,英下院武器輸出規制委員会は,英軍事産業による亜への武器輸出に懸念を示す報告書を発表した。英の報道によると,英の対亜武器輸出額は過去2年間で計3,600万米ドルにのぼるとされている。4日に中国を訪問し,国防分野における交流・協力強化のための二国間協力覚書の改訂覚書に署名をした亜のプリチェリ国防相は,亜政府は今後,英企業からの武器の購入を中国からの購入に切り替えることに関心がある旨発言した。


(2)25日,亜政府は外務省プレスリリースを通じて,フォークランド(マルビナス)諸島における英のミサイル発射訓練の実施の決定に反対する旨発表した。同プレスリリースは,英が亜及びラテンアメリカ諸国に対して再び脅威を突きつけていると主張するとともに,同軍事訓練は当該地域を航海する船舶の安全性を脅かすものであるとした。また亜政府は,英政府の今次決定は国連決議だけでなく,ラテンアメリカ諸国の意志にも反するものであるという従来からの亜の立場を表明した。

 

8 ボリビア


(1)17〜18日,フェルナンデス大統領はボリビアのコチャバンバを訪問し,モラレス・ボリビア大統領と会談を行った。今次訪問にはティメルマン外相,デビード公共事業相,スコッチマーロ大統領府報道長官等が同行した。


(2)モラレス大統領主催の夕食会で行われたフェルナンデス大統領の演説の概要は以下の通り。


(ア)先進国が深刻な危機に見舞われている中で,南米は21世紀の主役の1人になるための歴史的チャンスにある。重要なのは,メルコスール,UNASUR及びCELACの団結を維持することである。


(イ)南米の民主主義を維持することも重要である。自由で民主的な選挙を通じたパラグアイ情勢の正常化を望んでいる。


(ウ)在亜ボリビア人コミュニティーは,亜経済に大きく貢献している。亜は,移民に開かれた国であり,ボリビア国民を歓迎する。


(エ)植民地時代とは異なり,天然資源保有国は,自らの天然資源を自ら管理したいと考えており,投資国とウイン・ウインの関係を築きたいと考えている。我々治世者の目標は,我々の国民の生活を向上させることである。


(3)18日,フェルナンデス大統領は,モラレス大統領と会談し,医療,教育,技術交流及び移民等のテーマにつき協議した。同会談後の記者会見におけるフェルナンデス大統領の発言概要は以下の通り。


(ア)今次会談は非常に有意義であった。また,今般,両国にとって非常に重要な意味を持つ複数の協定等への署名が行われた。ボリビアからのプロパンガス及びブタンガスの売買に関するインテンションレターへの署名がなされたほか,ボリビア国営石油公社(YPFB)と亜国営エネルギー会社(ENARSA)との間で天然ガスの売買契約の署名もなされた。輸送能力がないので,輸送量を増加することはできないのではないかという声もあったが,先般,我々は,二国間を結ぶ天然ガスパイプライン「フアナ・アスルドゥイ」を落成したところであり,同パイプラインの日量最大輸送量が2,700万立米であることを述べておきたい。(2003年のキルチネル前政権以降)ここ9年の我々の治世を見れば,我々が実現不可能なことについて署名を行わないのは明らかである。


(イ)これらに加えて,デジタルテレビ導入に関するインテンションレターや高等教育機関の単位相互認定協定の署名もなされた。


(ウ)現在,世界は,2008年及び2009年以上に深刻な危機にあり,解決には時間がかかると見られる。従って,我々新興諸国の協調が重要になる。南米は,大きな人口を持つ市場であるとともに,水,エネルギー,石油といった天然資源を有しているため,21世紀の主役になるための歴史的チャンスにある。工業の発展したブラジル及び亜は,地域のその他諸国を支援していくべきである。1ヶ国が全ての産品を生産することは不可能であるので,分業すべきであり,各国が優位な分野に特化することにより,我々の競争力を高めることができるだろう。

 

9 イスラエル


 18日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,ブルガリアにおけるイスラエル人観光客に対するテロ事件を非難するとともに,イスラエル政府及び国民に対する深い連帯の意を表明した。

 

10 AMIA


 18日,ブエノスアイレス市内のイスラエル共済会館(AMIA)本部において、AMIA爆破事件18周年追悼式典が開催された。同式典では,アバル・メディーナ官房長官が亜政府代表として演説(フェルナンデス大統領はボリビア訪問中)し,「全ての責任者の処罰を求めて,司法に対する必要な協力を全て行う亜政府の意思を再表明する。」等述べた。なお,同式典には,ユダヤ・コミュニティー及び被害者家族のほか,アラク司法相,ガレー治安相,シレオニ教育相等が出席した。

 

11 グアテマラ


 20日,ティメルマン外相は,訪亜したカバジェロス・グアテマラ外相と会談した。ティメルマン外相は,マルビナス諸島領有権問題に関するグアテマラの従来からの支持に謝意を表明したほか,グアテマラとベリーズの国境問題に関する国民投票の両国での同時実施が決定されたことを祝した。また,両外相は,亜の安保理非常任理事国(任期2013〜2014年)とグアテマラの安保理非常任理事国(任期2012〜2013年)の相互支持,並びに両国の国連代表部間の協力体制を構築する旨の合意を評価した。更に,両外相は,学術分野における二国間協力協定に署名した。

 

12 メルコスール


(1)31日,フェルナンデス大統領,ルセフ・ブラジル大統領,ムヒカ・ウルグアイ大統領,及びチャベス・ベネズエラ大統領は,伯のブラジリアで開催されたメルコスール首脳会合に出席し,ベネズエラのメルコスールへの正式加盟が実現した。また,今次機会を利用し,フェルナンデス大統領はチャベス・ベネズエラ大統領とYPF社及びPDVSA社の戦略的同盟構築に向けた共同声明に署名をした他,ムヒカ・ウルグアイ大統領との2国間会談を行った。


(2)メルコスール首脳会合におけるフェルナンデス大統領の発言概要は以下の通り。


(ア)ベネズエラの加盟により,ブラジル,ウルグアイ,パラグアイ,アルゼンチン,ベネズエラより構成されるメルコスールは,エネルギー,鉱物,食品,科学,技術分野によって成立する21世紀の方程式を完成させ,米国,中国,ドイツ,日本(順番はママ)に継ぐ世界第5位の経済規模を有することとなる。


(イ)目下の欧州債務危機を前に,コモディティーに上限価格を設けようとの動きがあるとのニュースを読んだが,この危機は先進国により引き起こされた金融不安が原因であり,南米諸国の農業産品が原因ではない。しかしながら,南米最大の食糧生産国であるメルコスール諸国は,食の安全を保障するので,先進国は心配しないでもらいたい。


(ウ)今後,我々が苦労して設立した,このメルコスールという世界における一つの勢力軸を維持する手段を構築せねばならない。


(エ)メルコスール加盟国が挑む闘いは,先進国が我々に押しつけたパラダイムやモデルを乗り越えるための文化的な闘いであり,政治・経済的な闘いではない。


(3)フェルナンデス大統領は,チャベス・ベネズエラ大統領とYPF社及びPDVSA社の戦略的同盟構築に向けた共同声明を発出したところ,同概要は以下の通り。


(ア)両国首脳は,二国間の伝統的友好協力関係,YPF社の国有化,及びベネズエラのメルコスール加盟によって生じる,エネルギー分野での新たな戦略的関係構築の必要性を考慮するとともに,南米エネルギー条約の署名に対するUNASUR諸国の関心,亜・ベネズエラ二国間協力統合条約(注:2004年4月6日署名),及びエネルギー安全条約施行に関する合意(注:2008年3月6日署名)を重視する。


(イ)両国首脳は,両国での原油生産量の増加を目的としており,相互補完性,現在実行中のプロジェクトの効果最適化に資する両国国営企業間の連携,及び新たなプロジェクトの実行を基礎に置く共同計画への戦略的参加に向けたスキームを確認する。


(ウ)以下の作業を進める。YPF社のオリノコ石油地帯合同企業への参入,PDVSA社のUTE(Unidades Transitorias de Empresas:企業体暫定機関)への参入,PDVSA社のアルゼンチンでの石油及びガスの採掘プロジェクトへの参加,PDVSA社及びYPF社のオリノコ石油地帯アヤクチョ6地域の合同企業への参加,短期・中期・長期的資金獲得に向けた一連のプロジェクト計画の作成,PDVSA社の石油科学及び技術移転分野プロジェクトへの参加,各国の国内法規に抵触しない範囲での本合意の目的に関連する協力の実施。


(エ)両国首脳は,本声明施行をベネズエラ・石油鉱物省,亜・連邦企画・公共投資・サービス省に委ね,同省庁は,計画実行を他機関もしくは民間企業に委任することができる。


(4)亜とウルグアイは,先月のブスティージョ元駐亜ウルグアイ大使の告発を踏まえ、両国の共同プロジェクトであるマルティン・ガルシア運河浚渫工事の入札を巡る汚職疑惑に関して,両国首脳間及び外相間で協議を行ったが,会合詳細については公表されなかった。

 

13 要人往来


(1)往訪

6月30日〜5日 フックス外務省ホワイト・ヘルメット委員会委員長の日本訪問(世界防災閣僚会議in東北に出席)
2〜4日 ティメルマン外相及びモレーノ経済省国内取引長官のアゼルバイジャン訪問(貿易ミッション)
4〜7日 プリチェリ国防相の中国訪問(梁光烈・中国国防部長と会談)
10日 ティメルマン外相のブラジル訪問(中東和平に関するメルコスール外相会合に出席)
10〜11日 キルチネル社会開発相のベネズエラ訪問(チャベス・ベネズエラ大統領と会談)
12〜14日 プリチェリ国防相のベネズエラ訪問(シルバ・ベネズエラ国防相と会談)
17〜18日 フェルナンデス大統領のボリビア訪問(モラレス・ボリビア大統領との会談)
24日 デビード公共事業相のベネズエラ訪問(チャベス・ベネズエラ大統領と会談)
31日 フェルナンデス大統領のブラジル訪問(メルコスール首脳会合に出席)


(2)来訪

10〜13日 Lahcen Daoudiaモロッコ教育相(バラニャオ科学技術相及びシレオニ教育相と会談)
20日 カバジェロス・グアテマラ外相(ティメルマン外相と会談)
26日 Mammadyarovアゼルバイジャン外相(ティメルマン外相と会談)

 

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