治安情報
 

平成17年7月

 

1.概況
 2001年末の深刻な政治・経済危機以降、デモ、道路封鎖、略奪等が多く発生するとともに一般犯罪も増え、治安状況は大きく悪化しました。その後、経済 面では、景気も回復傾向にあり、失業率も徐々に改善され、それに伴い治安も緩やかに回復傾向にあります。しかしながら、2001年以降、拡大した貧困層は 若干減少しているものの大きく改善するまでには至らず、特に、ブエノスアイレス州大ブエノスアイレス圏では、引き続き強盗や盗難事件等が頻発しており、殺 人や金銭目当ての誘拐等の凶悪な犯罪も発生しています。これらの犯罪は、失業、貧困、司法制度の脆弱性、治安当局の汚職、刑務所の不足等に起因していると 考えられ、短期的に解決が望めるものではありません。


 さらに、政府の失業者対策等に対して幹線道路の交差点等を封鎖して抗議する、いわゆる「ピケテーロ・グループ」の活動も引き続き各地で起きています。こ れらの活動は平和的に行われる場合もありますが、タイヤを燃やしたり、投石を行う等の暴力を伴う示威行為を行う場合もあり、抗議運動側及び治安当局側双方 が些細なことをきっかけとして衝突し、死傷者が出る事態も過去に発生しています。
 また、最近、麻薬が横行するようになり検挙者も増加し、大きな社会問題になりつつあります。

 

2.地域情勢
(1)ブエノスアイレス市内
 市内では、従来から観光客を狙った盗難事件等が発生していますが、日本人観光客の被害報告も大使館に寄せられています。(月に2〜4件程度。ただし、大 使館に報告されているものは、パスポートを含む所持品が盗難にあった場合がほとんどで、金銭等だけを盗難された場合には報告されないケースも多くあると思 われます。)特に、市内セントロ地区のサン・マルティン広場、5月広場、フロリダ通り、オベリスコ等の観光名所では、日本人に狙いを定めていると思われ る、いわゆるマスタード強盗等の盗難事案が発生しており注意が必要です。最近減ってきていると言われていますが、マスタード強盗の手口としては、被害者の わからない場所(背後等)から汚臭のする液体(黒色系の原油のようなもので容易にはふき取れないようです。)を衣服等にかけ、数人の男女が親切を装って拭 くふりをして近づき、油断させた隙にパスポートや金銭等を抜き取り、あるいはバッグごと奪い去ると言うものです。被害にあわれた方の話を総合すると、女性 2名、男性1名のパターンが多く、犯行後素早く近くで待機している一味のタクシーに乗って立ち去ることが多いようです。対策としては、下記3.(1)、 (2)を参考にしてください。


 ピケテーロ・グループによる活動は、市内のいずれかの場所でほぼ毎日のように報道されています。特に、5月広場、国会広場、オベリスコ周辺、労働省前等においては活動が盛んです。


(2)ブエノスアイレス州大ブエノスアイレス圏(コノウルバーノ地区)
 同地域内には、貧困層の住む地区も多くあり、犯罪が多く発生しています。特にアヴェジャネーダ、ラヌス、ロマス・デ・サモーラ、ラ・マタンサ、モロン、 トレス・デ・フェブレーロ等のブエノスアイレス市の南側あるいは西側に隣接する地域で殺人や強盗事件等が数多く見られ、ブエノスアイレス市の北側に位置す るヴィセンテ・ロペス、サン・イシドロ等のいわゆる高級住宅街においては、銃器を使用した、いわゆる簡易誘拐事件(通常、誘拐後に必ずしも高額ではない身 代金を取り、数時間から数日間で解放されるもので、対象者は金持ち等には限らない)も依然として発生しています。日本人であるために特に狙われたと言うよ うな事件は見られていませんが、十分な注意が必要です。


 また、通常、毎月26日にアヴェジャネーダ市とブエノスアイレス市をつなぐプエイレドン橋が、「ピケテーロ・グループ」によって封鎖されるので注意が必要です。


3.滞在にあたっての注意
詳細は、安全対策基礎データをご覧下さい。


(1)渡航者全般向けの注意事項
(イ)日本人の被害状況としては、空港・公園・道路上等での引ったくりや置き引き、マスタード強盗等が引き続き報告されています。また、タクシーの運転手 も共犯になった強盗や信号停車中の車両を狙う強盗も発生していますので、特に流しのタクシー利用は避け、ハイヤー(レミース:REMIS)を使う等の十分 な注意が必要です。(REMISは一般のタクシーより若干割高な程度で、短距離でも利用でき、ホテルのフロント等で依頼できます。)
(ロ)当国には、パスポートを携帯する義務はありません。したがって、ホテル等の宿泊施設から外出する際には、パスポートのコピーを携帯する方が安全です。
(ハ)路上で麻薬を売りつけてくることがあるので注意してください。邦人が麻薬所持で拘束されたケースが出ています。


(2)観光旅行者向けの注意事項
(イ) 空港から市内に移動する場合は、可能な限り旅行会社等を通じて送迎を依頼し、合い言葉を決めたり日本語のできる運転手を依頼する等の工夫が必要です。事前に依頼できない場合は、空港のハイヤー(レミース)の利用が比較的安全です。
(ロ)人前で大金、あるいは大金の入った財布を見せない、不要な現金は持って歩かない、カードと現金は分ける等の注意を怠らないようにしてください。また、レストラン等では持ち物から目を離さない等の注意が必要です。
(ハ)安否の確認等、不測の事態への対処のため、大使館より連絡をする場合がありますので、滞在先等は必ずご家族に連絡する等、常に所在を明確にしておく ことをおすすめします。また、事件・事故等不測の事態が発生した場合は、必ず日本国大使館へ連絡して下さい。


(3)長期滞在者向けの注意事項
 アルゼンチンに滞在中の方は上記情勢を十分考慮し、下記事項にも十分留意して行動して下さい。また、外務省、在アルゼンチン日本国大使館及び現地関係機関等から最新情報を入手するよう努めて下さい。
(イ)3ヶ月以上滞在される方は、「在留届」を日本国大使館に速やかに提出されるとともに、住居を変更した場合や帰国の際にも必ずその旨を届け出るようにして下さい。
(ロ)外出の際には、身の回りの安全に十分注意して下さい。特に、テレビ・ラジオ等で市中の治安状況に注意するとともに、抗議デモや道路封鎖等が住居の近 くで発生している場合には外出を控えることをおすすめします。特に、毎月26日は、特定のピケテーログループが抗議活動をしていますので、これまでに大規 模なデモ・集会の行われた場所(五月広場、国会議事堂周辺、オベリスコ周辺、プエイレドン橋等)への不要不急の外出は避け、行かざるを得ない場合には周囲 の状況に十分注意して下さい。
(ハ)非常事態が発生したと思われるような場合は、日本国大使館領事班、警備班にその事実関係を確認されることをおすすめします。また、自宅や職場(旅行 者の場合はホテル)等の周辺で不測の事態が発生した場合は、日本国大使館に連絡して下さい。皆様からの情報で二次被害(災害)が防げる場合があります。
(ニ)噂やデマ等の未確認情報に惑わされて動揺することのないようにして下さい(了)