山内弘志大使挨拶

令和5年1月1日

2023年新年挨拶

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。
 
 日本とアルゼンチンの外交関係樹立125周年という記念すべき年始にこうしてご挨拶できることを光栄に思います。
 
 2022年、コロナ禍が終熄の兆しを見せ、アルゼンチンも新たな日常に適応しつつあります。アルゼンチン着任後のハイライトは、何と言ってもサッカーW杯でのアルゼンチン代表の優勝です。これまで経済状況やコロナ禍により多くの困難に直面してきたアルゼンチンの皆さんにこの上ない喜びを与え、その熱狂ぶりが世界中で注目されました。本年は、フランスでラグビーW杯が開催され、日本とアルゼンチンが対戦予定です。そして、2月にはここアルゼンチンで日系国際スポーツ親善大会(CONFRA)が開催されます。スポーツを通じた両国の交流が一層深まることが期待されます。
 
 また、昨年は、力による一方的な現状変更の試みや威圧が行われる事態に直面し、「平和で安全な生活」や「法の支配」といったこれまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値の重要性をまざまざと意識させられた1年でもありました。先の大戦の反省の下で構築された国際秩序が厳しい挑戦にさらされる中、アルゼンチンは、議長国を務めた国連人権理事会やラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の場で、改めて「人権の尊重と保護」や「平和のための対話」を重視する旨の発信を行いました。我が国もまさにこうした理念を共有しており、同志国との連携を強化し、国際社会への貢献を続けてきました。
 そのような中で、両国ハイレベルの接触が活発化し、9月のフィルムス科学・技術・イノベーション大臣の訪日、10月の武井外務副大臣のアルゼンチン訪問に続き、本年1月、外交関係樹立125周年の幕開けに、林外務大臣がアルゼンチンを訪問します。これまで積み重ねた両国の信頼関係をこの機会に再確認し、普遍的価値を共有する両国の更なる協力強化が期待されます。
 
 国際情勢の不安定化によるエネルギー及び食料価格高騰の影響は世界中の経済に波及しました。アルゼンチンも例外ではなく、インフレ率が急加速するなど一層不安定化したと言えます。経済成長率こそプラスを維持したものの、高インフレと外貨不足対策のための規制が企業活動に多大な影響を与えており、日系企業がおかれている環境も厳しい局面が続いていると理解しています。
 その一方で、アルゼンチンにとり長らく懸案であった対外債務問題については2022年に大きな前進があり、3月にはIMFとの間で新たな財政再建プログラムに合意し、10月にはパリクラブとの間で延滞債務のリスケに合意しました。アルゼンチンが債務の履行により国際的な信用を回復し国際金融市場に復帰することは、資本取引や貿易に対する規制の緩和を通じたビジネス環境の改善につながり得るものと考えられます。当館としても、引き続き政府の施策を注視し、適切な日本企業支援を行ってまいります。
 
 新型コロナの落ち着きにより、集客型の広報文化行事が活発になり、日本大使館もそうした文化行事を積極的に実施しています。例えば、ブエノスアイレス市の象徴的な歴史的建造物「バローロ宮殿」で「美しい東北の手仕事」展を開催し、多くのアルゼンチンの方に日本の伝統工芸の魅力を楽しんでいただきました。また、世界的に有名なマルデルプラタ国際映画祭で、映画上映会「田中絹代特集」を実施し、多くの日本映画ファンに喜んでいただきました。コロナ禍で定着したオンライン行事も、その特性を生かして更に発展させ、昨年1月~2月に中南米地域の9つの在外公館が初めて連携してオンライン書道講演・レクデモを実施し、中南米のみならず世界中から参加いただきました。本年も、外交関係樹立125周年を記念して積極的に広報文化活動を展開していきたいと考えています。
 
 記念すべき外交関係樹立125周年の本年、政治、経済、文化、スポーツ等幅広い分野において、長年の友好関係と普遍的価値を共有する戦略的パートナーとして、日本とアルゼンチンの緊密な協力連携関係がますます深化するように、日本大使館として尽力していく所存です。
 
 最後に、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
 
令和5年(2023年)1月
アルゼンチン駐箚日本国特命全権大使 山内 弘志

着任挨拶

 12月1日に駐アルゼンチン日本国特命全権大使として着任いたしました山内弘志です。私にとっては32年ぶり二度目のアルゼンチン勤務となり、偉大な作曲家アストル・ピアソラのタンゴのように「南に還って(Vuelvo al Sur)」参りました。
 
 日亜関係は、コロナ禍を経て、再び政治、経済、草の根レベルで交流が活発化しており、2023年には外交関係樹立125周年の節目を迎えます。このような機会などを推進力として活用し、日亜関係のポテンシャルをさらに実現するように努力していきたいと考えております。
 
 また、両国友好の架け橋としてかけがえのない貢献を行ってきた日系社会にあらためて感謝したいと思います。100年以上の歴史を通じてアルゼンチン社会でその地位を築いてこられた事実と、日々の生活を通じて培ってこられた日本の文化に対する信頼こそが、現在の二国間の友好の土台です。これからも日系社会の皆様と共に、日本とアルゼンチンの伝統的に良好な外交関係の更なる深化・発展に向け、大使館一丸となって努力していく所存です。
 
 引き続き皆様のご支援・ご協力を賜りますよう、宜しくお願いいたします。
 
 
令和4年(2022年)12月
アルゼンチン駐箚日本国特命全権大使 山内 弘志