I 概要
(1)内政:ブエノスアイレス市内を中心に,治安の悪化やドルの購入規制等に抗議する全国規模のカセロラッソ(抗議の鍋叩き)が行われた。ロレンシーノ経済・財政大臣が2013年予算法案を議会に提出した。児童手当の引き上げ及び家族手当制度の改正がなされた。
(2)外交:(ア)フェルナンデス大統領は第67回国連総会において一般討論演説を行った。同大統領は今次訪米中にムルスィー・エジプト大統領,潘基文国連事務総長,モレーノ米州開発銀行(IDB)総裁等と会談した他,ジョージタウン大学及びハーバード大学にて講演を行った。また,フェルナンデス大統領は訪亜したペニャ・ニエト次期メキシコ大統領と会談した。(イ)ティメルマン外相は国連総会に出席し,イラン外相等と会談した他,アルメニア,グルジア,インドネシア,フィリピン,コロンビア及びペルーを訪問した。(ウ)その他,ジャウアル農牧・漁業大臣及びデビード公共事業大臣が中国を訪問した。(エ)国際通貨基金(IMF)は亜政府に対し,インフレ率等の統計データを期限までに改善しない場合は非難決議を出す旨発表した。
TT 内政
1 労組の動き
(1)5日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長に反対するグループによるCGTの役員選挙の告示(10月3日投開票)が行われた(注:7月12日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は3選を果たしたが,反モジャーノ派は別途CGT役員選挙を実施する方向で調整に入っていた)。
(2)反モジャーノ派CGTでは,カロー冶金業労組代表が同グループの統一候補と見られていたが,同人が,賃上げの基礎となる亜国のインフレ率を約24%と公言するなど,政府の主張と異なる発言を行ったことから調整が難航した(注:国家統計局(INDEC)のデータでは亜のインフレ率は9%台とされている)。
2 全国規模のカセロラッソ(抗議の鍋叩き)の実施
(1)13日夜,ブエノスアイレス市,サンタフェ州ロサリオ市,コルドバ州,メンドーサ州,サンタクルス州,サルタ州及びトゥクマン州等において,大規模なカセロラッソが行われた。今次反政府抗議運動は5月末から断続的に行われてきたカセロラッソ同様,主としてFacebookなどのSNSを介して呼びかけられ,特定の政党による計画,準備及び指導等はなかった。最も規模が大きかったブエノスアイレス市では,各地で道路が封鎖され,鍋をたたきながらの抗議活動が3時間以上にわたって続けられた。最も人が集まったのは大統領府に面する5月広場周辺であり,5万人が集結したと報じられた。今回の反政府デモは,輸出課徴金をめぐってキルチネル派が農牧団体と対立した2008年以来,最大の大規模抗議運動であり,その主体は都市部の中産階級である旨報じられている。なお,今回のカセロラッソは平穏裏に行われ,死者及び負傷者等は出なかった。
(2)今次カセロラッソの主要な争点として,当地報道で挙げられているものは以下の通り。ドルの購入規制,クレジットカードならびにデビッドカードを利用した海外商品の購入に対する15%の追加的な課金,フェルナンデス大統領の再々選を可能にすることを伴う憲法改正,同大統領による国営放送の濫用,治安の悪化,政権幹部の汚職,輸入制限措置,及びインフレに対する不満など。
(3)今次カセロラッソは,フェルナンデス大統領のサンフアン州での演説(注:ラコステ社の製品の製造を担うベスビオ社の生産設備の拡大に伴う演説。通常のテレビ・ラジオ番組を中断して,全国放送された。)の時間帯に合わせて実施された。同演説において,フェルナンデス大統領は今回の大規模デモへの直接的言及は避けたものの,「自分(同大統領)が怖じ気づくことはないし,また怖じ気づかされることもないから安心してほしい」と述べた。
3 児童手当の引き上げ及び家族手当の制度変更
(1)13日,失業者,インフォーマル・セクター及び一部の低所得者を対象とする「児童手当」(Asignacion
Universal por Hijo:AUH)が,10月5日以降,現行の月額270ペソから同340ペソに引き上げられる旨大統領令1667/12号により発表された。右引き上げは,(妊娠12週以降の)妊婦に対する手当にも同様に適用される。また,障害児に対する児童手当も変更され,月額1,080ペソから同1200ペソに引き上げられた(注:児童手当の対象になるのは無収入の者,ならびに最低賃金と同額もしくはそれ以下の月収を稼ぐ者)。
(2)また,政府は正規雇用の労働者に対して給付される「家族手当」の制度も改正した。右改正によると,従来は父親もしくは母親のうち,どちらかの月収が5,200ペソを超えていなければ家族手当を受給することができたが,今次措置により,父親と母親の両方の月収が審査の対象となり,一世帯の月収上限が14,000ペソと定められ,また父母のいずれも単独で7,000ペソ以上の月収を稼いでいてはならない,ということになった。これにより,これまで家族手当を受給していた世帯が給付対象外になるケースが出てくるとともに,これまで同手当を受給していなかった世帯が給付対象になった。すなわち,旧制度の下では,
(ア)父親の月収 4,000ペソ 母親の月収 4,000ペソ→家族手当の給付対象
(イ)父親の月収 10,000ペソ 母親の月収 4,000ペソ→同給付対象
(ウ)父親の月収 5,300ペソ 母親の月収 5,300ペソ→同給付対象外
となっていたが,今次制度変更により(イ)のグループは給付対象外となり,(ウ)のグループは給付対象となる(注:政府の説明では,家族単位で月収を見た方が公正である由)。
(3)制度変更後の家族手当の受給額は以下の通り。
(ア)世帯月収3,200ペソまで:子供一人当たり340ペソの手当。(障害をもった子供の場合は1200ペソ)
(イ) 世帯月収3,201ペソ〜4,400ペソ:子供一人当たり250ペソの手当。 (障害をもった子供の場合は900ペソ)
(ウ)世帯月収4,401ペソ〜6,000ペソ:子供一人当たり160ペソの手当。 (障害をもった子供の場合は600ペソ)
(エ)世帯月収6,001ペソ〜14,000ペソ:子供一人当たり90ペソの手当。 (障害をもった子供の場合は600ペソ)
なお,障害をもった子供がいる家庭の場合,世帯月収に上限がなく,月収が14,000ペソを超えても(エ)のグループ同様,子供一人につき600ペソを受給できるシステムとなっている。
(4)上記家族手当の対象になるのは18歳以下の子供で(注:障害をもった子供の場合は年齢制限はなし),義務教育を受け,然るべき健康診断を受けている子供に限る。母親一人に対し,該当児童5名までが家族手当の給付対象となる。
(5)亜の所得税システムでは,子供がいる家庭で,月収が7,000ペソ以上の世帯に対しては所得税の一部控除が適用されるので(注:月収に応じて年間に最大で7,200ペソまで同税が控除になる),政府は世帯月収が14,000ペソを超え,家族手当の給付対象から外れた場合も,事実上は社会保障の対象になるとした。今次制度改正により,これまで5,200ペソ〜7,000ペソの月収を稼いでいた人は,家族手当の給付対象でもなく,所得税の一部控除の対象でもなかったが,右状況が改善される由。
4 放送法改正法をめぐる動き
17日,放送事業の監督を担う「連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構(Autoridad Federal
de Servicios de Comunicacion Audiovisual:AFSCA)」の代表にキルチネル派サバテラ下院議員(注:元ブエノスアイレス州モロン市長)が就任した。右人事により,AFSCAはメディアにおける「寡占」状態を禁じる法律である放送法改正法の完全施行に向け,一気に舵を切った形となった。政府は同改正法の一部条項に適用されている施行の延長措置の期限が12月7日に切れるとし(注:当地では7Dの呼称が用いられている),それ以後,クラリン・グループ等の大手メディアは事業の削減及び縮小を行わなければならないとしている。大手メディアは,同改正法が表現・報道の自由,既得権・私有財産の保障等を規定する亜憲法に違反するとして反論している。
5 2013年の予算審議
(1)20日,ロレンシーノ経済・財政大臣は2013年予算法案を議会に提出した。右法案は下院予算委員会において審議が開始されたが,同委員会においてロレンシーノ大臣は,来年の亜の貿易収支は133億ドルの黒字,同一次財政収支は593億ペソの黒字との予想を示し,2013年の亜のマクロ経済の動向に関してポジティブな予測を行った(注:同予測によると,来年の亜のGDP成長率は4.4%,インフレ率10.8%,平均為替相場1ドル=5.10ペソ,輸出額928億ドル,輸入額795億ドル等となっている)。その根拠として同経済・財政大臣は,伯と中国の経済回復及び大豆の記録的な豊作という要因を挙げた。亜金融当局によると,来年は今年以上に中銀の外貨準備を対外債務(公的債務)の返済に充てる予定となっており,同返済基金への割当額は現在の約56億ドルから約80億ドルに引き上げられる見通し。野党勢力は,政府が来年の連邦議会選挙の対策として,対外債務返済後の外準剰余金を一般財源化し,景気刺激策やバラマキに充てようとしている旨批判した。
(2)当地報道によると,2013年予算法案の中身にはキルチネル派の政治色が強く反映されており,その内訳を見ると,国家社会保障機構(ANSES)が実施する年金受給者に対する各種保障や児童手当,また赤字経営に苦しむ国営のアルゼンチン航空への補助金投入やエネルギー関係投資などが目立ち,鉄道などのインフラ整備や教育への投資は後回しにされている。当地メディアは,今次予算法案を亜社会にとってのプライオリティーを軽視した内容と批判しており,とりわけ,プロサッカー・リーグのテレビ放映権料の支払いや「みんなのサッカー」(Futbol
para todos)の番組制作費用等に多額の予算が振り分けられることに対し疑問を呈している。なお,国営放送では,同サッカー番組など高視聴率が狙える番組の枠内で,政府の政策宣伝用のスポット広告が放映されており,同広告ではANSESによる各種社会保障プログラムの宣伝の他,現政権が敵視しているクラリン・グループに対する攻撃やキルチネル派に反発する州知事らに対する批判が展開され,右広告に巨額の予算が投じられている。
6 エビータ紙幣及びマルビナス硬貨の流通開始
(1)21日,亜中央銀行は,エバ・ペロン元大統領夫人の没後60周年を記念して発行された,同人の横顔が印刷された新100ペソ紙幣及び「マルビナス諸島,南ジョージア諸島,南サンドイッチ諸島奪還30周年記念」の新2ペソ硬貨の流通を開始した。当初,同新紙幣は「記念紙幣」として枚数限定で発行される予定であったが,フェルナンデス大統領がエビータ札の発表会(7月25日)の席で,突然,現行の100ペソ札(注:ロカ元大統領の顔が印刷されている)との交換を進めるよう造幣局に指示したため,関係当局は急遽対応に迫られることとなった。今回流通を開始した新紙幣は2千万枚であり,市中に出回る現行の100ペソ札全てと入れ替えるためには,さらに18億枚を刷る必要があるが,銀行等はその実現可能性につき疑問視している。
(2)エビータ札と同時に流通を開始したのが「マルビナス諸島,南ジョージア諸島,南サンドイッチ諸島奪還30周年記念」の新2ペソ硬貨であるが,こちらに関しては,事前の情報がないまま発行された。「2ペソ」と書かれた新硬貨の表面には,亜大陸の一部と,亜が主権を主張しているマルビナス(フォークランド)諸島,南ジョージア諸島,南サンドイッチ諸島,及びその周辺海域並びに南極大陸の一部がデザインされている。裏面の中央には,マルビナス(フォークランド)諸島の地図があり,その上には同諸島の領有権問題で亜の立場を支持している南米諸国連合(UNASUR)の紋章が重ねられている。また,同面には亜が英国に領土を侵略されたと主張する「1833」の年号及びフォークランド(マルビナス)諸島奪還30周年を意味する「1982−2012」の年号が印字されている。さらに同面には「アメリカ地域の主張」(Causa
Regional Americana)と書かれており,こちらもUNASURの立場を表している。
7 労災保険法改正法案の審議
25日,上院の労働・社会予防委員会において労災保険法改正法案の審議が行われた。労災保険法改正法案が定めるところによると,労災により障害を負った労働者や,労災により死亡した労働者の家族に対する最低補償額が大幅に増額となる一方で,被保険者(労働者またはその家族)は,右補償金を受け取るか,もしくは雇用主に対して訴訟を起こすかの二択を迫られることになる(注:現状では,被保険者は労災保険会社(ART:Aseguradora
de Riesgos del Trabajo)からの補償給付を受ける一方で,訴訟も起こすケースが殆どとなっている)。同改正法案に関しては,亜工業連盟(UIA)のメンディグレン会長及びカロー冶金業労組代表(兼CGT(労働総同盟)反モジャーノ派代表)等が,訴訟件数の減少及び労災の防止につながるとし,支持の姿勢を示している一方で,モジャーノCGT書記長らは同改正法案に猛反発している。
III 外交
1 WTO
3日,亜政府は,過去11年間,米国が実施してきたレモンの輸入制限は,科学的根拠に欠けるものであると主張し,WTO事務局に対し,米国によるトゥクマン産レモンの輸入に対する規制見直しに向け,同国との二国間協議の実施を要請した。
2 アルメニア
ナルバンジャン外相からの招待を受け,4日,アルメニアを訪問したティメルマン外相は,セルヒ・サルグシャン大統領,ナルバンジャン外相,チグラン・サルグシャン首相と会談した。右会談後,両国外相は,スポーツ分野における協力協定への署名を行った。
3 ウルグアイ
UPM社のセルロース工場による汚染を否定するウルグアイ政府の発表(3日)に対し,5日,亜外務省は同工場による工業排水の川への流出,両国間で合意された規定量を超えるセルロースの生産及び,ウルグアイ政府がモニタリング妨害,UPM社の必要に合わせた環境規定変更を行っている旨公表する報告書を発表した。
4 コロンビア
コロンビア政府とFARCの対話開始に際し,5日,亜外務省はプレスリリースを発出し,コロンビア国民の政治的,社会的生活に平和をもたらす(コロンビア政府の)努力を全力で支持する姿勢を表明した。
5 グルジア
6日,グルジアを訪問したティメルマン外相は,サーカシヴィリ大統領,メラビシヴィリ首相,ヴァシャッゼ外相との会合を実施した。サーカシヴィリ大統領は,亜がグルジアを国家として承認した最初のラテンアメリカの国であり(1919年),ソ連崩壊後の1992年に再度亜からの国家承認を受けた旨指摘し,感謝の意を表した。また,ティメルマン外相は,同大統領に対し,更なる技術協力,特に乳製品及び肉類の生産並びに加工に関する農産加工業分野における亜の経験共有を提案した。
6 インドネシア
9日〜12日にかけ,インドネシアを訪問したティメルマン外相は,ジャカルタにてマルティ外務大臣と会談し,両国が協働して第3国への援助を行う目的で,南南三角協力に関する合意文書への署名を行った。
7 中国
(1)ジャウアル農牧・漁業大臣訪問
10日〜13日にかけ中国を訪問したジャウアル農牧・漁業大臣は,韓長賦農業部長と会談し,右会談後,インフラ整備,産業,新しい技術分野での大規模工事を目的とした100億ドルの協力基金の創設及び,緊急時の食料として50万トンの穀物保存メカニズムを設置する旨公表した。また,両国大臣は,右提案の検討に向け,貿易や投資に関心を持つ中国企業家ミッションの訪亜(11月予定)をはじめ,ワーキング・グループを設置することで合意した。また,12日,ジャウアル大臣は,中国への農作物輸入及び亜産食品のイメージを世界中に広める為に,上海のフリーゾーンに通商組織を設置することに関し,同意書に署名を行った。
(2)デビード連邦企画・公共投資・サービス大臣訪問
26日〜28日にかけ,デビード連邦企画・公共投資・サービス大臣は,サンタクルス州へのダム建設計画に際し,施工業者を探す目的で中国を訪問した。亜政府の発表によると国営企業2社が関心を示した。28日,中国核工業集団公司(CNNC)は,亜への4箇所目となる原子力発電所設置に関心を示し,来年予定されている入札への参加を表明した。また,張暁強(Zhang XiaoQiang)国家発展改革委員会副議長との会談にて,中国政府は,亜市場への電話会社の参画を支持する意向を表明した。
8 リビア
11日,亜政府は,リビア・ベンガジでの在リビア米国総領事館襲撃を強く非難すると同時に,右事件により命を落としたスティーブンス駐リビア米国大使をはじめ,米国人及びリビア人の犠牲者に対し,弔意を表明した。
9 ベネズエラ
12日〜14日にかけベネズエラを訪問したジョルジ産業大臣及びデビード連邦企画・公共投資・サービス大臣は,ラミレスPDVSA総裁及びメネンデス科学技術・中工業大臣と会合し,PDVSA社及びYPF社参画のもと,石油化学分野での協力に向けた戦略を確立することで一致した。また,14日,マドゥーロ外相と会合し,国立産業技術研究所(INTI)での技術育成及び工場及び開発センター設置に関する協力協定に署名した。
10 フィリピン
13日〜14日にかけ,二国間協力をはじめ,二国間関係強化を目的にフィリピンを訪問したティメルマン外相は,デル・ロサリオ外相と会談し,二国間協力関係強化,文化及びスポーツ分野での交流拡大について言及した合意文書への署名を行った。また,亜は2012年より,同国に対し,5月〜10月の間にコンテナ約3千個分のミカンを輸出する予定で,両国の企業間での共同計画の重要性を強調した。14日,ティメルマン外相は,ベニグノ・アキノ3世大統領と会合した他,リム・マニラ市長との会合,フォークランド(マルビーナス)諸島領有権問題に関し亜に連帯を示すグループとの会合, 講演会「亜の外交政策:ラテンアメリカにおける地域開発及び南南協力」を実施した。
11 IMF
17日,国際通貨基金(IMF)は,亜国家統計局(INDEC)発表の経済指標の評価を終え,18日,インフレ率等に問題がある(注:実際のインフレ率よりも大幅に低く表示されている)旨指摘し,3ヶ月の間に遅延なく修正したデータが提出されない場合は「追加措置を講じる」旨,方針を発表した。また,24日,ラガルドIMF専務理事は,右改ざん問題に関し,亜は既にイエローカードの警告を受けている,12月17日までに,インフレ率等の修正データが提出されない場合,亜に対し「レッドカード(IMFの非難決議)を出す」旨警告した。25日,フェルナンデス大統領は,国連総会の一般討論演説の中で,ラガルドIMF専務理事の上記発言内容に関して反論した。
12 フォークランド(マルビーナス)領有権問題
(1)フォークランド(マルビーナス)諸島付近で亜政府の許可なしに石油及び天然ガスの発掘を行っていた英国企業フォークランズ・オイルは,17日,同諸島から東に200キロメートルの地点にガス油田を発見した旨発表した。
(2)27日,軍艦エジンバラ号の南大西洋への出発に関する英国政府の発表に対し,ティメルマン外相は,紛争の平和的解決をスローガンに掲げた国連総会開催中に右発表を行うことは,国連に対する侮辱であると同時に,二国間の主権問題に関する対話再開以外に島民の生活安定を保障する方法がない現状において,無責任な行動であると非難した。
13 メキシコ
21日,フェルナンデス大統領は,大統領府にてペニャ・ニエト次期メキシコ大統領と会談し(メキシコ側:デル・リオ駐亜メキシコ大使,ビデガライ政権移行総調整官,ロソーヤ国際関係総調整官補,亜側:スアイン筆頭外務副大臣,バカ駐メキシコ亜大使同席),二国間関係につき協議した。ペニャ・ニエト次期大統領は,プレスに対し,任期開始より,亜・メキシコ二国間の友好関係を強化,緊密化したい旨表明し,「(両国が)より緊密に協働していく事への関心を再表明する目的で今回訪亜した。そうすることで,通商関係及び文化交流を更に拡大し,(両国の)戦略的協力に関する合意を促進させることができるだろう。近年,亜との交流は増加しており,二国間関係の将来には大いに期待できる。」旨述べた。また,同次期大統領は,フェルナンデス大統領を12月1日に予定されている就任式に招待した。
14 第67回国連総会
(1)フェルナンデス大統領演説
第67回国連総会出席の為、ニューヨークを訪問したフェルナンデス大統領は、25日,一般討論演説の場で,(ア)ラガルドIMF専務理事への反論,(イ)イランとの二国間外相会談の実施,(ウ)フォークランド(マルビーナス)諸島領有権問題,(エ)亜の非常任理事国就任(2013年―2014年)等に関するスピーチを行った。
(2)二国間会談
(ア)フェルナンデス大統領
フェルナンデス大統領は,同総会中,ハンガリーの投資家ジョージ・ソロス氏(24日),潘基文国連事務総長(25日),ムルスィー・エジプト大統領(25日),モレーノ米州開発銀行(IDB)総裁(26日),ティラーソン・エクソンモービルCEO(ガルッチオYPF社CEO同席)(27日)との会談を実施した。
(イ)ティメルマン外相
ティメルマン外相は,メデルチ・アルジェリア外相(24日),ヒナ・ラッバーニ・カル・パキスタン外相(24日),サーレヒ・イラン外相(27日),リーベルマン・イスラエル外相(28日),ラブロフ露外相(28日)と会談した。
(3)フェルナンデス大統領講演会
今次米国訪問の機会に,フェルナンデス大統領は,ジョージタウン大学(26日)及びハーバード大学(27日)にて,亜の政治経済政策に関する講演会を実施し,学生からの質問に回答した。右質疑応答では,同大学の学生たちが,亜のマスコミがフェルナンデス大統領に普段聞きたくても聞けないことを質問したが,それに対する同大統領の返答振りが不適切だったとし,当地報道で大きく批判された(質問の内容に怒ったフェルナンデス大統領は,講演後に同大学にて予定されていたレセプションをキャンセルして帰った由)。また当地報道は,フェルナンデス大統領が学生たちに対し,亜のマスコミとは日常的に対話していると発言したことにつき,事実ではないと批判をした他,ドルへの両替規制(Cepo
Cambiario)はないとする説明や同大統領の近年の個人所得の激増の理由に関する答弁を批判した。なお,フェルナンデス大統領の米外遊中,ニューヨーク等で亜国民を中心とする人々によるカセロラッソ(亜政府に対する抗議の鍋叩き)が実施された。
15 イラン
18日,国連イラン政府代表部は,国連亜政府代表部に対し,第67回国連総会の場での両国外相会談の実施を書簡にて要請した。右を受け,27日,ティメルマン外相及びサーレヒ・イラン外相は,ニューヨーク国連本部にて会談し(亜側:スアイン筆頭外務副大臣,イラン側:ザビーブ外務省米州関係局長同席),両国の司法システムに矛盾しない法的メカニズムを構築する目的で,両国外務省が正式に任命した代表を通じて,10月にジュネーブの国連本部で交渉を続ける旨決定した。同時に,両国外相は,94年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関し,両国政府が全ての点で合意に到る方法を見出すまでは本プロセスを中断しない旨決定した。
16 イスラエル
28日正午,ティメルマン外相は,ニューヨーク国連本部にて,リーベルマン・イスラエル外相と会談し,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関し,最近の動向を踏まえた上で協議した。ティメルマン外相は,亜・イスラエル二国間外相会談実施前に,在亜イスラエル大使館が,27日に行われた亜・イラン外相会談について批判的に言及したプレスリリースを発出したことに対し驚きを示した。ティメルマン外相は,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関し,常に被害者及び遺族を中心に考えた上で決定を行い,本件における責任の所在を明らかにする目的で,国内の法的システムに則った,法的決定を目指す亜政府の立場を繰り返し表明した。
また,ティメルマン外相は,英国によるマルビーナス(フォークランド)諸島,南ジョージア諸島,南サンドイッチ諸島及び,周辺海域の不当な領有権侵害に対する亜の立場を例に挙げつつ,紛争の平和的解決は亜国民の意志である旨表明すると同時に,イスラエル政府に対し,本件領土問題に対する支持を要請した。
最後に両国外相は,経済・政治面における緊密な関係を再確認し,両国を結ぶ歴史的な友好の絆を強調した。ティメルマン外相は,イスラエル政府からの同国訪問の招待を受けたことに対し感謝の意を表した。
17 要人往来
(1) 往訪
3日 |
アラク司法・人権大臣英訪問(ケンブリッジ大学で講演) |
4日 |
ティメルマン外相アルメニア訪問 |
5日 |
ガルッチオYPF社CEOロシア訪問 |
6日 |
ティメルマン外相グルジア訪問 |
9日〜12日 |
ティメルマン外相インドネシア訪問 |
10日〜13日 |
ジャウアル農牧・漁業大臣中国訪問 |
12日〜14日 |
デボラ・ジョルジ産業大臣,デビード連邦企画・公共投資・サービス大臣ベネズエラ訪問 |
12日 |
メイヤー観光大臣エクアドル訪問(キトにて開催された第54回米州地域委員会会合出席) |
13日 |
アラク司法・人権大臣ボリビア訪問 |
13日〜14日 |
ティメルマン外相フィリピン訪問 |
18日 |
モレーノ国内取引長官ブラジル訪問 |
20日 |
ティメルマン外相コロンビア訪問(オルギン・コロンビア外相との政策協議実施) |
20日 |
デビード連邦企画・公共投資・サービス大臣ブラジル訪問 |
21日〜28日 |
ガルッチオYPF社CEO米国及び英国訪問 |
22日〜28日 |
フェルナンデス大統領,ティメルマン外相,スアイン筆頭外務副大臣米国訪問(第67回国連総会出席) |
26日〜28日 |
デビード連邦企画・公共投資・サービス大臣中国訪問 |
30日 |
ティメルマン外相ペルー訪問(ナビール・エル・アラビー・アラブ連盟事務局長と会談) |
(2)来訪
10日 |
マルギ・イスラエル宗教相 |
21日 |
ペニャ・ニエト次期メキシコ大統領 |