中前隆博大使挨拶

令和3年1月7日

2022年新年挨拶

 
     謹んで新年のお慶びを申し上げます。 
 
2021年も新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、困難の絶えない一年でしたが、こうした中でも創意工夫を重ね、日本とアルゼンチンの関係強化を含め、大きな進展や足跡を残すことが出来た一年だったのではないかと思います。
 
 まず、日本とアルゼンチンの二国間関係では、昨年1月の茂木外務大臣(当時)によるアルゼンチン訪問がありました。茂木大臣はフェルナンデス大統領及びソラー外務大臣(当時)とそれぞれ会談を行い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化や、経済を始めとする様々な分野での二国間関係の強化に向けて引き続き連携していくことを確認しました。さらに、昨年12月には、林外務大臣とカフィエロ外務大臣の両国新外相の間でテレビ会談を行い、基本的価値及び日系社会の絆で結ばれている両国の戦略的パートナーシップを強化していくことを確認しました。
コロナ禍においても、様々なレベルでの対話を継続していくことは重要であり、茂木大臣によるアルゼンチン訪問で始まった一年を、林大臣及びカフィエロ大臣の両国新外相間のテレビ会談で締めくくることができたことは、二国間関係促進において有意義でありました。本年も、岸田政権とフェルナンデス政権のリーダーシップの下、このようなハイレベルの対話の機会通じて、両国関係の連携構築を図ってまいります。
 
経済に目を向けると、コロナ禍により2020年から引き続き経済活動に一定の制約がかかっていたことに加え、債務再編交渉による先行きの不透明感もあり、企業にとって難しい局面が続きました。こうした中、日本大使館は、日・アルゼンチン間のビジネス環境を改善し当地日系企業の活動を支援するため、在アルゼンチン日本商工会議所、アルゼンチン外務省及び生産開発省とともに約2年ぶりとなるビジネス環境整備委員会第六回会合を9月に開催しました。同委員会では、現政権の経済政策および当地ビジネス環境に対する日系企業の見方について率直かつ有意義な意見交換を行うとともに、今後の同委員会の定期的な開催について一致しました。
新型コロナウイルスを巡る状況は予断を許しませんが、昨年のアルゼンチンの経済成長率は9%以上となり、パンデミックからの回復傾向が顕著に見られます。こうしたポストコロナの経済回復の機会を捉えるべく、本年は日本・アルゼンチン間の官民対話枠組みを有機的に連携させながら、日系企業のビジネス環境の改善に努めてまいります。
 
そして、2021年を振り返る上で欠かせないのは、やはり東京オリンピック・パラリンピック大会ではないでしょうか。コロナ禍による大会延期という史上初の経験により、試行錯誤の日々と想像しがたい困難に直面する中、最善の準備と最高のパフォーマンスで私たちに勇気と感動を与えてくださった全てのアスリートの皆様と関係者の皆様に心からの敬意を表します。アルゼンチン選手団はオリンピック・パラリンピックの双方で素晴らしい活躍をし、計12枚のメダルを獲得しました。本来であればこの機会に訪日を考えていた方も多かったと思いますので、それが叶わなかったのは残念ではありますが、12時間の時差を乗り越え、テレビやインターネットで東京大会を応援し、温かみのあるホストタウン交流を重ねることで、日本とアルゼンチンの友情がさらに深まり、相互理解が進展したことはとても重要です。
国民一人ひとりのおもてなしの心で深化したローカルレベルの交流と今次大会を通じて得られたスポーツ当局間の協力関係が、今後ますます発展していくことを期待するとともに、31年ぶりにアルゼンチンで開催予定の2023年日系国際スポーツ親善大会(CONFRA)に向けて、両国がともに東京大会のレガシーを存分に活用できることを楽しみにしています。
 
オリンピック・パラリンピックに続いて、2025年には20年ぶりに日本で大阪・関西万博が開催される予定です。既に多くの国・地域が参加を表明しており、アルゼンチンからも参加を表明いただいております。同万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」であり、地球環境問題や公衆衛生の改善等、人類共通の課題解決に向け、ICTの活用などの先端技術を駆使し、世界80億人が新たなアイディアを創造・発信する「未来社会の実験場」(People’s Living Lab)というのをコンセプトにしています。パンデミックの経験を踏まえ、その克服を象徴する博覧会にしたいと考えており、引き続き情報発信を行ってまいりますので、楽しみにしていただければ幸いです。
 
日本大使館の広報・文化事業においても、感染予防策の徹底やデジタル技術の活用等、知恵を絞ってコロナに立ち向かった一年になりました。日本文化の紹介や日本留学に関する説明会等、オンライン型及びハイブリッド型の発信事業を数多く実施し、コロナ禍においても活発な二国間交流を行いました。本年は、これまでの経験を踏まえながら、より一層交流の輪を広げ、2023年に迎える日・アルゼンチン外交関係樹立125周年に向けた機運を醸成してまいります。
また、大学やシンクタンクなどの団体が主催するウェビナーにも積極的に参加し、日本政府の取組を知ってもらう機会を設けるとともに、学生から著名な有識者に至るまで、様々な方々と意見交換を行いました。地理的に遠く離れている日本とアルゼンチンだからこそ、複雑化する国際情勢についてアルゼンチンの皆様と意見を交わすことはとても有意義であるため、今後も岸田政権が目指す自由で開かれた国際秩序の実現に向けた知的交流を更に促進してまいります。
 
さて、2022年は国連人権理事会やラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の議長国を務める等、アルゼンチンにとって特別な1年となります。また、第10回NPT運用検討会議の議長候補はアルゼンチン人の方が務めています。
人権及び軍縮・不拡散、いずれも岸田政権が重視する政策課題であり、自由で開かれた国際秩序の実現のために不可欠な分野です。我が国と基本的価値を共有するアルゼンチンは、民主的で繁栄する中南米・国際社会のために極めて重要な役割を有しているとの認識の下、国際場裡においても緊密に連携してまいります。
 
 最後に、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。
 
 
令和4年(2022年)1月
アルゼンチン駐箚日本国特命全権大使 中前 隆博

2021年新年挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 
令和2年は全ての人にとり、未曾有の試練の年となりました。新型コロナウイルスが瞬く間に世界中に拡散し、日常に大きな影響を与え、改めて、現代社会が地球規模で密接につながっていることを認識させられました。
 
その一方で、未曾有の危機を前に、人々の知恵と技術、そして連帯と忍耐が試され、かつてないほど人間の創造力と柔軟性が発揮された年でもありました。未知のウイルスに対する研究と開発はこれまでにない速度で進み、人々は現実の世界においてウイルスに阻まれた多くの事業をバーチャルの世界で実現して見せました。
 
感染と強制隔離が続く中、当館の活動も、例年とは全く異なるものとなりました。国際便・国内便が停止される中、アルゼンチン国内に取り残されてしまった在留邦人が多くいらっしゃいました。そうした方々に対し、関連情報の提供を行い、最善の方法で移動や出国ができるよう、支援をさせていただきました。
 
また、情報発信の方法についても一層の工夫と努力をいたしました。日本の新型コロナ感染状況や政府による取組を伝達すべく、スペイン語資料を随時提供したほか、大学やシンクタンクが主催するウェビナー等に出席し、日本の新型コロナウイルス対策などについて講演しました。日本の取り組みは徐々に注目されるようになり、当地でも、日本で考案された「3密」対策が「3C」として各種メディアで取り上げられました。外交を始めとする日本に関する講演も含め、これまでオンラインで10回の講演を行いました。また、文化紹介でも、オンライン型の取組を実施しました。これが集客型の行事に完全にとって代われる訳ではありませんが、時間、距離、予算等の制約をほとんど受けないというメリットは、回を重ねるごとに実感しました。令和2年に当館が開催したオンラインの広報文化行事は60回にのぼりました。
 
日亜両国は新型コロナ対策でも協力を行いました。12月には、アルゼンチンの新型コロナ対策支援として、ソラー外務大臣と5億円相当の医療機材の供与に係る交換公文の署名を行いました。これにより、感染者数の多いブエノスアイレス州内の公立病院に、MRIやCTといった医療機材が供与されることとなります。更には、ブエノスアイレス州内の大学や病院に対し機材供与を行うこととなりました。今後とも、アルゼンチンでの感染状況や取組を踏まえつつ、支援を継続していきたいと思います。なお、こうした困難な時期において、日系団体の中には、患者受け入れのために自らの施設を医療代替施設として地域社会に提供したり、マスクやフェースガード等の医療備品を寄贈したり、また感染拡大で打撃を受けた貧困層に食料を提供された団体が存在したと承知しております。心より敬意と感謝の念を表します。危機から生まれた連帯感は、必ず人々の記憶に残り、日亜間の相互の信頼の醸成に資することでしょう。
 
こうした困難な時期だからこそ、両国間での様々なレベルでの対話の継続は一層重要になります。12月18日には、オンラインで両国間の次官級政策協議が行われ、両国新政権の下での関係強化に向けた方向性につき有益な議論が行われました。その後、令和3年の幕開けとともに、茂木外務大臣がアルゼンチンを訪問しました。同訪問は、アルゼンチンにとっては、新型コロナ発生以降初めての要人訪問となりました。また、日亜両国の新政権の間での最初の外相訪問となりました。防疫を徹底した新たな形の対面外交を実現すべくアルゼンチン政府とともに試行錯誤したことは貴重な経験となりました。茂木大臣は、フェルナンデス大統領及びソラー外務大臣とそれぞれ会談を行い、ビジネス環境整備を含めた経済関係の強化とともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現に向けて戦略的パートナーとして協力していくことで一致しました。
 
両国国民の相互理解も促進していかなければなりません。令和3年から、日亜学院が短期大学部を開設し、異文化教育のための日本語・日本文化コースを開講することになりました。多くの人が同コースを卒業し、日本語教師や日本文化専門家として巣立つことを楽しみにしております。また、SNSも重要な役割を果たしております。大使館のSNSに加え、私のツイッターやインスタグラムも皆さんが常日頃から熱心にフォローしてくれて大変嬉しい限りです。この場を借りて、いつも日亜両国の発展を促すような応援コメントやいいね!をして頂いている皆さんに、お礼を申し上げたいと思います。
 
厳しい状況は続きますが、令和3年が引き続き日亜両国関係の発展につながる1年となるよう、皆様とともに前進して参りたいと考えております。
 
そして新型コロナウイルスの終息と世界の平和を願いつつ、人類がこのウイルスに打ち勝った証として、今年こそは、東京オリンピック・パラリンピック大会が世界の期待に応え実現されることを期待しています。
 
最後に、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。
 
令和3年(2021年)1月
アルゼンチン駐箚日本国特命全権大使 中前 隆博

2020年新年挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 
昨年8月に18年ぶりに着任して以来、ブエノスアイレスの街の魅力とアルゼンチンの国土の豊かさをあらためて実感しながら、旧知の友人や新たに得た知己のおかげを頂きつつ任務に従事してきました。また、首都近郊や地方の日系社会を訪問する機会に恵まれ、各地の日系人の方々のご活躍並びに日系人の方々が日亜友好の懸け橋としてかけがえのない貢献を行ってこられたことに改めて感銘を受けました。
 
さて、2019年の日本とアルゼンチンを振り返ってみると、2018年の日亜外交関係樹立120周年に引き続き、両国の関係強化及び戦略的関係の深化につながる種々の機会がありました。
 
まず、日本はG20議長国として、前議長国アルゼンチンと緊密に協力しつつ、全ての関連会合を無事開催することができました。6月に開催されたG20大阪サミットには、アルゼンチンからマクリ大統領が出席され、4年連続となる両国首脳会談も実施されました。そこでは両国の戦略的パートナーシップを再確認し、両国の共通の関心に基づきながら目下のアジェンダを確認することができました。その後も日本では各地で各種のG20閣僚会合が開催され、11月に名古屋で開催された外相会合で幕を閉じました。この外相会合にはフォリー外相が出席し、トロイカとしてのアルゼンチンの最後の大役を務められました。この2年間を通じてG20での協力を進めてきたことにより、共通の価値観を有する両国が国際社会で協力する関係を示すことが出来たものと考えます。
 
加えて、記憶に新しいのはアジアで初、そしてラグビー伝統国以外で初の開催となったラグビーワールドカップ日本大会です。ラグビー伝統国であるアルゼンチンから参加した代表チームは、訪問した日本各地で現地の人々と交流し、両国民間の友好関係の促進に大きな役割を果たしました。
 
2019年は日本とアルゼンチン両国にとって大きな変化の一年でもありました。
 
日本では、5月1日の新天皇御即位と改元とともに令和の時代が幕を開けました。「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」という意味が込められた令和の時代への期待は高く、また海外からも多くの注目を集めたことと思います。10月22日に行われた即位礼正殿の儀への外国参列者は423名という国際色豊かな式典となり、アルゼンチンからもミケティ副大統領が出席されました。
 
他方、アルゼンチンでは10月に大統領選挙が実施され、12月10日にアルベルト・フェルナンデス大統領が就任されました。80%を超える高い投票率に裏付けられた民主的な選挙の実施をお祝い申し上げるとともに、アルベルト・フェルナンデス大統領が率いる新しい政権と協力して、これまで育んできた両国間の永い友情と多方面に渡る緊密な連携を引き継ぎ、この勢いを維持し更に発展させていけるよう取り組んで参る所存です。12月10日の新大統領就任式には、日本から山本幸三日亜友好議連会長が特派大使として、藤丸敏衆議院議員と共に出席しました。山本特派大使は訪問中、新政権の要人と数々の会談を行い、両国間のアジェンダを共有・確認したうえで、両国が長年の信頼と共通の価値観に基づく戦略的パートナーであることを印象付けました。アルゼンチンがその歴史の新たな1ページを開くとともに両国関係も新たな段階を迎え、気が引き締まる思いです。
 
さて今年は、2018年ブエノスアイレス・ユース五輪に続く、東京オリンピック・パラリンピック開催を控えた年でもあります。前回東京オリンピック・パラリンピックが開催された1964年から、日本も世界も大きく変わっています。このオリンピック・パラリンピックが、スポーツを通じて世界各国との友情を更に深める機会になるよう、また、日本が自信をもってアピールすることのできる新たな社会の在り方を見せることができるよう、私達もしっかりと東京オリンピック・パラリンピックの大会ビジョンを伝えていきたいと思っています。その大会ビジョンとは、「全員が自己ベスト」「多様性と調和」そして「未来への継承」です。まさにスポーツを通じて、世界にポジティブな改革をもたらす大会とできるよう、日本一丸となって取り組んでいるところです。
 
そして、オリンピック・パラリンピックを開催年である2020年は、わが国は訪日外国人観光客数4000万人の達成を目指しています。2017年10月に日本は中南米で初めてアルゼンチンとの間にワーキングホリデー査証制度を導入しました。年間200人の枠で始まったこの制度によって、日系人の方々も含めた多くの若いアルゼンチン人が訪日し、仕事をしながら観光し、そして、日本語や日本文化等について研鑽される機会を得ることができました。2020年からは同制度が更に拡大され、年間400件の枠になります。今後更に多くの若者が同制度で訪日されることが期待でき、大変うれしく思っているところです。
 
2020年が引き続き日亜関係の発展につながる1年となるよう、日系人の皆様、そして当地でご活躍されている日本人の皆様とともに取り組んでいきたいとの気持ちを新たにしています。今年も変わらぬご指導、ご助言を賜りますようお願いいたします。
 
輝かしい年頭にあたり、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。
 
令和2年(2020年)元旦
アルゼンチン駐箚日本国特命全権大使 中前 隆博
 

着任挨拶

8月31日に駐アルゼンチン日本国特命全権大使として着任いたしました中前隆博(なかまえ たかひろ)です。
9月9日には、マウリシオ・マクリ・アルゼンチン共和国大統領に信任状を捧呈する機会を得て、今後も二国間の戦略的関係を益々発展させる所存であることを伝えました。
 
     
写真提供:アルゼンチン大統領府
 
日亜関係は過去4年間、連続して首脳会談が行われるなど、かつてない勢いをもって進展し、政治、経済、草の根レベルで様々な交流が活発化しました。昨年2018年は、アルゼンチンでのG20開催やユースオリンピックの開催により世界中からブエノスアイレスに注目が集まる中、日亜外交関係樹立120周年をお祝いしました。今後もあらゆるモメンタムを二国間関係強化の推進力として活かし,交流の発展につなげていきたいと思っています。
また、両国友好の架け橋としてかけがえのない貢献を行った日系社会にあらためて感謝したいと思います。100年以上の歴史を通じアルゼンチン社会でその地位を築いてこられた事実と、日々の生活を通じて培ってこられた日本の文化に対する信頼こそが、現在の二国間の友好の土台になっているということを、アルゼンチンの方に会う度にひしひしと実感します。そうした日系社会のこれまでの努力に感謝の気持ちを忘れることなく、これからも日系社会の皆様と共に、日本とアルゼンチンの伝統的に良好な外交関係を、更に進展させることができるよう尽力していきたいと存じますので、何卒よろしくお願い致します。
 
令和元年9月
駐アルゼンチン日本国特命全権大使
中前 隆博